③ギター料金の相違と是非
多くのギター愛好家は、見栄え、メ-カ-の有名無名、予算に似合った値札、そして、商売文句ではないかと、半ば疑いながら聞く店員さんのアドバイスを頼りに、戸惑いながらギターを選んでいるのが実情ではないでしょうか? 巷の商業主義に翻弄されないためにも、ギターについての最低限の知識と客観的な価値判断の基準を持つことは大切です。主観は客観あってこその主観のはずです。
セファルディは、単に、スペインギターの販売だけではなく、振興会として、ギターの一般的基礎知識を世に知らしめることも使命だと考えます。ギターは最後は耳で利くべきですが、そのためにも、以下4項目を熟読され、ギターとその作り、それに応じた料金、そして、肝心の音色がその料金に応じたものかどうかを吟味する目と耳もまた、養って下さい。
ギターの上手い人はギターについての知識もあるものです。一見、ギター演奏とは無関係に思える、普段は使わないこの引き出しを備えることもまた、演奏の引き出しの奥行きと幅を間接的に、しかし、確実に広げてくれます。
ギター一般、そして、特に、スペインギターの観点から、徹底的に検証してみましょう。
単板か合板か
まず、世界中のギターは合板ギターと単板ギターに大別出来ることを念頭に置いて下さい。
例えば、自然のローズ材(インディアンローズウッド,通称ローズ)をそのまま使用したのがローズ単板ギター。これに対して、安い中間材の両面に機械で薄くスライスしたローズをシールの如く張り付けたのがローズ合板で、外見は完璧なローズですが、実際ローズは10%程度の見せかけだけのローズ合板ギター。極端な安物に至っては、表面板まで合板です。
両者は音量音質、そして、当然、料金も違いますが、外見は何の差もありません。この合板ギターか単板ギターかの区別が出来れば、表示金額が妥当かどうか、目星も付くことになります。
最も簡単な見分け方は、ギター内部のラベルの下の裏板中央部に縦に添え木があれば単板ギター。添え木がなく、ラベルがベタ~と貼ってあれば、無条件に合板ギターです。サウンドホール越しにラベルの下を覗いて見て下さい。
単板ギターの場合、単板2枚を接着した裏板中央の接合部分内側にこの添え木を貼り、ギター内側から補強します。従って、ラベルの下にこの添え木があれば(添え木の上からラベルが貼ってあれば)、単板ギターだと言って宜しい訳です。
それに引き換え、合板ギターは頭から1枚合板の裏板ですので、頭から存在しない接合部分の補強の必要も添え木もありません。但し、1枚合板の裏板も、通常、外側はあたかも2枚の板の如く装飾してありますし、また、“内側中央にわざわざ必要ない添え木を接着して、単板ギターに見せかける合板ギター”も今日出て来ていますので要注意。
何れにせよ、最終的な見分け方は、単板であれば、単一の同じ木ですから、表と裏の木目が同じで、合板は裏表別の木ですので、良く見ると木目が違います。
合板ギターでも、今日、音量は追求出来ると言えますが、合板故に、どうしても音質で単板ギターに劣ります。やる気のある方は頭から単板ギターと決める方が賢明です。
セファルディでは、単板のスペインの白いギター(クラシック:146-s&フラメンコ:ARF/それぞれ弦長650&630mm)をご紹介しています。但し、音質の違いも分からないし、取り敢えず、試しに1本と言う方は、合板ギターでも宜しいでしょう。
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料金比較は当然[単板ギター>合板ギター]です。スペインでもそうですが、ギターショップの店員さんは、わざわざこの違いについては言ってくれません。そこで、”この客は少しはギターを知っているから侮れないな“と思わせるために、逆に、”このギターは合板ですか、単板ですか?“と質問してみるのも、侮られないための一つの知的な駆け引きです。そして、この様な基本的な質問にさえ返答に困る様なら、そう言う店のギターに対する姿勢は頭から疑った方が賢明です。
さて、この[単板ギター>合板ギター]の料金比較は、手工ギターに合板製などない以上、あくまで普及モデル(量産ギター)における両者の比較になります。ところが、舶来のブランド品に弱い日本市場では、平然と価格の逆転現象[単板ギター<合板ギター][手工ギター<普及モデル]が起こります。
つまり、たとえ合板ギターでも、スペインの有名ブランドであれば、日本では単板ギター並みの値段が付いていますし、ましてや、普及モデル単板ギターでも、スペインの有名ブランドなら、今日、平然と手工ギター以上の料金(何十万~百万円以上)が付いていても不思議ではない現実です。
ここで、次に述べる普及モデルと手工ギターの違いについて、僅かばかりの知識さえあれば、この料金的不条理の大まかな判断は出来ます。
普及モデルか手工ギターか
次に、世界中のギターは普及モデルと手工ギターに大別出来ることも念頭に置きましょう。
普及モデル(量産ギター)と言うと、機械に材木を入れたらギターが出て来る様な響きですが、本来、一人の製作家がのこぎりで切る部品を、機械で大量に準備すると言う意味の量産で、決して1日でギターが出来る訳ではありません。職人気質の工房では生産個数に限度があり、原価も高く、大量仕入れと大量生産で徹底的にコストを削減する量産工場なら、より安く大量に生産出来るのはどの製造業もギターも同じ。しかも、今日、名工達も機械の使える個所は機械に頼っているのが現状です。
こうして、各部分の木材の準備を終えると、そこから先は総て手で組立てて行きます。ただ、それを1人の製作家が丹精に仕上げるか、20~30人の名もない量産工場の職人達が分担作業でやるかの違いです。それなら、結局、普及モデルも手工ギターも、ブランドかそうでないかの違いだけで、実質的に大差はないことになってしまいそうですが、果たしてそうなのでしょうか?
