スペインギターとは
日本人には、何となく、ギターはスペインのイメージがあります。70年前、スペイン人ギタリスト、故ナルシソ・ジェペスが弾いて世界中に流れたスペインの名曲”禁じられた遊び”の影響が未だに根底にあるのでしょう。私も、小学5年生の時に買ってもらったクラシックギターで、歌謡曲の歌本のコードを押えて、ジャラジャラ鳴らしながら、いつか、”禁じられた遊び”、”アルハンブラの想い出”、”アストゥリアス”など、何故か、スペインの曲に惹かれ、更に、高2の世界史の教科書に載っていたアルハンブラ宮殿を見て、”よし、行こう!”と決めました。若かったですね。そして、14年後、本当に、アルハンブラ宮殿で観光ガイドとして10年間働くことになるとは”夢にも”思いませんでした。それ以前は、グラナダ市内の道端でギターを弾いて、金をもらう乞食生活でしたので、正に”夢にも”でした。
その後、ガイド業にも飽きて、アルハンブラ宮殿は数年に一度行く位でちょうどいいと思った私は、グラナダ市役所横で日本語情報センターを始めました。
故マヌエル・カーノ先生に習おうと志して来たグラナダでしたが、現実は生活に追われ、正直、思った事の10分の1も学べませんでした。それでも、先生や息子のホセ・マヌエル・カーノを始め、楽譜が読めず、レコードから耳コピした”カテドラル第3楽章”をスピード違反で、涼しい顔で完璧に弾きこなし、指慣らししていたカルロス・サラテ、アルハンブラ宮殿で聴いたマヌエル・バルエコ、グラナダ市闘牛場で聴いた超音速パコ・デ・ルシア、家にはギターさえなく、一切練習せず、いきなりヨーロッパツアーに出て行く、大の練習嫌いのメルチョール・コルドバ。滅茶苦茶上手いのに、食えなくて、靴磨きをしていた、名もないジプシーのギタリストなど、皆、強烈な印象を残してくれました。そして、そこには、常に、スペインの旋律とスペイン(スパニッシュ)ギターがありました。
スペインギターとは、何か特別なスペインのギターではなく、スペイン製のクラシックギター&フラメンコギターのことです。形や大きさが特別な訳でも何でもありませんが、響きが独特です。
一国の気候風土は、その国民性、食文化、そして、楽器作りを決定付けます。どんな食品にも乾燥剤の入っていない、極端な乾燥気候のスペインでは、人もギターもお喋りが多くなります。従って、どんな安物ギターでも、それなりに乾いた音色がすること。重厚な音のクラシックギターでも、それなりに乾いた重さが感じられること。これがスペインギター全般に渡る一番の特色だと言えます。仮に、日本や他の国々で、全く同じ製作家が全く同じギターを作っても、その気候の故に、違った音色になります。工法は真似出来ても、気候は絶対に真似出来ない、このスペインの乾燥気候こそ、スペインギターの一番の特徴です。
しかし、今日、残念ながら、日本でも名の知れた、多くの有名スペインギターメーカーが100%中国で作らせ、自社のラベルを貼った100%中国製スペインギター(詳細click)を世界中に、そして、日本に100%スペインギターとして、相当数輸出しています。これは筆者のスペイン滞在中、特に最後の10年間に、ギター業界の様々な人間から聞かされた確かな情報です。食品は産地偽装で摘発されても、100%中国製スペインギターはお咎めなし。意図的にMade in Chinaと表記もせず、消費者には絶対分かりません。勿論、日本の輸入元も、これを100%スペインギターとして販売する確信犯。残念ながら、スペインも日本も、利益至上主義で、節操がないのがギター業界の現状です。
だからこそ、私が30年過ごしたスペインから、本物のスペインギター(クラシック&フラメンコ)を人生の集大成として日本にご紹介します。国産も他の国のギターも感知しません。ましてや、100%中国製スペインギターなど論外です。100%スペイン製スペインギターをご紹介します。
正しいギター選択のための4項目(序文)
ギターに限らず、ワイン、骨董品、絵画など、まず、困るのが、表示金額が高いのか安いのか、相場通りなのか、観る目を持っていなければ、皆目見当が付かないことです。ギターは、多少色は違っても、形は大体同じです。それが、何故、デパートの5万円から専門店の500万円までの料金が付くのでしょうか? それは、果たして、適正価格なのでしょうか?
有名メーカーだから、友人と同じギターが欲しい・・・。優柔不断では、巷の商業主義に翻弄されるだけです。何かしらの判断基準はないのでしょうか?
単に、スペイン製ギターの販売だけではなく、ギターの一般知識を広めるのもセファルディの使命と自負すればこそ、そして、読者が本当に価値ある一本に出会うためにも、左の①②③④をご精読下さい。詳細で時間を要します(本当にかなり長いです)が、必ずや、ギターを見る目(判断基準)も養われ、ギター人生観、ひいては、演奏の幅さえ広がることをお約束します。
✿時間のない方は、直接、料金一覧表に飛んで頂き、各ギターとその詳細にアクセス願います。
①良いギターとは
良いギターとは、簡潔に、良く鳴るギターと要約出来るでしょう。鳴らないギターでは自分の思った様に音が出てくれず、やる気を削がれ、ましてや、音楽表現どころではありません。逆に、良く鳴るギターは自ずと弾き手をその気にさせてくれ、上達を促します。
従って、最初から良い楽器を持った方が上達すると言うのは、楽器商のセールス文句である反面、真理を突いています。やはり、ある程度以上の楽器は上達の必要条件です。ギター奏者は他のギター奏者にも、そして、良いギターにも刺激を受けて上達して行く事実は私自身の実感でもあります。
そして、誰でも同じ代金を払うなら、より良いギターを求めたいと思うのは当然です。一般的には、より高価である程、より良いギターだと言って宜しいでしょう。そのギター料金の相違と是非は別項で述べますが、ここでは普及モデル(量産ギター)から高級手工品に至る、総てのギターの規範たるべき、この掴み所のない良いギター、特に良いスペインギターの観点から、セファルディ流定義を試みてみます。読者の皆さん、掴んで下さい。
音量について
良く鳴るギターなら音が大きいはずだと言う単純な答えが返って来そうですが、問題は、その大きな音がどの様に弾けば出るギターかと言うことなのです。例えば、軽自動車で精一杯アクセルを踏み込んでも、ベンツで軽く流しても、時速100kmは時速100kmですが・・・。
良いギターの第一条件は、軽いタッチで音が気持ち良く出るギターと言えるでしょう。逆に、音が今一抜けないギターは、やはり今一です。バッティングは手応え、りんごは歯応え、ギターも弾き応えです。打てば響く太鼓の如く、まずは、ギターを軽く爪弾いただけでスキッと音が抜けるか、少々力を込めなければ音が出ないかが判断基準です。
同時に、少々力を込めなければ音が出ないギターには、次で述べる音質がなく、軽いタッチで音が自ずと出てくれるギターは、次項の[音質について]の[A]~[D]もまた、それなりに伴ってくれます。
それ故、最も端的なギター選考基準は、パリッとした歯応えの煎餅なら可、湿気っていれば不可だと比喩すれば分かり易いでしょう。但し、最初は鳴らず、弾き込むと明らかに音量音質を増すギターもありますので、ギターの良し悪しは、第一印象だけでは、一概に判断出来ない面も大いにあります。
セファルディからお届けするスペイン製普及モデル(料金一覧表の198,000円以下のギター&セラック手塗りGLシリーズ28万円)はセファルディがプルデンシオ・サエス製作所に指定する音量増幅内部構造です。店長の発案ではありませんが、何人もの有名な製作家が一昔前から実践している構造です(もちろん、この様式を用いない名工も多くいます)。ギターは生物ですから一概に言えませんが、この構造にすれば、平均して音量が増すことは統計上明らかです。
さて、初心者に限らず、上級者まで、この音量だけでギターを判断している、つまり、音が大きい方が良いギターであり、高価なギターほど音が大きいはずだと判断している人が結構いると思われます。しかし、量より質は人生の総ての面において、そして、音量より音質はギターのみならず、総ての楽器に共通して言えることです。従って、次の[音質について]の項目こそ、最も重要なギター選択基準です。少々長いですが、私も力を込めた項目ですので、克目してお読み下さい。
音質について
音量だけでなく、更に、それが味のある音である時、音質のあるギターだと言えます。たとえ量は同じでも、歯答えのある麺とない麺、スペインではこくのあるオーリブ油とないオリーブ油とも比喩出来ます。こくも味のある音も、中々言葉にならず、敢えて言えば、単に音が出ている以上の音なのでしょうが、これではますます分かりません。結局、何本も弾き比べて、耳を肥す以外にないのですが、それは、色々食べ歩く内に、いつの間にか舌が肥えて来ることにも似ています。
私が幼い頃からインスタントラーメンはありました。今では、これがインスタントかと思う様な美味しい製品もありますが、翌日、手打ちラーメンを食べれば違いは歴然です。確かに、見た目は両者共、丼一杯の同じ量のラーメンで、歴然とした違いはありませんが、そこに至る労力、過程、風味、歯応え、味、料金の違いは歴然です。わざわざラーメン屋まで出向いて手打ちラーメンを食べる人は、量ではなく、この歴然とした質の違いにインスタントラーメンより高いお金を払うと言えます。この歴然とした違いが良く分かっている人は、手打ちラーメンの方が歴然と高くても文句は言いません。見た目の量ではなく、味覚に訴える味が歴然と違うからです。
