スペインギター振興会 セファルディ【】

ハカランダ(中南米ローズ)信仰の功罪

特に、日本のクラシックギター界にはハカランダ至上主義なるものが存在し、他の木材はハカランダの引き立て役に甘んじるのが、その使命の如くさえ感じられます。また、これは楽器店がハカランダのギターを高く売るために築き上げて来た、必ずしも、楽器としての現実と価格が常に一致するとは限らない、商業的イメージだとも言えます(が、確かに、ハカランダのギターの仕入れ値が一番高いので、市価も一番高くなります)。

 

実際、現在、ワシントン条約で伐採禁止のハカランダ材が原価も一番高く、音量音質共に郡を抜いているのですが、それはあくまで素材としての客観的な評価であり、完成したギターにおいては、必ずしもこの原則通りとは限りません。冒頭で述べた食材と料理の関係と同じです。

 

或いは、それはまた、”ボクシングはやっぱりド迫力のヘビー級が一番“と盲目的に言い張る様なものかも知れません。

 

確かに、世界ヘビー級チャンピオンの方が世界ライト級チャンピオンより、パンチ力、ファイトマネー、視聴率は上ですが、ファイトマネー、視聴率、そして、観客動員力、ボクサーとしての評価も、世界ライト級チャンピオンの方が世界ヘビー級20位に遥かに勝ります。確かに、単にパンチ力測定器の数値だけなら、前者は後者に遥かに劣りますが、誰がどう見ても、確かに、前者の方が視聴率もゼニも取れる、遥かに優れたボクサーです。

 

同様に、破壊力なら大砲ですが、機動性ならマシンガンです。スタミナなら肉うどんですが、ざるそばは清涼感で勝負します。それぞれにそれぞれの許容量に応じた良さがあるのです。それはボクシングの様々な階級にはそれぞれの醍醐味があり、誰のパンチが一番強いかではなく、ボクサーとしての総合評価が問われる様に、上に紹介した様々な木材のギターもまた、どの木材のギターが一番良いギターかと言う問題ではなく、それぞれの良さがあり、好みの問題なのです。ただ、単純に素材の良さなら、ハカランダが最高だと言う点に誰も異論はないでしょう。

 

もっとも、私の経験では、名工のハカランダのギターにも、パンチ力はあってもパンチに切れと華がない、客の呼べない世界ヘビー級20位みたいなハズレはあります。単に、パンチ力測定器の数値か、ボクサーとしての総合評価か。同様に、ハカランダのギターに使ってあるハカランダと言う素材の価値か、そのハカランダのギターの音色か。聞き流すと同じ様に響くかも知れませんが、両者は全く別次元の問題であることに気付いて下さい。これは他の木材とそのギターについても同様です。

 

ハカランダ信仰はいつもご利益があるとは限りません。他の木材のギターでも、ハカランダ製ギターに勝るギターはたくさんあります。ハカランダ以外のギターにも関心を持ってみて下さい。そうすればハカランダの凄さも、外れた時の虚しさも、体験として身に沁みるはずです。

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