この様に、手作りでないギターなどこの世に1本も存在しない以上、広い意味で総てのギターは手工ギターであると言えます。ですから、例えば、スペインのギター工房では、客が初心者だと見れば、たとえ5万円の普及モデルでも、”これはhand madeだ”と言われます。これは”広い意味で正しい答え”ですが、ギター知識に乏しい消費者に、工場から安く仕入れた普及モデルに自らのラベルを貼って、手工ギターと称して売るための方便です(実話体験談)。
日本でも今日、日本製手工ギターより遥かに高額な、ブランド化されたスペイン製普及モデルが多く見受けられます。これが現実です。ブランド名に幻惑されないためにも、普及モデル&手工ギターを見分ける基本的な知識を幾つかの項目に分けて見て行きましょう。なお、以上の意味で…、
当サイトでは、量産工場のギターは普及モデル(量産ギター)、
ギター工房で製作家によって作られるギターのみを手工ギターと呼ぶことにします。
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寿司とギター
寿司屋の寿司がスーパーの寿司パックの5倍すると文句を言う人はいないでしょう。何年も修行を積んだ板前さんが、朝早く、自ら魚市場に赴いて見定めたネタで握った寿司に対して、片や、安さが売りの言わば量産寿司。しかも、作者はパートのおばさん。見た目と量は同じでも、そこに至る過程、労力、経験、ネタ、味、値段、格の違いは歴然です。量産工場の普及モデルと個人製作家作正真正銘手工ギターの歴然とした違いも同じです。
ところが、今日、スペイン国内でさえ、かなりのスペイン製普及モデルはブランド化されて、手工ギター並み、有名ブランドなら、それ以上の料金が付いているのが現状です。もちろん、個人製作家作正真正銘の手工ギターはこの類ではありませんが、資本主義社会で成功したければ、大量仕入れと大量生産で徹底的にコストを削減して、ブランド化して高く売るのは当然の戦略だと言わんばかりです。これが日本に輸入される多くのスペイン製普及モデルの厳然たる現実となって、既に四半世紀。
単に、ビジネスとして捕らえれば、手間隙コストのかかる生産台数の少ない手工ギターを苦労して売るより、原価は10円そこそこでも、しっかり宣伝して、ブランド化して、200円で大量に売って、儲けることだけが目的の炭酸飲料の如く、ブランド化されたスペイン製普及モデルの方が遥かに金銭的効率が良いからです。また、消費者側にも、手工ギターと普及モデルを区別する目がないため、多くの場合、ブランド化された普及モデルを手工ギター並みの料金で買わされているのが現状です。
それ故、幻惑されない識別力を養って頂くための当サイトでもあります。
原材料費などの違い
建材のヒノキも、節の有無によって料金が全然違う様に、極上の木材は、当然、製作家の工房で手工ギターに、並みは量産工場に買い取られて普及モデルになります。原価が違って来るのも当然です。
木材乾燥過程の違い
製作家の工房では、それを更に最低10年寝かせてから、初めてギター製作に使います。木には人間の毛穴と同じく、気孔なるものがあり、年数の経過と共に気孔内の樹液が乾燥して、音の通り、音質が良くなります。つまり、寝かせば寝かす程、味とコクを増すワインの様なもので、こうなると経過年数にお金を払うのが木製楽器業界だとも言えます。量産工場では機械で乾燥させます。
この使用木材の自然乾燥と機械乾燥の差が、手工ギターと普及モデルの音質に決定的な違いを与えることは、多くの専門家の一致するところです。楽器としての作りや音量ではなく、音質です。今日、確かに、手工ギターと見分けが付かないほど音量もあり、木工として優れた普及モデルもありますが、養殖魚では、いくら頑張っても、自然に獲れた魚ほど美味い刺身にはならない様に、木材も無理やり機械で水分を抜けば、自然本来の良さが失われ、それが音質、つまり、音の味とコクに反映します。自然が一番、手工ギターが一番なのです。
生産台数の決定的な違い
ギター工場の普及モデルとギター工房の手工ギターの生産量は、正に、名工作の陶器と中国製安物コップ位の差があります。製作家がこつこつ作る手工ギターはせいぜい年間14、5本。同じ工房で働く息子や弟子の協力があっても、せいぜい20本程。これが手工ギターの限度です。それでは、世界中に相当数出回っている有名製作家ラベルのギターは一体誰が作っているのでしょう? もちろん、本人作ではありません。量産工場に委託して作らせた普及モデル(或いは、次の次の次に述べる影武者ギター)に本人のラベルを貼ってあるだけです。大枚叩く価値はありません。
但し、然るべき製作本数の有名製作家であれば、当然それは手工ギターとして信用に値します。
ギターとハンドバック
スペインにロエベと言うハンドバックのブランドがあります。日本でもかなりの高級品として売られていますが、スペイン・アンダルシア地方カディス県の山奥の、皮工芸で有名なある村の工場に大半を作らせています。そして、工場から出荷する際、全く同じハンドバックが、ロエベの印が圧してあるだけで何倍もします。資本主義社会の仕組みは皆こんなものだと言われれば、ギター業界も仕方がないのかも知れませんが、有名製作家の名前のラベルのギターには、正真正銘本人作の僅少の手工ギターとあたかも本人作の手工ギターに見える、ラベルだけ本物の量産ギターがあること位は、消費者側も少なくとも知っておくべきす。仮に、仰々しく本人のサインが入っていてもです。
そして、読者が興味を覚えているあのギター、欲しいと思っているそのギターは一体どちらなのか? それなら、その料金は妥当なのか、法外なのか? ある程度の見る目を持っていなければ、ラベルにお金を払うことにもなりかねません。
中国製スペインギターも!?
食は中国、ギターはスペイン!? ところが、今日、何と中国製ギターをそのまま輸入して、そのまま自らのラベルを貼ってスペインギターとして販売するスペインのギターメーカーと、それを承知でスペイン製として販売する輸入業者や楽器店が世界中で後を絶ちません。日本でもです。以下、”スペイン製か中国製か“をご覧下さい。
影武者手工ギター!?
各部分を弟子に用意させ、それを師匠本人が組み立てるなら、まだ話は分かりますし、多くの歴史的名工達も、おそらく、そうして来たことでしょう。また、そんな事を一々購入者に言う製作家もいないでしょうが、仮に、そう言われても、この程度なら納得出来ます。しかし、問題は、本人作の僅少の手工ギター(上述)どころか、100%他人の作品で、本物はラベルとサインだけの有名製作家ラベルのスペイン製手工ギターもあると言う現実です。
確かに、工場製の普及モデルに自らのラベルを貼って、大衆ギターとして販売することは、昔から有名製作家の工房でもされて来ました。例えば、私は相当古いホセ・ラミレスラベルのくるみギターを持っていますが、その雑な造りやヘッドの形からして、当時の普及モデルであることは間違いありません。この様に、比較的安価なギターなら話は分かりますが、相当高いギターまで全く他人任せ!?