同様に、ギター奏者にとっても、ギターの音量の大小ではなく、音の味覚に訴える、味とこくのある音質こそ、ギター選択の一番の判断基準であるべきです。
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とは言え、これではまだまだ抽象的表現の域を出ません。更に、幾つかの観点から、この音質のあるギターとは具体的に如何なるギターかについて、分かり易く見てみましょう。
【A】音の分離と遠達力
ギターは一度に6つの音まで同時に出る訳ですが、いくら音量があっても、各音が分離せず団子状態なら、今一つ釈然としない響き方をします。私は数十年前の安物のスペイン製くるみギターを持っています。当時は合板がなかった時代でしたので、安物とは言え、単板ギターですが、徹底的に経費節減したものと見え、何と内部には力木さえありません。ところが、おそらく経過年数のせいでしょう。このギターが手元で弾いた感じ、音は非常に小さいのですが、他の手工ギターを差し置き、何と聞く人総てにこのギターが一番良いと言われます。具体的には、一音一音がはっきり分離しており、遠くまできれいに聞こえると言うのです。また、私がグラナダ居住中の1990年、R.ブーシェのギターを弾く機会がありました。正直、手元での響きは、これが銘器かなあと言う第一印象だったのですが、プロがステージで弾くと、心に沁みる様な音色が客席の最後列まで余裕で響いて来ました。
音が分離しているが故に、軽いタッチで音に遠達力のあるギターこそ良いギターだと言えます。これを裏打ちする、以前読んだ、ある歌舞伎の師匠の逸話をご紹介します。マイクも何もない歌舞伎だからこそ、舞台の一番奥まで声を届かせるには声量だと思っていたその師匠は、ある日、ある女性ピアニストについて、”彼女の音は一音一音はっきり分離してきれいだ“との小澤征爾氏のコメントを聞き、母音をはっきり発音してやれば、声は張り上げなくとも、声は舞台の奥まで届くことを悟ったそうです。良いギターも同じです。各音が分離していれば、遠達力に優れ、手元の音量はそれ程ではなくとも、大きく聞こえるものです。また、その様なギターの音色には、必ず、味とこくと、そして、次に述べる個性が伴います。世の多くのギタリスト達の一番の判断基準もここにあります。
【B】個性ある音色
これもまた、掴み所のない表現ですが、スペイン人製作家やギタリストはギターを評価する際、”個性ある音色だから、これは良いギターだ”とか、”このギターは音に個性がない“とよく言います。
上の例で言えば、インスタントラーメンも手打ちラーメンも、何を食べても皆同じと言う人は味覚がない、つまり、手打ちラーメンの良さ、その個性が分からない味覚音痴だと言えます。ラーメンはともかく、コーヒーとなれば、正直、インスタントも専門店のコーヒーも、余り違いが分からない人も結構いるのではないでしょうか? コーヒーの個性を知覚する味覚がないと言えます。
同様に、ただ鳴っているだけではなく、音色が個性的だと違いの分かるスペイン人ギタリストは、”このギターは個性ある良いギターだ“との言い回しを用います。また、個性的な自分だけの音色のギターを作れる人が優れた製作家であり、それがその人の作風とも言えるでしょう。
【C】歌うギター
この歌うとは、私の師匠、故マヌエル・カーノ先生と息子ホセ・マヌエル・カーノが良いギターを形容する際、良く聞かされた表現です。それも、何分か試奏した後ではなく、弾き始めてすぐ口にする文句です。正に、名人は名器を知る、しかも、初見で知る。単音を爪弾くだけで、コードを押さえて、一度掻き鳴らすだけで、果たしてこのギターは歌うか否か、聴く耳を持っている人は利きます。
それは、あたかも、日本では利き酒、スペインではワインやオリーブ油を利く職人が、味とこくを舌で即座に利き分け、”良し!!“と頷く様なもの。ギターも楽器一般の選択も、言葉を変えれば、結局は利くこと、そして、利く耳を持っているか否かに換言出来ます。その時、酒やワインなら美味く、良いギターなら自ずと歌うギターであり、自ずと弾き手をも歌い奏でることに誘(いざな)います。
【D】包容力
良いギターを包容力と描写するのは、もしかすると世界中で私が初めてかも知れません。これはギターに限ったことではなく、上手い演奏は、楽器でも声楽でも、聴く人を包み込むふくよかさが感じられます。それは単に楽譜通り音が出ている以上の、奏者の豊かな表現力の表れです。
女性が男性に求めるものの一つがこの包容力かも知れませんが、男女を問わず、人間性に奥行きのある人は無言の内に包容力を感じさせます。それは良いギターも同じこと。包容力ある歌心のギター奏者は、類は友を呼んで、包容力のある音色のギターと出会うのかも知れません。
いわゆる箱鳴りではなく、ギター全体が鳴り、更に、奏者の後ろから音が泉の様に湧き出ていると感じるギターこそ、包容力のある良いギターだと言えるでしょう。
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インスタントラーメンも手打ちラーメンも丼一杯のラーメンです。安物ワインも年代物ワインもグラス一杯のワインなのです。何が同じでしょうか? 量です。それでは、どちらが美味しいでしょうか? 後者です。同様に、ギターも音量ではなく、音色が美味しいかどうか、つまり、味とこくこそ、判断の一番の決め手であるべきです。味とこくのある音色のギターなら、以上【A.B.C.D】も 伴い、【A.B.C.D】が感じらるギターなら、それに応じた味とこくの伴うギターでもあるはずです。しかし、味とこくと言われても、掴み所がありません。結局、何軒も食べ歩かなければ、ラーメンも比較出来ない様に、ギターも何台も弾いて耳を肥やすしかありません。
バランスについて
弦によって、フレットによって、音量音質のバラつきがなく一定であること。
但し、どんな名器も、このフレットだけは音が弱いみたいな弱点は必ずあるものです。その意味では、ギターの選択は、どこで妥協するかと言う、妥協点の問題とも言えます。
敢えて、バランスの良し悪しの参考基準を挙げるなら、音質に優れたギターはまた、バランスも良く、バランスの良いギターはまた、音質にも優れているものです。
弾き易さについて
ある程度上達すれば、少々のサイズの問題は慣れの問題だとも言えますが、特に、初心者の内は、力みを伴うおかしな癖が付かないように、ネックの幅、太さ、弦長、弦高など、弾き手に無理のないサイズであることが必要です。
そのため、初心者は弾き易さと力む癖を付けないことを最優先して、少々の雑音は覚悟で、ブリッジの骨を削って弦を低めに張ったり、張力の弱いローテンション弦を使用しても差し支えないと思います。詳しくはこちらをご覧下さい。
セファルディでは、手の小さな人、女性子供用サイズのスペイン製ギターを用意しています。料金一覧表で弦長630&640&645㎜のギターをご覧下さい。
総括
その他、しっかりした作り、内部構造、仕上げの美しさ、塗装など、幾らでも述べることが出来ますが、一応、これらがセファルディ流良いギターの基本的な4項目(音量,音質,バランス,弾き易さ)です。
実際のところ、総てにおいて満足の行くギターと言うのは、如何に名工の作品でも中々ないものです。その意味では、ギターの選択はどこで妥協するかとも言えます。ただ、人によって、その妥協点が高いか低いかと言うことなのです。そして、味とこくを聞き分ける耳が養われて来る程に、良いギターの妥協点は高くなります。
以上、良いギターについて、木工ではなく、音の観点から述べたことに留意して下さい。
以前、どこかの高校野球の監督さんが”野球は勝った方が強い“と言ったことがありました。同様に、その調べによって、奏者も聴く人も豊かになるべきギターの最終目的から言えば、”ギターは鳴った方が良いギター”なのです。ただし、鳴り方は音質を一番の判断基準にして下さい。
読者の皆さん一人一人が良いスペインギターに出会うことを切に願います(代表)。
②ギターの材質とサイズ
読者の目の前に、米、酢、魚、タクアン、胡瓜、干ぴょう、海苔が並べられて、これが寿司ですと言われたら、ギョっとしませんか? 仮に、それらが新鮮な極上のネタだとしても、調理前なのですから、それらは寿司の食材の箇条書き説明になってはいても、それを巧みに調理して、ネタ同様、極上の寿司になるかどうかは全く別次元の問題なのです。
近年、スペインのみならず、ヨーロッパ各国には華僑経営の日本料理屋が目立ちます。具材はともかく、何より酢加減が滅茶苦茶で、とても寿司の味がしません。仮に、最高のネタ、日本の醤油やわさびを使っているとしてもです。ギターにも同様のことは起こり得ます。
ギター各部分の材質説明自体も食材一覧表みたいなもので、これらの良い木材のネタを揃えることと、それを美味しい寿司やギターに仕上げることは、ある意味、全く無関係だとさえ言えます。寿司を食べる人はコシヒカリの米粒を食べるのではなく、料理としての寿司を食べるのでしょう。
