今後の推移と展望

2002年のユーロ導入以降、スペインでも物価はヨーロッパ並みとなり、輸入原材料費(木材)はユーロで値上がりし、アベノミクス直前には”1ユーロ=101円“だった交換レートも、輸出振興の国策により引き下げられ、加えて、近年の世界的流行り病とウクライナ戦争による歴史的円安により、2023年12月現在”1ユーロ=155円“です。

 

2023年1月にスペインを訪問しましたが、ギター梱包用の段ボールさえ2倍になっており、ケースも輸送費も、総て値上がりし続けています。つまり、現在、輸入スペインギターの原価は、スペイン国内でも上がり続け、更に、超円安ユーロ高により、二重苦の高止まり状態です。正直、先が見えません。

 

従って、日本の輸入ギター業界が、今後、単に、ギタービジネスとして原価を考えれば、普及モデルに関しては、今以上に率先して、原産国非表示の中国製スペインギターに靡き、高級モデルまでも中国製になり、ラベルは相変わらず、スペイン有名メーカーのままでも、何ら不思議はありません。

 

手工品に関しては、スペイン製に限らず、欧米製のものは、超円安もあり、なお高騰し、今の原価を鑑みれば、今後、日本での最終価格100万円が普通の感覚になって来ても、何ら不思議はありません。

 

しかし、セファルディは安かろうが高かろうが、今後共、スペイン製スペインギターのみを価値観として、同胞日本人に紹介して行きます。 

 

なお、セファルディではこの現状を憂い、比較的低価格で製作する無名のスペイン人個人製作家の発掘の必要を痛感し、そして、捜し出しました。最終価格48万円を予定しています。自然乾燥の木材を使用した手工品で、セラック手塗りです。今しばらくお待ち下さい。

✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿ 

 

ある会社で、何のための仕事かと尋ねられた社員が”皆の幸せのため”と答えたところ、上司に”そうじゃない、売り上げを伸ばすためだ”と説教されたそうです(2008年初頭のある日本の週刊誌)。

 

私はある意味、技術レベルの遥かに高いプロ野球より、高校野球の方が好きです。それは、ノーギャラで純粋に野球技術だけを競う高校野球の方が、そのフェアプレ-の精神故に、観る者の心に吹く爽やかな一陣の風であり得るからです。しかし、人は学生であることを辞め、金銭社会に出れば、この上司の言った如く、金銭に魂を売って、売上げを伸ばすためには何をやってもいいのでしょうか?

 

人生、何をやろうが、フェアプレ-の精神なき爽やかな一陣の風など吹きはしません。そして、フェアプレ-の精神とは自分へ思いやりではなく、相手への思いやりのはずです。

 

確かに、個人商店から大企業まで、皆、儲けは必要です。金銭に一喜一憂するのが、資本主義社会に生まれた我々の宿命です。しかし、偏れば、この上司の如く、偏った説教を食らいます。

 

しかし!! 手工品より高いブランド化されたスペイン製普及モデル、原産国非表示の中国製スペインギター、影武者ギターなど、これらの珍品が大手を振って罷り通っているのは、相手を思いやる爽やかな一陣の風どころか、自らのみを思いやる、偏った利潤追求至上主義に泥酔しているからです。読者の皆さんも一緒に酔うかどうか。それは各自の自由です。しかし、・・・。

 

そもそも、ギターの果たすべき本来の使命とは、弾き手、聴く人、製作者、売る人、ギターを取り巻く総ての人が情緒的に豊かになることのはずです。そして、ギターと代金の交換は最後の最後に行うもの。これがスペインギターに対するセファルディの主旨であり基本姿勢です。 

このページのトップへ戻る