論より証拠。私の知り合いの若い無名のスペイン人製作家マリオ・フェルナンデスが、以前マドリードの、日本でも有名なホセ・ラミレ○ギター工房に履歴書を送ったところ、忘れた頃に面接に呼ばれたそうです。仕事はもちろんギター製作ですが、プライベートで作るギターにさえ、自分のラベルは一切貼れず、常にホセ・ラミレ○の名前でギターを作る契約書にサインを迫られたそうです。幸いにも本人は断ったそうですが、要するに、ホセ・ラミレ○工房に就職するからには、マリオ・フェルナンデス君の作ったギターには、総てホセ・ラミレ○のラベルを貼ってもらいますと言うことなのです。
量産工場に就職して、流れ作業的に安いギターを作るのではなく、ホセ・ラミレ○の作品として売る高級手工ギターを製作する雇用契約と言う意味です(しかも大半はピストル吹き付け塗装)。マリオ・フェルナンデスが腕のいい職人で、良いギターを作るのなら別にいいじゃないですかと、気にしない読者もどうかしています。購入者はホセ・ラミレ○のラベルとサインを見て、ホセ・ラミレ○作の高級手工ギターと思い込んで、大枚叩くのではありませんか?
この様に、大衆ギターならともかく、今日、スペイン製高級手工ギターまでこう言う仕組みになっていることが多々あります。そんな事は日本の輸入業者や小売店は百も承知です。売れてビジネスになればそれでいいと思っているのでしょう。もちろん、今日、日本に輸入されているスペイン人有名製作家の多くの手工ギターは、その名誉のためにも、本人作だと断言しますが、有名製作家のラベルとサインだけ本物のギターも少なくはないのが現状です。その上、これらは日本ではブランドが故に、高級手工ギターとして販売され、仰々しく何々モデルと称されているものに多い傾向です。しかも、安いと却って信用しない、ブランドに弱い日本人の悪い癖を逆手に取って、定価は50~150万円以上!? 日本の売値から見れば、まさかと思う様な原価で仕入れ、そこに本物のラベルを貼って、あっと言う間にブランドギターになります。
事実、私は日本語情報センター館長時代、日本で160万円払ったホセ・ラミレ○のクラシックギターを持って旅行していた日本人に会いました。金額からして、当然、ハカランダだと思いきや、ローズでした。しかも、セラック手塗りではなくピストル塗装で、肝心の鳴りは悪くはありませんでしたが、低音が明らかにパワー不足。とても160万円の鳴りではありませんでした。因みに、本人はハカランダもローズも何も知らない初身者でした。
これは普及モデルでも、前述のブランド化された普及モデルでもなく、確かに手工ギターですが、ラベルとサインの名前と製作家が違う以上、影武者手工ギターと呼ぶのが言い当て妙でしょう。ラベルは有名な~~工房でも、せめて~~作と、その無名製作者のサインを入れるのが良識のはずです。
製作家の知名度
名工作手工ギターなら当然高額で、仮に、見劣りしないギターを作っても、無名製作家なら原価も安くなるのは当然です。
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料金比較は当然[手工ギター>普及モデル]です。以上を踏まえて、更に詳しく言えば、知名度手間隙経験技術などを考慮して[名工作手工ギター>無名製作家の手工ギター>影武者作有名ブランド手工ギター>手工ギターと称されるブランド化された普及モデル>普及モデル]と、原価の順にこうなるべきですが、商業主義のおかげで価格は[名工作手工ギター>影武者作有名ブランド手工ギター>手工ギターと称されるブランド化された普及モデル>無名製作家の手工ギター>普及モデル]と、真に不条理な逆転現象も起こり得ます。そして、正に、これがスペインギター価格の現状であり、これがそのまま日本市場にも世界市場にも反映されています。
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正に”誰が何を幾らで売ろうが各自の自由。買いたい奴が買えばいいし、気に入らなきゃ買わなきゃいいだけの話だろ!!“と言わんばかりです。
確かに、女性の虚栄心を満たすハンドバックなら、ブランドの刻印に盲判を捺くのも自由かも知れませんが、老舗の寿司屋がスーパーのパートのおばさんの作った寿司パックを仕入れて、あたかもその店の職人が握った如く、高い料金を付けて店頭に並べているとすれば、それは少なくとも私にとっては問題です。そして、それがスペインギターならもっと問題です。
日本人ギター愛好家に、この不条理に対する識別力を養っていただくのも当サイトの目的です。
ギターの価値観がその奏でる音色ではなく、金に換えて何ぼの単なるギター産業になってしまっているが故に、これは究極のところギター、及び、スペインギターを取り巻く人々の商魂豊かな歌心の欠如が根本問題です。ギターがブランドのハンドバックと同じ次元に陥るとは、悲しい失望の旋律に他なりません。
何れにせよ、スペインギターに限らず、如何なる国のどんな普及モデルでも、これを手工ギター以上の価格で販売することは、スーパーの寿司パックに寿司職人の握った寿司より高い値札を付けるが如く、あってはならないことであり、不条理です。
以上の基礎知識を踏まえた上で、今度は、日本におけるスペイン製普及モデルと手工ギターの具体的な判別方法を幾つか見てみましょう。
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ラベルによる判別
明らかに量産工場と分かるラベルが貼ってあれば、それはそう言う名前のギター製作所の普及モデルだと一目瞭然ですし、良心的ですが、問題は有名製作家ラベルのギターの場合です。疑っては失礼な正真正銘本人作の手工ギターもたくさんありますが、有名製作家ラベルのスペインギターでも、実際は、スペイン国内や中国の量産工場に丸投げギターもまた、今日、数多く存在しています。これらの中にはサイン入りまでありますが、本物はサインだけです。
この場合、店員さんに”このラベルの名前の本人の作品ですか?“と尋ねてみましょう。良心的なギター店なら良心的な答えをしてくれるはずです。
小売価格による判別
今日、スペイン人個人製作家作正真正銘手工ギターの日本での定価は、如何に無名の制作家でも最低90万円と見受けます。つまり、逆に考えれば、今日、日本で定価90万円以下の輸入スペインギターであれば、どんなに有名製作家ラベルのギターだろうが、どんなに何とかモデルと謳われていようが、ブランド化された普及モデル(か、せいぜい影武者手工ギター)の可能性大です。普及モデルも、確かに、合板の安物から単板の高いモデルまでありますが、普及モデルは普及モデルです。