同様に、次に列挙する各部分の木材自体の優劣や原価ではなく、その木材故に出来上がったギター、そして、特に、スペインギターの音色の観点から、以下10項目をお読み下さい。
表面板について
手工ギターの場合、ドイツ松(Sp:abeto alemán✿英:german spruce)とカナダ杉(通称‟杉“,Sp:cedro✿英:cedar)が主流。前者の方が良質と言う職人が多く、現に、原価も随分違いますが、ベルナベやフレタなど、カナダ杉を好む世界的名工もいますので、製作家との相性もあり、ギターが出来上がってみれば、一概にどちらが良いとは言えない面があります。
もっとも、一概には、表面板が“杉“のギターは最初から鳴り、“松“のギターは最初は鳴らないが、弾き込む程に、音量音質を増して来ると言われています。それ故、高級ギターの表面板はやはり“ドイツ松“だとも、一概に信じられている様です。
私の師匠、故マヌエル・カーノ先生の息子ホセ・マヌエル・カーノが現在コンサートに使用している先生の遺品2本は、表面板がそれぞれドイツ松と杉。両方共、凄い音量に音質です。一概には言えません。また、ギターコレクターとしても有名だった、晩年のマヌエル・カーノ先生は、表面板杉のギターを結構購入していました。”わしには時間がない“。こう言う選択理由もありだと言うことです。
また、YouTubeで国内外の著名なギタリストの動画を見ると、その使用ギターの表面板のドイツ松と杉の割合は大体6:4で、意外と杉を選ぶ奏者も多いことが分かります。
何れにせよ、音の即効性で杉、将来性で松と一概に言ってもいいでしょう(以上手工ギター)。
普及モデル(量産ギター)に高価なドイツ松は使われず(一部高級モデルを除く)、より安価な松材杉材が使用されます。ですから、普及モデル(セファルディではギター料金一覧表&ギター全商品一覧の198,000円以下のギター)の場合、この表面板松or杉の区別は余り気にせず、好みの音色で選べば宜しいでしょう。
側面板&裏板について
あたかも、クラシックギターはハカランダかローズ、フラメンコギターは糸杉(シプレス)で作る規則があるかの如く、現在、世界のギターの使用木材はこれら3つが圧倒的主流です(1~3)。
実は、スペインでは二昔前まで、多種多様な木材でギターが作られていました。セファルディは既成概念に捕らわれることなく、様々な材質のスペインギターを復活紹介して行きます(4~9&10)。
さて、”このギターは何の木のギターか?“と言う時、この側面板&裏板の使用木材を指します。例えば、表面板がドイツ松で、側面板&裏板がローズのギターであれば、それはドイツ松のギターではなく、ローズのギターだと言うことです。以下列挙します。
1ハカランダ (別名中南米ローズ,Sp:palosanto de Río✿英:brasilian rosewood)
おそらく、世界で一番良く響くこの木はスペイン語でpalosanto(聖木)と呼ばれ、様々な高級木製楽器に使われます。ブラジル・アマゾン川支流ハカランダ川流域に生息するため、こう呼ばれますが(↑Ríoは川,スペイン語訳はハカランダ川の聖木)、伐採過多故に、ワシントン条約で絶滅種に指定されており、近い将来、この木のギターは高騰欠如必至です。クラシック&フラメンコギターに使用。
なお、近年、日本やスペインだけではなく、世界中のギター業界で、このハカランダと言う名称が消え、代わりに中南米ローズと記述される様になりました。早い話が、2で述べる様に、広い意味で中南米のローズウッドの一種には違いない、ご禁制のこのハカランダをこう呼ぶことにより、当局との摩擦を避けている訳です。
セファルディでは、名工・故ベルンド・マルティンの最高級手工品を普通サイズ弦長650mmとタレガモデル弦長640mmでご紹介しています。
2 ローズウッド(通称ローズ,Sp:palosanto de India✿英:indian rosewood)
同じくpalosantoですが、インド産。即ち、インド産ローズウッドがローズ、ブラジル産ローズウッドがハカランダ(中南米ローズ)です。同じ科の木ですが、木目や木質が少し違います。音量音質の実力比は『10(ハカランダ)>9.5(ローズ)』位でしょうか。クラシック&フラメンコギターに使用。
但し、表面板の項で述べた様に、表面板の素材としては『ドイツ松>杉』でも、製作家によってギターの出来が逆転する様に、側面板&裏板でも『ハカランダ<ローズ』と、ギターの出来映えの逆転現象は大いにあり得ます。例えば、私が今まで弾いた総てのクラシックギターで最高だと思ったのは、フレタ作の側面板&裏板がローズで表面板が杉。先輩の吉川二郎氏がコンサートや録音に使用する愛器はアントニオ・デ・トーレスのひ孫作で、側面板&裏板がローズで表面板がドイツ松。そして、スペイン人フラメンコギタリスト、ラファエル・リケーニ氏がステージで使っていたギターを以前見せてもらいましたが、これも側面板&裏板がローズで表面板がドイツ松でした。
今日、ハカランダ(中南米ローズ)の高騰故に、却って付加価値を付けて高く売ろうとする傾向が見られます。安易にハカランダの名前だけで判断したり、宣伝文句に踊らされないで、ローズでもプロを納得させるこの3例の如く、ハカランダを凌ぐギターは大いにあり得ますので、捜してみる価値はあります。名より実を取ることを心がけて下さい。実際、ローズを使っているプロは多いです。
最高のネタで素人が握った寿司より、必ずしも高価ではないネタで寿司職人の握った寿司の方が旨いことにも例えられます。使用木材(ネタ)の良し悪しより、ギター(料理)の出来映え(味&音色)で評価することが肝心です。
名工のハカランダのギターにもハズレはあります。勿論、これはハカランダとローズだけではなく、総ての木材において言えることです。そして、それを実践して見せたのが、木材が乏しかった時代に数々の名器を造った近代スペインギターの開祖アントニオ・デ・トーレスです。
セファルディでは、若き名工フランシスコ・ムニョス(2018年国際ギター製作コンクール・アントニオ・マリン・モンテロ杯受賞)のクラシックギター&フラメンコギター(ローズ&ドイツ松/杉)をお奨めします。とんでもない音量と音質です。
3 糸杉(シプレス,Sp:ciprés✿英:cypress)
ハカランダ(中南米ローズ)やローズが大砲とすれば、ヨーロッパ、中近東に多いこの糸杉はマシンガンに例えられます。カラッとした芯のある太い音で、フラメンコギターの定番木材です。
日本では”シープレス”と長母音表記ですが、実際は短母音で、”レ”にアクセントを置いて、”シプレス”が正しい発音です。私はスペイン学科出身ですので、スペインギターだけではなく、スペインギターにまつわるスペイン語にも拘ります。
なお、糸杉材ではフラメンコギターしか作ってはいけないとの規則はありません。事実、故ベルンド・マルティン氏はヨーロッパの顧客向けに”糸杉のクラシックギター”を製作していました。セファルディでも糸杉のクラシックギターを紹介しています。
4 虎目かえで(Sp:arce rizado✿英:maple) スペインの白いギター
何世紀も前からバイオリン、チェロの本体に使われるこの木材で、何故ギターが作られないのか不思議な位ですが、YouTubeでも、たまにこの材質のクラシックギター(0:18より虎目かえで側面板が良く見える)&フラメンコギターを見かけます。
そこで、この虎目かえで材のギターを日本に普及させるべく、プルデンシオ・サエス社の協力を得て、スペインの白いギターと命名したこの木材のクラシックギター(146‐s)&フラメンコギター(ARF)を、各々、650㎜と630㎜の両弦長でご紹介します。各品番をclick願います。セファルディが最も力を注いでいるスペイン製普及モデルです。
手工品では、若き名工フランシスコ・ムニョスが氏の虎目かえでで仕上げた渾身のクラシックギターをお届けします。ハカランダのギターにも劣らない音量音質です。
5 くるみ(Sp:nogal✿英:walnut)
ヨーロッパではリュートなど、古楽器製作に使われて来たくるみは、合板が存在しなかった頃のスペインの大衆ギターの素材として、盛んに用いられました。20世紀最高のクラシックギタリスト、スペインのアンドレス・セゴビアは修行時代ギターさえなく、グラナダのサクロモンテの丘のジプシーに借りたくるみギターで練習していたそうです。
くるみギターはスペイン独特のギターです。しかも、安い合板の台頭で使われなくなっている現在、スペイン国内でさえ希少価値のあるギターなのです。クラシック&フラメンコギターに使用。
それ故、セファルディはくるみギターの復活と日本への普及にも力を注ぎます。まずは、お手頃な量産くるみギターをお試し下さい。そして、アンドレス・セゴビアのグラナダ市での常宿、ホテル・アルハンブラ・パレスの一室でこの話を直接聞いた、故フアン・ロマン・パディージャの晩年の力作、くるみ手工クラシックギターをご紹介します。
6 アフリカ糸杉(Sp:ciprés africano✿英語?)