とは言え、定価90万円以上でも、総てが手工ギターではないことは既に述べました。要約すれば、スペイン人個人製作家作手工ギターは安くは成り得ないが、有名メーカーのスペイン製普及モデルは無名個人製作家の手工ギター以上に高く成り得ると言うことです。
特に、日本人は何とかモデルと称して高ければ、何でも飛びつくブランド志向と、物が良くとも、安ければ却って信用しない悪い癖があります。名より実を取ることを心掛けて下さい。
塗装による判別
スペインでは、一昔前まで、手工ギターはセラック手塗り、普及モデルはポリウレタン吹き付けピストル塗装と相場は決まっていたものでしたが、業界が商業主義とブランド志向に走り始めてからは、平然とピストル塗装(ポリウレタン&ラカ)された手工ギターさえ現われて来ました。
従って、塗装がセラックなら、それは無条件に手工ギターと断定出来ます(稀に量産工場の最高級品&セファルディ‟GLシリーズ”を除く)。また、総ての普及モデルはピストル塗装(ポリウレタン&ラカ)ですが、今日、商業主義の故に、安価なピストル塗装のスペイン製手工ギター(&と称され店頭に並ぶ普及モデル)もまた多く存在します。
90万円以上のスペイン製高級手工ギターが、5万円の量産合板ギターと同じピストル塗装とは、品質向上に努める企業の姿勢ではなく、単に、手間隙人件費を省いて、出来るだけ高くブランド商品として売りたいがための、ケチな戦略に過ぎません。これには心ある職人気質のスペイン人製作家達も呆気に取られています。
手打ちラーメン屋がインスタントラーメンの粉末スープを使うでしょうか? “うちは名の知れた老舗の手打ちラーメン屋。放っといてもやって来るたくさんの客を捌くには、前の晩からグツグツ出汁を煮込んでる暇なんかない。どうせ分かりゃしないんだから、粉末スープにしときゃいい。“と読者が店主ならそうするでしょうか? スープはともかく、ギター消費者側が、余りにも、塗装に限らず、ギターについての知識がないので”どうせ分かりゃしない“と甘く見られているのです。
おそらく、読者の大半はギター塗装の知識など皆無でしょうから、キョトンとする気持ちも分かりますが、次の[塗装の違い]を克目してお読みになれば、如何に塗装がギターの音質を左右するかがお分かり頂けます。
質問による判別
とは言え、ここで私が如何に文章で説明し様が、それはある意味、自動車教習所の教室内の講義の様なもので、実際にハンドルを握って道路に出なければ、経験として分かるものではありません。
そこで、以上の知識を踏まえた上で、一番手っ取り早い手工ギター&普及モデルの判別方法は、店員さんに『これは手工ギターですか、普及モデルですか?』とズバリ尋ねることです。良心的なギター店なら、良心的に答えてくれるでしょう。そして、その価格と予算と音色のバランスが取れていると判断した時点で、初めて購入を考えても遅くはありません。もちろん、手工ギターとは年産14~15本のスペイン人個人製作家作正真正銘手工ギターを意味し、普及モデルとはどんなに有名製作家やメーカーのラベルが貼ってあろうが、量産工場作のギターは総て普及モデルであるとの定義に則った上で尋ねることは言うまでもありません。
ですから、”このラベルの製作家は年産何本位ですか?“と聞いても、十分な単刀直入な駆け引きになっています。良心的なギター店なら良心的に答えてくれるでしょう。
塗装の違い:セラック&ピストル
次に、世界中のギターの塗装はセラックニス手塗りとピストル吹き付け塗装に大別出来ることを念頭に置きましょう。
1979年、私がスペイン・グラナダで購入した最初のスペインギター(クラシック)の塗装がセラックニス手塗りだと知ったのは、それから18年後でした。今、思い返してみても、音と弾き易さを確かめただけで、その時は、まさか塗装の質までは考えてもみませんでした。スペインギターを扱い始めて、やっとその存在と意味を知った訳です。ですから、殆どの愛好家は、ギター選択の際、塗装と言えば見た目の光沢かつや消しか、せいぜい外見だけの認識だと言うことは身をもって分かります。
しかし!! 塗装は見映えだけで、音には一切関係ないと言う一般的固定概念とは全く逆に、塗装こそギターの音色を活かし、また、殺しもする決定的因子であるが故に、消費者側もギターの塗装について活眼を開かれるべきこともまた、念頭に置きましょう。
ワイシャツとセーターで喩えてみます。本来ギターに限らず、音響の点から言えば、楽器は塗装しないのが一番だと言えますが、それでは格好が付かないので、何らかの塗装を施す訳です。人間は裸のままが一番身軽だが、見た目が悪いのでワイシャツを着るが如くです。しかし、セーターならどうでしょう? セラックニス手塗りとピストル吹き付け塗装(ガン塗装)の差は、正にステレオのスピーカーにワイシャツとセーターを被せると比喩出来ます。
セラックニス(以下セラック)は極めて音響の良いニスですが、組み立てが終わったばかりのギターにいきなり塗ることは出来ません。まず、木材表面をキメ細かくサンドペーパー掛けし、人間の肌の毛穴とも言うべき木材の気孔をメ止めしてから、やっとセラックを幾重にもタンポ塗りして行きます。総て手作業です。木材にも拠りますが、20日から1ヶ月はかかります。
確かに、こんな面倒な手作業を量産工場に求めるのは無理ですし、普及モデルにこんな高価な塗装をする意味もありません(自社の最高級モデルはセラック塗装を外注する量産工場も稀にあり)。そこで、普及モデルはポリウレタンを吹き付けるピストル吹き付け塗装(以下ピストル)の一日仕事。メ止めも何もありません。塗装重量80g位。
また、ピストルには違いありませんが、高いモデルには塗装重量40g位のラカ塗装(Sp:laca)を施す良心的な工場もあります。ポリウレタン同様、ピストル仕上げですが、ラカ塗装は1週間はかかります。自らの手工ギターをラカ塗装する製作家もいますので、このラカ塗装は評価出来ると言えますが、手作業のセラックに時間を取られるより、ピストルでラカ塗装して早く終わって、早く次のギターに取りかかる方が経済的に効率的だからです。或いは、塗装は頭からセラック専門職人(日本には存在しない職種)に任せるスペイン人製作家も多いです。
ところで、私は以前、フランシスコ・ムニョス氏とセラック塗装の重さを量ってみました。つまり、グラム単位の精巧な量りで、ギターをセラックで塗る前と塗り上がった後の重さを計量してみました。何とマイナス2g!? 何かの間違いだろうとしか思われず、もう2本のギターで実験してみました。結果は2本共差し引きゼロ。つまり、セラックを塗っても、塗る前と全く同じ重さでした。これには私は勿論、製作家の氏も意外だった様です。セラックには木材の湿気を吸収する作用があるのでしょうか? これについては研究の余地有りで、結論付けることは出来ませんが、セラック塗装は正にワイシャツ、しかも、ごく薄手のワイシャツだと言えます。音の出、伸び、分離、遠達力など、総てにおいてピストル塗装に遥かに優ることは疑い様のない事実です。
以上を踏まえて、50万円以上のギターは国産輸入ギターを問わず、セラック塗装であるべきです。それが製作家や楽器商の良心であり、それだけの金額を支払う消費者への礼儀であるはずです。
その見分け方です。様々なカタログやサイトで、ギターの弦長や各部分の使用木材などの説明の欄に“塗装:セラック“との表示がなければ、それは普及モデルはもちろん、高級手工ギターさえ、仕上げはポリウレタン(或はラカ)のピストル吹き付け塗装だと暗に言っているのと同じです。そして、もし、それらが50万円以上のギターなら、いくら有名製作家だろうが、ブランドの何とかモデルだろうが、最後の詰めを誤ったギターだと言わざるを得ません。中には、このギターはピストル塗装でも良く鳴っているじゃないかと反論もあるでしょう。それなら、セラック塗装すればもっと鳴ります。
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音量音質の比較は当然[セラック>ピストル]です。更に詳しく言えば[セラック>ピストル(ラカ)>ピストル(ポリウレタン)]となります。今日、ピストル塗装でも音量の豊かなギターはありますが、この見た目の[0g>40g>80g]の僅かな違いは、正に、ワイシャツとセーターを着て運動する際の著しい違いの如く、特に、音質に圧倒的な違いを生じます。音響の観点から言えば、ギタ-の塗装は見た目の問題ではなく、音を解き放ち、ブレーキをかけもする、その重さの問題なのです。塗装は軽いに越したことはありません。手間隙経費がかかることは別にして、塗装はセラックが一番です。
セファルディからお送りする手工ギターは総てセラック塗装。普及モデルは同じピストル塗装でも、より層の薄いラカ塗装(4A&4AF&15はポリウレタン)です。再度、この『セラック>ピストル(ラカ)>ピストル(ポリウレタン)』の違いによる、音量音質比較に克目して頂き、ギター料金一覧表の塗装欄の”セラック、ピストル(ラカ薄塗)、ピストル”とはこう言う意味だとご理解下さい。
また、上で目安としてセラックは50万円のギターからと書きましたが、セファルディでは、何とセラック塗装スペインギターが280,000円(GLシリーズ)より。ギター全商品一覧で、”GL“で始まる品番で、この定価の計7本(クラシック3+フラメンコ4)を確認して頂けます。ギターを木材の音響性を最大限に引き出すため、ギターショップではなく、スペインギター振興会として、敢えて、この手間隙コストのかかるセラック手塗り塗装に挑戦します。
因みに、私の知り合いの日本人製作家にセラック塗装を依頼すると30万円。ギター店の私には20%引きの24万円。セラック塗装したギターがではなく、セラック塗装だけの料金です。
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次に、メンテナンスの面から見たピストルとセラックの相違点です。セラックも製作家によって得手不得手はあります。セラックは手塗り故に、僅かながら濃淡やタンポ塗りの跡が残りますが、ピストルなら塗装は一応に仕上がり、見栄えは遥かに宜しいです。しかし、ピストルはその分、塗装の層が厚く、音にブレーキが掛かります。
ましてや、オレンジ色のギターなど論外です。ピストル塗装の中でも最も安価なオレンジ色のポリウレタン塗装は、作りの荒い安価な普及モデルの塗装方法です。早い話が、量産工場の雑な作り(接合部分の隙間etc)やキズを隠すための濃い目のオレンジ色に他なりません。しかも、手にずっしり来る重さです。安物ならともかく、日本でオレンジ色の輸入スペインギターに平然と何十万円~100万円以上の値札が付いていれば、それはむしろ、量産ブランドギターの絶好の証に他なりません。
もっとも、この様に、層が厚いピストル塗装の方が、音響は悪いが、キズが付き難く、清掃も市販の家具の艶出しで拭き取れ、メンテナンスも気楽です。
逆に、薄手のワイシャツ同然のセラックは音響に優れますが、その分キズは付き易いです。また、たとえ新品でも、時と共に自然に光沢を失い、気候によっては曇りも生じます。これらは再塗装で新品同様になりますが、セラックは音響に優れる分だけ、手間がかかると言う訳です。清掃は市販の家具の艶出しで結構ですが、アルコールを含んでいないこと。セラックはアルコールに溶けます。また、汗にも注意しましょう。スペインのフラメンコギタリストのギターの右肘の部分は、汗のせいでセラックが薄れているのがむしろ普通です。肘当てや長袖の着物を心掛けましょう。セラック塗装のギター購入の方は、予め、このセラックの特性を十分ご納得の上、お求め下さい。
要するに、ピストル塗装の方が安価で頑丈で音響が悪く、セラックは極めてデリケートで高価な塗装で音響に優れていると結論出来ます。因みに、私が今まで見て来た日本人&スペイン人プロギタリストの使用するセラック塗装のギターですが、何年も弾いているためか、何れも光沢もなく、キズだらけで、本人達も気にする様子はありませんでした。『少々のキズなら、再塗装すれば完全に消えるし、再塗装する金もないし!? それに、セラック再塗装など何時でも出来る。それより、このギターをより良く歌わせるのが私の仕事だ。』とプロは思っているのです。もちろん、故マヌエル・カーノ先生の愛器もキズだらけでした。
次は女子マラソンです。私は1999年、南スペインのセビージャ国際陸上に浅利純子選手の応援団の通訳で呼ばれました。スタッフと観光地区を歩いていると、散歩中の高橋尚子選手とバッタリ出会いました。結局、彼女は故障で走りませんでしたが、どこの女子高生かと思う程、小柄で子供っぽかったのが第一印象でした。その高橋尚子選手が、その翌年、シドニー五輪での金メダルの様子をスペイン国営テレビで見た時は嬉しかったですね。
さて、もし、高橋尚子選手がセーターにトレパンなら、金メダルは取れたでしょうか? 短パンにTシャツだからこその快走だったはずです。但し、もし、コケたら、セーターにトレパンの方が軽傷で済みます。ギターも同じです。塗装が厚ければ、ぶつけても頑丈ですが、音の出が悪くなります。塗装が薄ければ、音の出は良好ですが、キズは付き易いです。後は好みの問題ですが、ギターはあくまで音を出すのが目的だとすれば、前者は素人受けし、後者は玄人受けします。
とは言え、ギター愛好家が皆、高価なセラック塗りの高級手工ギターを持つ訳ではなく、予算の問題もあります。ただ、ギターの塗装は見映えだけではなく、塗装こそギターの音色のアクセルにもブレーキにも成り得るものだと知っておけば、将来のギター選択に大いに役立つことでしょう。
スペイン製スペインギターか中国製スペインギターか