フラメンコギター木材の定番である3のスペイン産糸杉(シプレス)ではなく、その木質の似通っているが故に、スペインの大工の世界で通称アフリカ糸杉と呼ばれる木材。
幼少期より大工の父と共に、ありとあらゆる木材に親しんで来たフランシスコ・サンチェス氏は、これでギターが作れないはずがないとの確信の元、2010年、世界初のアフリカ糸杉フラメンコギターの製作に着手。糸杉とはまた違った、乾いた軽快な音質でフラメンコギターに新境地を開きます。
なお、フランシスコ・サンチェス氏は私と同年で、セファルディの良き理解者でもあります。
7 アベバイ(Sp:abebay✿英語?)
マホガニ科のアフリカ産木材。同じくフランシスコ・サンチェス氏が乾いた音色のクラシックギターを目指して製作しています。
清涼感と言う、新しいクラシックギターの概念に挑戦する一振りです。
8 モンゴイ(Sp:mongoy✿英語 ?)
アフリカ産の木材。スペインでは通常家具作りに使われますが、私はフアン・ロマン・パディージャ氏(5)の極上の一本を所有しています。少なくともこの一本に関しては、ハカランダのギターと遜色ありません。
ある日、故ベルンド・マルティン氏が自宅に遊びに来た際、このギターを試奏し、いたく気に入り、この時、表面板に少しキズを残して行ってくれたことは、今となってはいい思い出です。
パディージャ氏によれば、二昔前のスペインでは、このモンゴイでギターが盛んに作られていたそうです。そして、2010年年明けに、名工・故アントニオ・ラジャ・パルドの手工品が完成しました。弦長650mm&645mm(トーレスモデル)。
9 サペリ(Sp:sapelly✿英:sapele)
スペインにおける合板ギターの定番木材。セファルディでは最も安いモデル4A&4AFに使用しています。近い将来、昔は良く作られていたサぺリ単板ギターを復活させる予定です。
◎ その他、二昔前のスペインでは、マホガ二、プラタナスなど、様々な木材のギターが存在しました。
◎ ハカランダ、ローズは横綱の貫禄。糸杉はスペインの乾いた風。清涼感の虎目かえで。軽さに味のあるくるみ・・・。あれがこれに勝ると言うのではなく、それぞれ違った音色なのです。
◎以上、硬くて十分乾いた木材なら、何でも楽器製作は可能だと言えます。そして、二昔前までスペインでは実際これらの木(4~9)でギターが作られて来ました。それが、現在、商業主義の影響で、使用木材が1~3に集中してしまっているのです。セファルディでは、今後も、様々な材質のスペインギターを復活発掘し、日本に紹介して行きます。
10 黒檀(Sp:ébano✿英:ebony)
おそらく、水に沈む唯一の木であろう黒檀は比重が重いだけではなく、極めて硬く、(側面板を)曲げ難く、まず、黒檀のクラシックギターを作ってみようと言う発想自体が通常の製作家には思い浮かびません(歴史上、探せば、誰かいたのでしょうが)。
また、知り合いの日本人アマチュア製作家によれば、2024年現在、指板用の黒檀を注文しても、高価な割に、品質が良くない、つまり、世界的に品不足で高価です。
しかし、私がグラナダ在住時分のデビューの頃から注目していた、フランシスコ・ムニョス氏は、その約10年後、何と、総黒檀製クラシックギター(表:ドイツ松)を2018年国際ギター製作コンクール・アントニオ・マリン・モンテロ杯に出品し、複数の有名ギタリストの手によって奏でられた結果、名工アントニオ・マリン・モンテロの眼前で優勝しました。ムニョス氏は、これを心の師アントニオ・マリン・モンテロ氏への尊敬の念を込め(実際は師弟関係なし)、Homenaje(オメナッヘ:敬愛)と命名。セファルディでは、この総黒檀製Homenaje(オメナッヘ)モデル[品番FAE]をご紹介しています。
因みに、ムニョス氏は、既に、今治の当店を2度訪れています。宿泊は今治球場横の店長の家。歴史的円安が終われば、また、招聘する予定です。知り合った頃は20代だった氏も、既に、40代後半。時の流れとは凄まじいものです。
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以上、表面板、及び、側面板&裏板の木材を見て来ましたが、例えば、ボディーは全く同じでも、表面板が松か杉かで音質は違って来ます。また、ボディーも薄目なら乾いた音、厚目なら重厚な音のギターになるはずですが、故マヌエル・カーノ先生の愛器エンリケ・コントレラスのボディーはクラシックギターの如く分厚く、フラメンコギター独特の乾いた音色で、私がフアン・ロマン・パディージャ氏に作ってもらったローズの極薄ギターはかなり甘い音質です。この様に、出来上がってみればセオリー通りの音色ではない場合も多々あります。
それ故、単に、木材やサイズだけでギターの出来を論ずることは軽率でさえあり得ます。冒頭に述べた様に、料理は食材の良し悪しではなく、出来上がった料理です。同様に、ギターは使用木材の一般論ではなく、最後は、目の前の完成品のギターの音色で判断して下さい。
指板について
手工ギターの指板は、まず、黒檀(こくたん)だと思って宜しいでしょう。
おそらく、世界で一番重いこの木は、何と、水に沈みます。私も、指板が黒檀のギターと、他の安い木材の指板のギターを弾き比べてみましたが、どうやら、指板は比重の重い木の方が音も引き締まる感じがします。つまり、黒檀が最適であると言えます。
黒檀以外では、上でご紹介したインド産ローズウッド(通称ローズ)が、比較的安い普及モデル(量産ギター)の指板に使われます。その他、二昔前は色々な木材が指板に使われたそうです。
因みに、私は指板がローズのラミレスⅡ世のフラメンコギター(1932年,糸杉)を持っています。21世紀とは違い、ラミレスがまだ自分でギターを作っていた頃の作品ですから(現在、高価なギターは影武者作&安価なものはラベル以外100%中国製)、これは滅茶苦茶鳴ります。
なお、若き名工フランシスコ・ムニョス(2018年国際ギター製作コンクール・アントニオ・マリン・モンテロ杯受賞)の受賞ギターは総黒檀製(側面・裏板&ドイツ松)でした。セファルディでは、このHomenaje(オメナッヘ)モデル[品番FAE]をご紹介しています。
ネックについて
単に”杉“と表記されることの多いネック材ですが、オンドゥーラス(ホンジュラス)など中米産の杉のことで、前述の表面板に使われるカナダ産の杉とは全く別の杉です。現在、安価な普及モデルにはアフリカマホガニ(Sp:samanguila)なども使われています。
側面板&裏板の2ローズウッドの項で引用したフレタの名器は、一音一音が濃密で、今まで私が弾いた最高のクラシックギターでしたが、ネックは反っていました!? また、私は数十年前の古いスペイン製量産ギター(くるみ)を持っていますが、相当安い大衆ギターだったと見え、表面板内部には力木さえなく、ネックも指板も訳の分からない安い木が使用してありますが、ネックは反っておらず、指板も21世紀の今に至るまで真っ直ぐです。
従って、高価な木材を使用した名工の名器だから反らない、安物だから反り易いとは一概には言えないのがネックです。何れにせよ、手の小さな日本人には薄目のネックが適しています。
サウンドホールのモザイク
これは正確には材質ではなく装飾ですが、まず、元来、モザイクとは、十戒で有名なモーセの英語の形容詞モザイック(mosaic)です。つまり、モーセの様なと訳せます。そして、実は、モーセは十戒以外にも、事細かい様々な戒めを残しました。そこで、このモザイク(Sp:mosaico,モサイコ)には、モーセの戒めの如く、細かい、厚かましいと言う意味さえあります。
そこで、読者もご自分のギターのサウンドホールの模様を良くご覧下さい。実は、非常に細かい木の粒の寄せ集め、寄せ木細工であることが分かります(が、そうではないものも有り)。
手工ギターのモザイクは手作りですが、普及モデルは出来合いのモザイクの輪ッカをはめるだけ。見分け方は、もし、完璧にビシッと詰まったモザイクであれば、それは機械製の出来合いの輪ッカの印です。逆に、手作りであれば、必ず、不揃い不一致な個所があるものです。