【序文】読者がスペインギターをお持ちなら、或は、今後、日本で購入されるなら、それは正真正銘100%スペインギターか正真正銘100%中国製スペインギターのどちらかです。これが現実です。
当初(この記事初稿スペイン在住中2008年)、このギター料金の相違と是非は[単板か合板か][普及モデルか手工ギターか][塗装の違い:セラック&ピストル]の3項目だけの予定でした。この中で中国製スペインギターについて触れた時も、これは一部の心無いスペインギター工場だけの例外だと疑わず、参考程度の小記事の予定でしたが、情報を集めるに従って、かなりのスペイン有名無名ギターメーカーが、単に利潤追求のため、臆面もなく、原価二束三文の中国製ギターに自らのラベルを貼り、自社製として世界中に販売し、また、日本の輸入業者や小売店も、利鞘の大きさに見て見ぬ振り。この傾向は21世紀も、更に、拡大の一途を辿っている現実に直面しました。スペインギターの名誉と信頼回復のためにも、これは残念ながら一大項目として取り上げざるを得ないとの結論に至りました。
スペイン製スペインギターか中国製スペインギターか
食は中国、ギターはスペイン!? ところが、今日、何と、中国製ギターをそのまま輸入して、自社のラベルを貼り、スペインギターとして販売するスペインのギターメーカーが後を絶ちません。しかも、隅の方にMade in Chinaとも何とも書いてありません。ラベルの片隅に原産国Chinaと表示する道義心もありません。見た目は完全なスペイン製ギターです。
近年、ウクライナ戦争のおかげで、ヨーロッパでは物価が高騰し、加えて、歴史的円安で、スペインでも、2023年12月現在、一番安い日替り定食が10ユーロ(約1,600円)。総てこんな調子で、中でも石油やギター原材料など、企業努力だけではどう仕様もないのが輸入品です。当然、スペインギターの原価も跳ね上がる一方です。
この様な社会的経済的情勢になれば、どの業界も生き残りのため、値上がり分を小売価格に上乗せするか、丸ごと原価二束三文の中国製品に鞍替えするかのどちらかの選択を迫られます。その結果、昨今の日本同様、巷には格安の中国製品が氾濫しているスペインでは、何とギター付属品(ケース,譜面台,足台etc)のみならず、ギター丸ごと中国に発注し、ラベルだけスペイン製の純スペインギターとして販売するメーカーが増加の一途を辿っています。幾らこの方が手間隙人件費丸ごと大幅節約出来て、経済性が良いとは言え、中国製スペインギターとは低俗漫才にも程があります!!
これでは発想がまるで100円ショップです。しかも、様々な情報を総合すると、決して無名メーカーのやむを得ない生き残り策ではなく、日本を初め世界中に大量輸出している有名複数スペインギターメーカーほど、率先して中国に発注している明らさまな現状が見えて来ます。しかも、これが日本ではモデルによってはかなりの価格が付いており、この傾向は臆面もなく増長する一方です。
日本やアメリカのメーカーが、如何に中国製ギターに自社ラベルを貼って金儲けしても、セファルディは感知しません。しかし、スペインギターとなれば話は別です!! セファルディからお届けするスペインギターは総てスペイン製であり、中国製は1本もないことをここに誓約致します。また、セファルディと当サイトでは、スペインで製作されたギターだけをスペインギターの定義とします。私が何故、この様な当り前の事を一々但し書きする必要があるのでしょうか!? 本当にいい迷惑です!!
しかも、頭からMade in Chinaと表示しないどころか、ラベルには堂々とMade in Spainの表示です。どんな会社も金がなければ回って行きませんが、だからと言って、偽造大国中国に自ら魂を売って、何をやってもいいと言う訳ではないはずです。原産国中国だと知っていながら、平然とスペインギターと称して販売する日本の輸入業者や小売店も同類項です。日本でも時折、中国産食品を国産と偽る産地偽装事件が起こりますが、単に食品がギターに変わっただけのこと。これではまるで平成19年の世相を表す漢字[偽]そのもの。真に、不誠実で情けない話です。
なる程、これなら、サウンドホールを覗けば、正真正銘スペインのギターメーカーのラベルなので、あくまでスペイン製だと言い張れます。こうなれば、もはや、ギターの原産国や表示どうこうの問題ではなく、ギターを取り巻く人間の誠実不誠実の問題です。
日本では、何を買っても原産国表示があるし、スペインの有名なラベルが貼ってあるから、これはスペイン製だ!と疑いもしないのは、今日、性善説のお人好し日本人の軽率の極みでさえあり得ます。
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中国製スペインギタ-:今後の傾向と対策
定価15万円以下なら、どんな国のどんなギターも中国製だと、ギター業界を良く知る日本人プロから聞かされたのが2003年頃でした。それから20年も経てば、更に、利潤追求絶対至上主義に毒され、低コストの味を占めた多くのスペインギターメーカーが、よりグレードの高いモデルまでも偽造大国中国に喜んで発注し、それらが日本を初め、世界中に堂々とスペインギターとして流通すると思うとぞっとします。つまり、この中国製スペインギターの傾向は、今後、増加増長の一途を辿ります。
当サイトは日本にスペイン製スペインギターの価値観を伝えるためのものです。だからこそ、日々圧倒的な現実となり続ける、この中国製スペインギターの脅威をお伝えしなければなりません。
繰り返します。読者がスペインギターをお持ちなら、或は、今後、日本で購入されるなら、それは正真正銘100%スペインギターか正真正銘100%中国製スペインギターのどちらかです。これが現実です。どうか、セファルディの当サイトを熟読され、ギターに関する知識を少しでも深めて頂ければ、必ずや、演奏の幅さえ広がることをお約束します。
日本における中国製ギターの見分け方
以前は、その雑な作り故に、一目瞭然でしたが、近年、中国製ギターも改良されて来ていますので、一般愛好家には判断が難しいと思われます。2通りの場合を想定して見分け方を考えてみましょう。
価格による予想
国産メーカーの中国製ギター(おかしな日本語ですが!?)の場合 ☆ 国産メーカーのギターなら、内側の隅の方に、申し訳程度にMade in Chinaと書いてあるかどうかは知りませんが・・・。
スペインギターの場合 ☆ ラベルはスペインギターでも、今日、明らかに安価なものから、スペインの有名メーカーのかなり高価なものまで、中国製かも知れません。実際、中国製スペインギターには原産国中国の表示がないのですから、これは断定し様がありません。これは、あくまで、私がスペイン在住当時、ギター店やバイヤー達から直接聞いた確かな情報による、推測ではなく、推定ですが、断定ではありません。そこで、ずばり・・・。