もっとも、サウンドホールの装飾はモザイクでなければならない規則はありません。貝や軽金属を埋め込んだ手の込んだものもあります。製作家によって、独自に工夫する余地はあるでしょう。
今日、日本に輸入されている高級手工ギターや高級手工ギターと称されているスペインギターのサウンドホールのモザイクの中には、出来合いの輪ッカ(しかも日本製!?)をはめ込んだものが相当数に上ることは残念です。手工なら最後まで手工であるべきです。
ファン・ロマン・パディージャ氏のこの手作りのバラのモザイクは見事です。
ハカランダ(中南米ローズ)信仰の功罪
特に、日本のクラシックギター界にはハカランダ至上主義なるものが存在し、他の木材はハカランダの引き立て役に甘んじるのが、その使命の如くさえ感じられます。また、これは楽器店がハカランダのギターを高く売るために築き上げて来た、必ずしも、楽器としての現実と価格が常に一致するとは限らない、商業的イメージだとも言えます(が、確かに、ハカランダのギターの仕入れ値が一番高いので、市価も一番高くなります)。
実際、現在、ワシントン条約で伐採禁止のハカランダ材が原価も一番高く、音量音質共に郡を抜いているのですが、それはあくまで素材としての客観的な評価であり、完成したギターにおいては、必ずしもこの原則通りとは限りません。冒頭で述べた食材と料理の関係と同じです。
或いは、それはまた、”ボクシングはやっぱりド迫力のヘビー級が一番“と盲目的に言い張る様なものかも知れません。
確かに、世界ヘビー級チャンピオンの方が世界ライト級チャンピオンより、パンチ力、ファイトマネー、視聴率は上ですが、ファイトマネー、視聴率、そして、観客動員力、ボクサーとしての評価も、世界ライト級チャンピオンの方が世界ヘビー級20位に遥かに勝ります。確かに、単にパンチ力測定器の数値だけなら、前者は後者に遥かに劣りますが、誰がどう見ても、確かに、前者の方が視聴率もゼニも取れる、遥かに優れたボクサーです。
同様に、破壊力なら大砲ですが、機動性ならマシンガンです。スタミナなら肉うどんですが、ざるそばは清涼感で勝負します。それぞれにそれぞれの許容量に応じた良さがあるのです。それはボクシングの様々な階級にはそれぞれの醍醐味があり、誰のパンチが一番強いかではなく、ボクサーとしての総合評価が問われる様に、上に紹介した様々な木材のギターもまた、どの木材のギターが一番良いギターかと言う問題ではなく、それぞれの良さがあり、好みの問題なのです。ただ、単純に素材の良さなら、ハカランダが最高だと言う点に誰も異論はないでしょう。
もっとも、私の経験では、名工のハカランダのギターにも、パンチ力はあってもパンチに切れと華がない、客の呼べない世界ヘビー級20位みたいなハズレはあります。単に、パンチ力測定器の数値か、ボクサーとしての総合評価か。同様に、ハカランダのギターに使ってあるハカランダと言う素材の価値か、そのハカランダのギターの音色か。聞き流すと同じ様に響くかも知れませんが、両者は全く別次元の問題であることに気付いて下さい。これは他の木材とそのギターについても同様です。
ハカランダ信仰はいつもご利益があるとは限りません。他の木材のギターでも、ハカランダ製ギターに勝るギターはたくさんあります。ハカランダ以外のギターにも関心を持ってみて下さい。そうすればハカランダの凄さも、外れた時の虚しさも、体験として身に沁みるはずです。
ハカランダ(中南米ローズ)以外の勧め
女性のハンドバッグとギターは多い方が楽しいものです。弾き慣れた曲も、音色の違ったギターで弾けば、新境地が見出せ、演奏にも幅が出て来ます。今日はベンツで高速道路をぶっ飛ばし、明日は脇道をファミリーワゴンで走るのもまた一興です。
また、複数のギターを弾くことによって、段々と違いが分かる耳が養われます。
セファルディでは、ハカランダ(中南米ローズ)以外にも、様々な独特の木材のスペインギターを順次紹介して行きます。初心者の方に、そして、気軽に弾ける2台目、3台目として、是非お勧めします。
以上は、単に宣伝文句ではなく、総て私の個人的な経験に基づいてのことです。それが証拠に、以下、私が今まで収集した様々な木材のスペインギターを列挙してみます。
ハカランダ、ローズ、シプレス(糸杉)、赤糸杉、くるみ、カラコリージョ、サビーナ、かえで(無地)、虎目かえで、マホガニ、にせマホガニ、ゼブラ材、プラタナス、モンゴイ、樫の木、黒檀など40本以上。次はサンゴ材とチェリーの木の予定です。
師匠、故マヌエル・カーノ先生のギター収集病が移ったものです。先生は本当に病気でした。
皆さんもご一緒にどうぞ。まずはセファルディの看板“スペインの白いギター(クラシック&フラメンコ)”をお試し下さい。
ギターの塗装
ギターの材質のページに塗装の説明は一見場違いであり、また、今までの様々な木材の説明に比べれば、塗装など最後の見映えに過ぎないではないかと、多くの人は重要視しないことでしょう。
しかし!! 現実は、”せっかくの秀作ギターも、塗装次第で音はかなり左右される“こともまた、多くの人の予想に反して、圧倒的な事実です。重要視して下さい。詳しくは”塗装の違い:セラック塗りかピストル吹き付けか“をご覧下さい。
ギターのサイズ・大きさ
誰でも自分の手に合ったギターが理想ですが、逆説的発想で、弾き難いサイズのギターの観点より、この問題を考えてみましょう。
私自身、スペイン初年度の1979年、最初のスペイン製手工ギターを買いました。非常に良く鳴っていたので、殆ど衝動買いでしたが、すぐに後悔する羽目になりました。ネックの幅が広過ぎて、弾き難く、手がすぐに疲れてしまうのです。もう少しネックの幅の細いのにすれば良かったと、つくづく思ったものでしたが、その同じギターが、現在は全く手に馴染んでいます。実際、ネックの幅を測ってみれば、全く普通サイズ(最上部 52mm&12フレット部62mm)で、当初、私自身が未熟な故に、ネックの幅が広過ぎて、私には大きなギターだと勝手に確信しただけだったのです。
また、ある時、明らかにネックの薄いギターを手にする機会がありました。余りの弾き易さに驚いたのですが、更に驚いたのは、ネックの幅を測ってみると、普通より4mmも幅広く(最上部56←52mm&12フレット部66←62mm)、弦長も660mmと長目でした。
それから数年後、ある日本人が、買ったばかりのフラメンコギターを持って、私が主催するグラナダ市の日本語情報センターにやって来ました。バカでかい音量と余りの左手の押え易さに驚きましたが、商売柄、すぐに指板の幅を測ってみると、最上部50mm&12フレット部60mm!! 普通サイズより2mmも狭い!! 押え易いはずだと思いましたが、次いで計った弦長は、何と665mmの特大サイズ!! 一瞬考え込みましたが、結局、故意に弦長を長くして、音量を追求し、弾き難くなったその分を、指板の幅を2mm狭め、ネックを薄くすることでカバーした、良く考えられたギターでした。指板とネックがすっきりしていれば、弦長665mmでも気にならないものだと思い知らされました。
従って、初級者は元より、多くのギター奏者は、左手が押え難い、或は、指が届かないと、ネックの幅が広過ぎる、弦長が長過ぎると直感的に思い込んでしまうが、実際はネックの太さのせいであると言えるでしょう。そこで、私なりの結論ですが・・・。
左手が押え難いギターの一番の原因はギターのサイズではなく、指の長さでもなく、弾き手の未熟さの故にそう感じるだけである。それが証拠に、YouTube上で、有望な小中学生達は大人用ギターを難なく弾きこなしていますし、手の小さな女性でもプロはいます。
残りがサイズの問題だとすれば、一番の原因はネックが太過ぎることで、以下、弦高が高い(と弦張力が強くなる)、指板の幅が広い、弦長が長いなど、弾き難いサイズのギターの理由が挙げられます。
それでは、指板の幅を狭くすればいいと言うのはイージー過ぎます。余りに指板の幅が狭いと、弦を抑える際、左手指の腹が隣の弦に当り易く、従って、雑音が出易く(、これを防ぐために左指を相当垂直に押さえなければならず)、極めて不自由だからです。やはり、一定の指板の幅は必要です。
つまり、上達すれば、少々のギターの大小は関係なくなると言えますが、やはり、初心者は悪い癖が付かない様に、自分の手に合った弾き易いサイズを選ぶべきでしょう。
セファルディでは、日本人の手のサイズを考えた、特に、ネックが薄めの弾き易いスペインギターを用意しています。左手を一杯広げた時の”人差し指”と”小指”の先端の距離(14~16cm,etc)をお知らせ下さい(次項参照)。アドバイス致します。
ギターのサイズ選択の目安
弦長 650~655~660mm 大人用普通サイズ
左手を一杯広げて人差し指と小指の先端の距離が16cm以上の人
弦長 630~645mm 女性&手の小さい人&子供用サイズ
左手を一杯広げて人差し指と小指の先端の距離が16cm以下の人
指板の幅 0フレット部52mm &12フレット部62mmが標準サイズ
ネックの太さ やや薄めの方が弾き易い
弦高 力みながら弦を押さえる悪い癖が付くより、特に、初心者の内は、少々雑音が出ても、弦高はやや低めの方が望ましい。ライトテンション弦(GR35&GR55)を張るなど、工夫してみましょう。
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初心者が指板の幅の狭いギターを弾き易いと感じるのは当然です。また、アクスティックギター出身者はクラシック&フラメンコギターを初めて手にすると、指板が広過ぎると感じるでしょう。
しかし、クラシック&フラメンコギターはピックを使うフォークギターと違って、右手指先が直接弦と弦の間に入る必要があり、左手も、余り弦の間が狭いと、指の腹が隣の弦に当って雑音が出ます。従って、一定の指板の幅は必要です。一概に、サイズの小さなギターが弾き易いとは言えません。
左手を一杯広げた時の”人差し指”と”小指”の先端の距離(14~16cm,etc)をお知らせ下さい。アドバイス致します。
③ギター料金の相違と是非
多くのギター愛好家は、見栄え、メ-カ-の有名無名、予算に似合った値札、そして、商売文句ではないかと、半ば疑いながら聞く店員さんのアドバイスを頼りに、戸惑いながらギターを選んでいるのが実情ではないでしょうか? 巷の商業主義に翻弄されないためにも、ギターについての最低限の知識と客観的な価値判断の基準を持つことは大切です。主観は客観あってこその主観のはずです。
セファルディは、単に、スペインギターの販売だけではなく、振興会として、ギターの一般的基礎知識を世に知らしめることも使命だと考えます。ギターは最後は耳で利くべきですが、そのためにも、以下4項目を熟読され、ギターとその作り、それに応じた料金、そして、肝心の音色がその料金に応じたものかどうかを吟味する目と耳もまた、養って下さい。
ギターの上手い人はギターについての知識もあるものです。一見、ギター演奏とは無関係に思える、普段は使わないこの引き出しを備えることもまた、演奏の引き出しの奥行きと幅を間接的に、しかし、確実に広げてくれます。
ギター一般、そして、特に、スペインギターの観点から、徹底的に検証してみましょう。
単板か合板か
まず、世界中のギターは合板ギターと単板ギターに大別出来ることを念頭に置いて下さい。
例えば、自然のローズ材(インディアンローズウッド,通称ローズ)をそのまま使用したのがローズ単板ギター。これに対して、安い中間材の両面に機械で薄くスライスしたローズをシールの如く張り付けたのがローズ合板で、外見は完璧なローズですが、実際ローズは10%程度の見せかけだけのローズ合板ギター。極端な安物に至っては、表面板まで合板です。
両者は音量音質、そして、当然、料金も違いますが、外見は何の差もありません。この合板ギターか単板ギターかの区別が出来れば、表示金額が妥当かどうか、目星も付くことになります。
最も簡単な見分け方は、ギター内部のラベルの下の裏板中央部に縦に添え木があれば単板ギター。添え木がなく、ラベルがベタ~と貼ってあれば、無条件に合板ギターです。サウンドホール越しにラベルの下を覗いて見て下さい。
単板ギターの場合、単板2枚を接着した裏板中央の接合部分内側にこの添え木を貼り、ギター内側から補強します。従って、ラベルの下にこの添え木があれば(添え木の上からラベルが貼ってあれば)、単板ギターだと言って宜しい訳です。
それに引き換え、合板ギターは頭から1枚合板の裏板ですので、頭から存在しない接合部分の補強の必要も添え木もありません。但し、1枚合板の裏板も、通常、外側はあたかも2枚の板の如く装飾してありますし、また、“内側中央にわざわざ必要ない添え木を接着して、単板ギターに見せかける合板ギター”も今日出て来ていますので要注意。
何れにせよ、最終的な見分け方は、単板であれば、単一の同じ木ですから、表と裏の木目が同じで、合板は裏表別の木ですので、良く見ると木目が違います。
合板ギターでも、今日、音量は追求出来ると言えますが、合板故に、どうしても音質で単板ギターに劣ります。やる気のある方は頭から単板ギターと決める方が賢明です。
セファルディでは、単板のスペインの白いギター(クラシック:146-s&フラメンコ:ARF/それぞれ弦長650&630mm)をご紹介しています。但し、音質の違いも分からないし、取り敢えず、試しに1本と言う方は、合板ギターでも宜しいでしょう。
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料金比較は当然[単板ギター>合板ギター]です。スペインでもそうですが、ギターショップの店員さんは、わざわざこの違いについては言ってくれません。そこで、”この客は少しはギターを知っているから侮れないな“と思わせるために、逆に、”このギターは合板ですか、単板ですか?“と質問してみるのも、侮られないための一つの知的な駆け引きです。そして、この様な基本的な質問にさえ返答に困る様なら、そう言う店のギターに対する姿勢は頭から疑った方が賢明です。
さて、この[単板ギター>合板ギター]の料金比較は、手工ギターに合板製などない以上、あくまで普及モデル(量産ギター)における両者の比較になります。ところが、舶来のブランド品に弱い日本市場では、平然と価格の逆転現象[単板ギター<合板ギター][手工ギター<普及モデル]が起こります。
つまり、たとえ合板ギターでも、スペインの有名ブランドであれば、日本では単板ギター並みの値段が付いていますし、ましてや、普及モデル単板ギターでも、スペインの有名ブランドなら、今日、平然と手工ギター以上の料金(何十万~百万円以上)が付いていても不思議ではない現実です。
ここで、次に述べる普及モデルと手工ギターの違いについて、僅かばかりの知識さえあれば、この料金的不条理の大まかな判断は出来ます。
普及モデルか手工ギターか
次に、世界中のギターは普及モデルと手工ギターに大別出来ることも念頭に置きましょう。
普及モデル(量産ギター)と言うと、機械に材木を入れたらギターが出て来る様な響きですが、本来、一人の製作家がのこぎりで切る部品を、機械で大量に準備すると言う意味の量産で、決して1日でギターが出来る訳ではありません。職人気質の工房では生産個数に限度があり、原価も高く、大量仕入れと大量生産で徹底的にコストを削減する量産工場なら、より安く大量に生産出来るのはどの製造業もギターも同じ。しかも、今日、名工達も機械の使える個所は機械に頼っているのが現状です。
こうして、各部分の木材の準備を終えると、そこから先は総て手で組立てて行きます。ただ、それを1人の製作家が丹精に仕上げるか、20~30人の名もない量産工場の職人達が分担作業でやるかの違いです。それなら、結局、普及モデルも手工ギターも、ブランドかそうでないかの違いだけで、実質的に大差はないことになってしまいそうですが、果たしてそうなのでしょうか?