店員さんにずばり尋ねる
ギター専門店の場合 ☆ ずばり『このギターはスペインのメーカーのラベルですが、スペイン製ですか、それとも、もしかすると中国製ですか?』と尋ねてみましょう。メーカーの有名無名を問わず、これだけ中国製スペインギターが世界を席巻している今日、こう質問する意義はあります。誠実な店員さんなら、誠実に答えてくれるでしょうが、儲け主義の店なら、迷わず笑顔で、”もちろん、スペイン製です“と不誠実な答えが返って来ることでしょう。
或は、”間違いなくスペインから輸入しております“と言われる知れません。数年前、フラメンコ関係の人に聞いた話ですが、[スペインから~先生を招いて]なる宣伝文句で踊りの講習会を開く場合、有名スペイン人ダンサーは高いので、スペイン在住の、セミプロ級だが、ギャラの安いラテンアメリカ人講師を呼ぶそうです。なる程、確かに”スペインから”の宣伝文句は本当ですが、あたかもスペイン人講師と思わせるための方便には違いありません。100%中国製スペインギターをスペインから日本に輸入して、”間違いなくスペインから輸入しております“とは上手い方便です。
こうなると、原産国表記なしギター故に、藪蛇ですが、これはもう、ギター云々の問題ではなく、ギター取り巻く人間のフェアープレーの精神の問題です。
セファルディからお届けするスペインギターは総てスペイン製スペインギターであることをここに宣誓致します。
一般の楽器店の場合 ☆ たとえ中国製スペインギターでも、おそらく、卸し元からはスペイン製だと言われているでしょうし、ギターもついでに置いてある一般の楽器店の店員さんなら、ギター知識にも乏しいと思われますので、ラベルがスペインのものなら、何の疑いもなく”はい、スペイン製です“と無邪気な答えが返って来ることでしょう。何れにせよ、ギターはおまけ程度の扱いの楽器店では、今後、安価な中国製ギターしか販売されない可能性の方が大です。
スペインギターに価値観を見出したい読者の皆さん、100%スペイン製のスペインギターを入手して下さい。100%中国製スペインギターでは人生悲しいではありませんか。
これらの直接原因は、ユ-ロ導入(2002年)に伴うユーロバブル後も、スペインでは物価が下がらず、スペインギターを安く作れず、加えて、近年のウクライナ戦争による、更なる原材料費の高騰が挙げられます。しかし!! セファルディは、安かろうが高かろうが、今後共、スペインギターのみを価値観として、同胞日本人に問いかけて参ります。
総括
ギター料金の相違と是非 総括
以上、主に4項目の相違により、ギター価格にも相違が生じ、結局、良いギターはそれなりの料金であり、そして、それなりの料金のギターは、良くも悪くも、それなりの理由があることを見て来ました。
また、最初の3項目[単板か合板か][普及モデルか手工ギターか][塗装の違い:セラック&ピストル]は、主として、手間隙原価の違いにより生じる料金の相違と是非であり、最後の[スペイン製スペインギターか中国製スペインギターか]は、ギター産業を取り巻く人々のモラルの高低による料金の相違と是非であると言えます。ギターに限らず何でも、良い物が欲しければ、それなりの料金を払えと言うことになりますが、それなりの価格だからと言って、実の伴わないギターもあるのが現実です。
ただ、舶来品に弱い国民性もあるのでしょうか。日本におけるスペインギター価格は世界一高いです。今日、インターネットのご時世でもあり、読者も、同じギターがどこの国で幾らなのか、比較してみて下さい。今日の歴史的円安&ユーロ高とスペイン製のスペインギターであるが故に、特別安くはお届け出来ませんが、セファルディでは、スペイン製普及モデルもスペイン製手工ギターも、およそヨ-ロッパ国内価格+αでご紹介します。主旨はスペインギター振興会ですので、高い安いを論じるのが目的ではありませんが、確かに、日本におけるスペイン原産の輸入スペインギターの割には、お求め易い価格設定であるとの認識をお持ち頂いて結構です。
勿論、読者によって価格の印象は異なるでしょうが、正真正銘100%スペイン製スペインギターですから、日本の巷で見受けられる大衆ギター(国産、中国製、中国製スペインギター)に比べれば、最終価格は安くはありません。安くはありませんが、それでもヨ-ロッパ国内価格+αがセファルディの価格基準です。店舗としての運営も考慮すれば、これ以上安くも出来ません。当サイトはスペイン製スペインギターに関してのものです。他の国のギターは一切忘れて、スペイン製スペインギターだけに集中して下さい。
もっとも、たとえある店で同じギターが他店より安くても、ギターは楽器ですから、鳴らなければ意味がありません。従って、安くても良く鳴るギターを捜したり、高いギターは、なる程それなりの音がすると納得させられるところに、ギター選択の面白さがあると言えます。また、それを聞き分ける、ある程度の耳がなければ、正しく選択出来ないとも言えます。木は生物ですので、図面通り組立てるプラモデルと違い、2本として同じ音色のギターはありません。ですから、2本以上のギターがあれば、それは各自の好みと見る目によって、必ず何らかの優劣が付くと言うことでもあります。
そして、その優劣や好みをギターの外見や価格、メーカーの有名無名、ギター仲間や、心の中では早く買えと言っている店員さんのアドバイスを聞いて、優柔不断に何となく決めるのではなく、今後、これら4項目の観点からも吟味して、自らの意見を持って下さい。そうすれば、より良いギターの選択、価格に似合ったギター、及び、スペインギターを見る目と利く耳も養われて来ます。そして、それは普段は使わない奥行きのある引き出しとして、必ず演奏の幅をも広げてくれます。
以上、中には核心を突くコメントもありますが、それはまた、今日の多くの誠実なスペイン人製作家や良心的なギター製作所の率直な意見を代弁したと解釈して頂いて結構です。
セファルディのスペインギター料金の相違と是非 総括
☆スペイン製 普及モデル(クラシック&フラメンコ)
合板ギター:68,000円から。安かろう悪かろうでは意味がありません。この料金からそれなりに鳴るギターをお届けします。もちろん、安くてもスペイン製です。
単板ギター:165,000円から198,000円まで。セラック手塗り塗装で仕上げたGLシリーズ(280,000円)も用意しています。
有名ラベルのスペイン普及モデルがブランド化され、日本で手工ギター以上のとんでもない値札が付き、何十万~百万円以上の高級手工ギターがセラックではなく、臆面もなくピストル塗装されて店頭に並ぶ21世紀の今日、真に良心的でお求め安い価格です。それでも、最終価格はおよそヨ-ロッパ国内価格+αです。