この様に、手作りでないギターなどこの世に1本も存在しない以上、広い意味で総てのギターは手工ギターであると言えます。ですから、例えば、スペインのギター工房では、客が初心者だと見れば、たとえ5万円の普及モデルでも、”これはhand madeだ”と言われます。これは”広い意味で正しい答え”ですが、ギター知識に乏しい消費者に、工場から安く仕入れた普及モデルに自らのラベルを貼って、手工ギターと称して売るための方便です(実話体験談)。
日本でも今日、日本製手工ギターより遥かに高額な、ブランド化されたスペイン製普及モデルが多く見受けられます。これが現実です。ブランド名に幻惑されないためにも、普及モデル&手工ギターを見分ける基本的な知識を幾つかの項目に分けて見て行きましょう。なお、以上の意味で…、
当サイトでは、量産工場のギターは普及モデル(量産ギター)、
ギター工房で製作家によって作られるギターのみを手工ギターと呼ぶことにします。
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寿司とギター
寿司屋の寿司がスーパーの寿司パックの5倍すると文句を言う人はいないでしょう。何年も修行を積んだ板前さんが、朝早く、自ら魚市場に赴いて見定めたネタで握った寿司に対して、片や、安さが売りの言わば量産寿司。しかも、作者はパートのおばさん。見た目と量は同じでも、そこに至る過程、労力、経験、ネタ、味、値段、格の違いは歴然です。量産工場の普及モデルと個人製作家作正真正銘手工ギターの歴然とした違いも同じです。
ところが、今日、スペイン国内でさえ、かなりのスペイン製普及モデルはブランド化されて、手工ギター並み、有名ブランドなら、それ以上の料金が付いているのが現状です。もちろん、個人製作家作正真正銘の手工ギターはこの類ではありませんが、資本主義社会で成功したければ、大量仕入れと大量生産で徹底的にコストを削減して、ブランド化して高く売るのは当然の戦略だと言わんばかりです。これが日本に輸入される多くのスペイン製普及モデルの厳然たる現実となって、既に四半世紀。
単に、ビジネスとして捕らえれば、手間隙コストのかかる生産台数の少ない手工ギターを苦労して売るより、原価は10円そこそこでも、しっかり宣伝して、ブランド化して、200円で大量に売って、儲けることだけが目的の炭酸飲料の如く、ブランド化されたスペイン製普及モデルの方が遥かに金銭的効率が良いからです。また、消費者側にも、手工ギターと普及モデルを区別する目がないため、多くの場合、ブランド化された普及モデルを手工ギター並みの料金で買わされているのが現状です。
それ故、幻惑されない識別力を養って頂くための当サイトでもあります。
原材料費などの違い
建材のヒノキも、節の有無によって料金が全然違う様に、極上の木材は、当然、製作家の工房で手工ギターに、並みは量産工場に買い取られて普及モデルになります。原価が違って来るのも当然です。
木材乾燥過程の違い
製作家の工房では、それを更に最低10年寝かせてから、初めてギター製作に使います。木には人間の毛穴と同じく、気孔なるものがあり、年数の経過と共に気孔内の樹液が乾燥して、音の通り、音質が良くなります。つまり、寝かせば寝かす程、味とコクを増すワインの様なもので、こうなると経過年数にお金を払うのが木製楽器業界だとも言えます。量産工場では機械で乾燥させます。
この使用木材の自然乾燥と機械乾燥の差が、手工ギターと普及モデルの音質に決定的な違いを与えることは、多くの専門家の一致するところです。楽器としての作りや音量ではなく、音質です。今日、確かに、手工ギターと見分けが付かないほど音量もあり、木工として優れた普及モデルもありますが、養殖魚では、いくら頑張っても、自然に獲れた魚ほど美味い刺身にはならない様に、木材も無理やり機械で水分を抜けば、自然本来の良さが失われ、それが音質、つまり、音の味とコクに反映します。自然が一番、手工ギターが一番なのです。
生産台数の決定的な違い
ギター工場の普及モデルとギター工房の手工ギターの生産量は、正に、名工作の陶器と中国製安物コップ位の差があります。製作家がこつこつ作る手工ギターはせいぜい年間14、5本。同じ工房で働く息子や弟子の協力があっても、せいぜい20本程。これが手工ギターの限度です。それでは、世界中に相当数出回っている有名製作家ラベルのギターは一体誰が作っているのでしょう? もちろん、本人作ではありません。量産工場に委託して作らせた普及モデル(或いは、次の次の次に述べる影武者ギター)に本人のラベルを貼ってあるだけです。大枚叩く価値はありません。
但し、然るべき製作本数の有名製作家であれば、当然それは手工ギターとして信用に値します。
ギターとハンドバック
スペインにロエベと言うハンドバックのブランドがあります。日本でもかなりの高級品として売られていますが、スペイン・アンダルシア地方カディス県の山奥の、皮工芸で有名なある村の工場に大半を作らせています。そして、工場から出荷する際、全く同じハンドバックが、ロエベの印が圧してあるだけで何倍もします。資本主義社会の仕組みは皆こんなものだと言われれば、ギター業界も仕方がないのかも知れませんが、有名製作家の名前のラベルのギターには、正真正銘本人作の僅少の手工ギターとあたかも本人作の手工ギターに見える、ラベルだけ本物の量産ギターがあること位は、消費者側も少なくとも知っておくべきす。仮に、仰々しく本人のサインが入っていてもです。
そして、読者が興味を覚えているあのギター、欲しいと思っているそのギターは一体どちらなのか? それなら、その料金は妥当なのか、法外なのか? ある程度の見る目を持っていなければ、ラベルにお金を払うことにもなりかねません。
中国製スペインギターも!?
食は中国、ギターはスペイン!? ところが、今日、何と中国製ギターをそのまま輸入して、そのまま自らのラベルを貼ってスペインギターとして販売するスペインのギターメーカーと、それを承知でスペイン製として販売する輸入業者や楽器店が世界中で後を絶ちません。日本でもです。以下、”スペイン製か中国製か“をご覧下さい。
影武者手工ギター!?
各部分を弟子に用意させ、それを師匠本人が組み立てるなら、まだ話は分かりますし、多くの歴史的名工達も、おそらく、そうして来たことでしょう。また、そんな事を一々購入者に言う製作家もいないでしょうが、仮に、そう言われても、この程度なら納得出来ます。しかし、問題は、本人作の僅少の手工ギター(上述)どころか、100%他人の作品で、本物はラベルとサインだけの有名製作家ラベルのスペイン製手工ギターもあると言う現実です。
確かに、工場製の普及モデルに自らのラベルを貼って、大衆ギターとして販売することは、昔から有名製作家の工房でもされて来ました。例えば、私は相当古いホセ・ラミレスラベルのくるみギターを持っていますが、その雑な造りやヘッドの形からして、当時の普及モデルであることは間違いありません。この様に、比較的安価なギターなら話は分かりますが、相当高いギターまで全く他人任せ!?
論より証拠。私の知り合いの若い無名のスペイン人製作家マリオ・フェルナンデスが、以前マドリードの、日本でも有名なホセ・ラミレ○ギター工房に履歴書を送ったところ、忘れた頃に面接に呼ばれたそうです。仕事はもちろんギター製作ですが、プライベートで作るギターにさえ、自分のラベルは一切貼れず、常にホセ・ラミレ○の名前でギターを作る契約書にサインを迫られたそうです。幸いにも本人は断ったそうですが、要するに、ホセ・ラミレ○工房に就職するからには、マリオ・フェルナンデス君の作ったギターには、総てホセ・ラミレ○のラベルを貼ってもらいますと言うことなのです。
量産工場に就職して、流れ作業的に安いギターを作るのではなく、ホセ・ラミレ○の作品として売る高級手工ギターを製作する雇用契約と言う意味です(しかも大半はピストル吹き付け塗装)。マリオ・フェルナンデスが腕のいい職人で、良いギターを作るのなら別にいいじゃないですかと、気にしない読者もどうかしています。購入者はホセ・ラミレ○のラベルとサインを見て、ホセ・ラミレ○作の高級手工ギターと思い込んで、大枚叩くのではありませんか?