長年親交のあるPrudencio Saez製作所(創業1963年)の社長父子の協力により、音響を重視した、総てセファルディのための特別仕上げのギターをお届けします。
☆スペイン製 手工ギター(クラシック&フラメンコ)
軽いタッチで音が分離して遠達力があり、味とこくと個性ある音色で歌い、包容力さえ感じさせる、スペイン製手工ギターを厳選してお届けします。
セファルディからお届けするスペイン製手工ギターはクラシック、フラメンコを問わず、総てラベルの製作家本人の作品であり、総てセラック手塗り塗装(FSAはニトロ:ピストル&手塗り15g仕上げ)です。名より実を取るべく、有名無名を問わず、最終価格はおよそヨーロッパ国内価格+αです。
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謎の空白19.8~28~48万円!? 正確には198,000円(一番高価なピストル塗装の普及モデル)~280,000円(GLシリーズ,セラック手塗りの一番高価な普及モデル)~400,000円(一番安い手工ギター)ですが、セファルディのギター料金一覧表には、この中間の料金のギターが1本もないことがお分かり頂けます。これは取りも直さず、普及モデルにおかしな箔付けをして高く売る様なことをせず、普及モデル&手工ギター共にヨーロッパ国内価格+αで日本に紹介する基本方針を実践したもの、それ故の、この料金帯の空白とご理解下さい。スペイン製普及モデルは198,000円まで。セッラク手塗りでも280,000円。スペイン製手工ギターは400,000円から。唯、それだけのことです。
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ご紹介するスペインギターの価格ではなく、スペインギター振興会の主旨に賛同して下さる様、お願い致します(代表)。
今後の推移と展望
2002年のユーロ導入以降、スペインでも物価はヨーロッパ並みとなり、特に、近年は中華肺炎とウクライナ戦争により、原材料(木材)はユーロで激しく値上がりし、ギターも右へ倣え。
一方、私がスペイン在住時のアベノミクス直前には、スペインの銀行に1万円持って行くと、手数料を引かれても99ユーロ戻って来たのを今でも良く覚えていますが、その後、日本政府は輸出振興のため、円安に舵を切り、更に、ウクライナ戦争でによる歴史的円安により、2024年6月現在、1万円=58ユーロにしか帰って来ません。何と、円の対ユーロの価値は41%の目減りです。
2023年1月、2024年1月とスペインを訪問しましたが、ギター梱包用の段ボールさえ2倍になっており、ケースも輸送費も、総て値上がりし続けています。つまり、現在、輸入スペインギターの原価は、スペイン国内でもユーロで上がり続け、更に、超円安ユーロ高により、二重苦の高止まり状態です。正直、先が見えません。
従って、日本に入って来るスペインからの輸入ギターは、今後、単に、ギタービジネスとして原価を考えれば、普及モデルに関しては、今以上に率先して、疑いの余地なく、原産国非表示の中国製スペインギターに靡き、疑いの余地なく、高級モデルまでも中国製となって行きます。勿論、ラベルは相変わらず、臆面もなく、スペイン有名メーカーのままです。
手工ギターに関しては、スペイン製に限らず、欧州ユーロ圏のものは、なお高騰し、超円安もあり、今の原価を鑑みれば、今後、日本での最終価格は100万円が最低ラインになって来ます、いえ、既に、そうなっています。これは、無名個人製作家の場合です。それでは、今までの復習ですが、定価50万、60万、70万、80万円のスペイン製ギターは、一体、誰が作っているのでしょうか? 一段落上で述べた”疑いの余地なく、高級モデルまでも中国製“であるなら、作者は中国人です。
一方、スペイン人名工の手工ギターの原価は、幾ら超円安時代とは言え、現行レートで、既に、100万円以上です(2024年6月現在)。原価の話です。これに、更に、関税に送料。一体、最終価格は幾らになるのでしょうか?
しかし、セファルディは、安かろうが高かろうが、今後共、スペイン製スペインギターのみを価値観として、同胞日本人に紹介して行きます。
なお、セファルディではこの現状を憂い、比較的低価格で製作する無名のスペイン人個人製作家の発掘の必要を痛感し、そして、スペイン在住30年の店長独自の外交ルート、及び、愛知県立大学スペイン語学科卒のスペイン語力により、遂に、捜し出しました。最終価格48万円を予定しています。自然乾燥の木材を使用した手工品で、セラック手塗りです。今しばらくお待ち下さい。
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※ 付 記 ※
ある会社で、何のための仕事かと尋ねられた社員が”皆の幸せのため”と答えたところ、上司に”そうじゃない、売り上げを伸ばすためだ”と説教されたそうです(2008年初頭のある日本の週刊誌)。
私はある意味、技術レベルの遥かに高いプロ野球より、高校野球の方が好きです。それは、ノーギャラで純粋に野球技術だけを競う高校野球の方が、そのフェアプレ-の精神故に、観る者の心に吹く爽やかな一陣の風であり得るからです。しかし、人は学生であることを辞め、金銭社会に出れば、この上司の言った如く、金銭に魂を売って、売上げを伸ばすためには何をやってもいいのでしょうか?
人生、何をやろうが、フェアプレ-の精神なき爽やかな一陣の風など吹きはしません。そして、フェアプレ-の精神とは、自分へ思いやりではなく、相手への思いやりのはずです。
確かに、個人商店から大企業まで、皆、儲けは必要です。金銭に一喜一憂するのが、資本主義社会に生まれた我々の宿命です。しかし、偏れば、この上司の如く、偏った説教を食らいます。
しかし!! 手工品より高いブランド化されたスペイン製普及モデル、原産国非表示の中国製スペインギター、影武者ギターなど、これらの珍品が大手を振って罷り通っているのは、相手を思いやる爽やかな一陣の風どころか、自らのみを思いやる、偏った利潤追求至上主義に泥酔しているからです。読者の皆さんも一緒に酔うかどうか。それは各自の自由です。しかし、・・・。
そもそも、ギターの果たすべき本来の使命とは、弾き手、聴く人、製作者、売る人、ギターを取り巻く総ての人が情緒的に豊かになることのはずです。そして、ギターと代金の交換は最後の最後に行うもの。これがスペインギターに対するセファルディの主旨であり基本姿勢です。
さて、それでは、最後に、④ギター購入直前アドバイスに入ります。
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