この様に、大衆ギターならともかく、今日、スペイン製高級手工ギターまでこう言う仕組みになっていることが多々あります。そんな事は日本の輸入業者や小売店は百も承知です。売れてビジネスになればそれでいいと思っているのでしょう。もちろん、今日、日本に輸入されているスペイン人有名製作家の多くの手工ギターは、その名誉のためにも、本人作だと断言しますが、有名製作家のラベルとサインだけ本物のギターも少なくはないのが現状です。その上、これらは日本ではブランドが故に、高級手工ギターとして販売され、仰々しく何々モデルと称されているものに多い傾向です。しかも、安いと却って信用しない、ブランドに弱い日本人の悪い癖を逆手に取って、定価は50~150万円以上!? 日本の売値から見れば、まさかと思う様な原価で仕入れ、そこに本物のラベルを貼って、あっと言う間にブランドギターになります。
事実、私は日本語情報センター館長時代、日本で160万円払ったホセ・ラミレ○のクラシックギターを持って旅行していた日本人に会いました。金額からして、当然、ハカランダだと思いきや、ローズでした。しかも、セラック手塗りではなくピストル塗装で、肝心の鳴りは悪くはありませんでしたが、低音が明らかにパワー不足。とても160万円の鳴りではありませんでした。因みに、本人はハカランダもローズも何も知らない初身者でした。
これは普及モデルでも、前述のブランド化された普及モデルでもなく、確かに手工ギターですが、ラベルとサインの名前と製作家が違う以上、影武者手工ギターと呼ぶのが言い当て妙でしょう。ラベルは有名な~~工房でも、せめて~~作と、その無名製作者のサインを入れるのが良識のはずです。
製作家の知名度
名工作手工ギターなら当然高額で、仮に、見劣りしないギターを作っても、無名製作家なら原価も安くなるのは当然です。
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料金比較は当然[手工ギター>普及モデル]です。以上を踏まえて、更に詳しく言えば、知名度手間隙経験技術などを考慮して[名工作手工ギター>無名製作家の手工ギター>影武者作有名ブランド手工ギター>手工ギターと称されるブランド化された普及モデル>普及モデル]と、原価の順にこうなるべきですが、商業主義のおかげで価格は[名工作手工ギター>影武者作有名ブランド手工ギター>手工ギターと称されるブランド化された普及モデル>無名製作家の手工ギター>普及モデル]と、真に不条理な逆転現象も起こり得ます。そして、正に、これがスペインギター価格の現状であり、これがそのまま日本市場にも世界市場にも反映されています。
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正に”誰が何を幾らで売ろうが各自の自由。買いたい奴が買えばいいし、気に入らなきゃ買わなきゃいいだけの話だろ!!“と言わんばかりです。
確かに、女性の虚栄心を満たすハンドバックなら、ブランドの刻印に盲判を捺くのも自由かも知れませんが、老舗の寿司屋がスーパーのパートのおばさんの作った寿司パックを仕入れて、あたかもその店の職人が握った如く、高い料金を付けて店頭に並べているとすれば、それは少なくとも私にとっては問題です。そして、それがスペインギターならもっと問題です。
日本人ギター愛好家に、この不条理に対する識別力を養っていただくのも当サイトの目的です。
ギターの価値観がその奏でる音色ではなく、金に換えて何ぼの単なるギター産業になってしまっているが故に、これは究極のところギター、及び、スペインギターを取り巻く人々の商魂豊かな歌心の欠如が根本問題です。ギターがブランドのハンドバックと同じ次元に陥るとは、悲しい失望の旋律に他なりません。
何れにせよ、スペインギターに限らず、如何なる国のどんな普及モデルでも、これを手工ギター以上の価格で販売することは、スーパーの寿司パックに寿司職人の握った寿司より高い値札を付けるが如く、あってはならないことであり、不条理です。
以上の基礎知識を踏まえた上で、今度は、日本におけるスペイン製普及モデルと手工ギターの具体的な判別方法を幾つか見てみましょう。
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ラベルによる判別
明らかに量産工場と分かるラベルが貼ってあれば、それはそう言う名前のギター製作所の普及モデルだと一目瞭然ですし、良心的ですが、問題は有名製作家ラベルのギターの場合です。疑っては失礼な正真正銘本人作の手工ギターもたくさんありますが、有名製作家ラベルのスペインギターでも、実際は、スペイン国内や中国の量産工場に丸投げギターもまた、今日、数多く存在しています。これらの中にはサイン入りまでありますが、本物はサインだけです。
この場合、店員さんに”このラベルの名前の本人の作品ですか?“と尋ねてみましょう。良心的なギター店なら良心的な答えをしてくれるはずです。
小売価格による判別
今日、スペイン人個人製作家作正真正銘手工ギターの日本での定価は、如何に無名の制作家でも最低90万円と見受けます。つまり、逆に考えれば、今日、日本で定価90万円以下の輸入スペインギターであれば、どんなに有名製作家ラベルのギターだろうが、どんなに何とかモデルと謳われていようが、ブランド化された普及モデル(か、せいぜい影武者手工ギター)の可能性大です。普及モデルも、確かに、合板の安物から単板の高いモデルまでありますが、普及モデルは普及モデルです。
とは言え、定価90万円以上でも、総てが手工ギターではないことは既に述べました。要約すれば、スペイン人個人製作家作手工ギターは安くは成り得ないが、有名メーカーのスペイン製普及モデルは無名個人製作家の手工ギター以上に高く成り得ると言うことです。
特に、日本人は何とかモデルと称して高ければ、何でも飛びつくブランド志向と、物が良くとも、安ければ却って信用しない悪い癖があります。名より実を取ることを心掛けて下さい。
塗装による判別
スペインでは、一昔前まで、手工ギターはセラック手塗り、普及モデルはポリウレタン吹き付けピストル塗装と相場は決まっていたものでしたが、業界が商業主義とブランド志向に走り始めてからは、平然とピストル塗装(ポリウレタン&ラカ)された手工ギターさえ現われて来ました。
従って、塗装がセラックなら、それは無条件に手工ギターと断定出来ます(稀に量産工場の最高級品&セファルディ‟GLシリーズ”を除く)。また、総ての普及モデルはピストル塗装(ポリウレタン&ラカ)ですが、今日、商業主義の故に、安価なピストル塗装のスペイン製手工ギター(&と称され店頭に並ぶ普及モデル)もまた多く存在します。
90万円以上のスペイン製高級手工ギターが、5万円の量産合板ギターと同じピストル塗装とは、品質向上に努める企業の姿勢ではなく、単に、手間隙人件費を省いて、出来るだけ高くブランド商品として売りたいがための、ケチな戦略に過ぎません。これには心ある職人気質のスペイン人製作家達も呆気に取られています。
手打ちラーメン屋がインスタントラーメンの粉末スープを使うでしょうか? “うちは名の知れた老舗の手打ちラーメン屋。放っといてもやって来るたくさんの客を捌くには、前の晩からグツグツ出汁を煮込んでる暇なんかない。どうせ分かりゃしないんだから、粉末スープにしときゃいい。“と読者が店主ならそうするでしょうか? スープはともかく、ギター消費者側が、余りにも、塗装に限らず、ギターについての知識がないので”どうせ分かりゃしない“と甘く見られているのです。
おそらく、読者の大半はギター塗装の知識など皆無でしょうから、キョトンとする気持ちも分かりますが、次の[塗装の違い]を克目してお読みになれば、如何に塗装がギターの音質を左右するかがお分かり頂けます。
質問による判別
とは言え、ここで私が如何に文章で説明し様が、それはある意味、自動車教習所の教室内の講義の様なもので、実際にハンドルを握って道路に出なければ、経験として分かるものではありません。
そこで、以上の知識を踏まえた上で、一番手っ取り早い手工ギター&普及モデルの判別方法は、店員さんに『これは手工ギターですか、普及モデルですか?』とズバリ尋ねることです。良心的なギター店なら、良心的に答えてくれるでしょう。そして、その価格と予算と音色のバランスが取れていると判断した時点で、初めて購入を考えても遅くはありません。もちろん、手工ギターとは年産14~15本のスペイン人個人製作家作正真正銘手工ギターを意味し、普及モデルとはどんなに有名製作家やメーカーのラベルが貼ってあろうが、量産工場作のギターは総て普及モデルであるとの定義に則った上で尋ねることは言うまでもありません。
ですから、”このラベルの製作家は年産何本位ですか?“と聞いても、十分な単刀直入な駆け引きになっています。良心的なギター店なら良心的に答えてくれるでしょう。
塗装の違い:セラック&ピストル
次に、世界中のギターの塗装はセラックニス手塗りとピストル吹き付け塗装に大別出来ることを念頭に置きましょう。
1979年、私がスペイン・グラナダで購入した最初のスペインギター(クラシック)の塗装がセラックニス手塗りだと知ったのは、それから18年後でした。今、思い返してみても、音と弾き易さを確かめただけで、その時は、まさか塗装の質までは考えてもみませんでした。スペインギターを扱い始めて、やっとその存在と意味を知った訳です。ですから、殆どの愛好家は、ギター選択の際、塗装と言えば見た目の光沢かつや消しか、せいぜい外見だけの認識だと言うことは身をもって分かります。
しかし!! 塗装は見映えだけで、音には一切関係ないと言う一般的固定概念とは全く逆に、塗装こそギターの音色を活かし、また、殺しもする決定的因子であるが故に、消費者側もギターの塗装について活眼を開かれるべきこともまた、念頭に置きましょう。
ワイシャツとセーターで喩えてみます。本来ギターに限らず、音響の点から言えば、楽器は塗装しないのが一番だと言えますが、それでは格好が付かないので、何らかの塗装を施す訳です。人間は裸のままが一番身軽だが、見た目が悪いのでワイシャツを着るが如くです。しかし、セーターならどうでしょう? セラックニス手塗りとピストル吹き付け塗装(ガン塗装)の差は、正にステレオのスピーカーにワイシャツとセーターを被せると比喩出来ます。
セラックニス(以下セラック)は極めて音響の良いニスですが、組み立てが終わったばかりのギターにいきなり塗ることは出来ません。まず、木材表面をキメ細かくサンドペーパー掛けし、人間の肌の毛穴とも言うべき木材の気孔をメ止めしてから、やっとセラックを幾重にもタンポ塗りして行きます。総て手作業です。木材にも拠りますが、20日から1ヶ月はかかります。
確かに、こんな面倒な手作業を量産工場に求めるのは無理ですし、普及モデルにこんな高価な塗装をする意味もありません(自社の最高級モデルはセラック塗装を外注する量産工場も稀にあり)。そこで、普及モデルはポリウレタンを吹き付けるピストル吹き付け塗装(以下ピストル)の一日仕事。メ止めも何もありません。塗装重量80g位。
また、ピストルには違いありませんが、高いモデルには塗装重量40g位のラカ塗装(Sp:laca)を施す良心的な工場もあります。ポリウレタン同様、ピストル仕上げですが、ラカ塗装は1週間はかかります。自らの手工ギターをラカ塗装する製作家もいますので、このラカ塗装は評価出来ると言えますが、手作業のセラックに時間を取られるより、ピストルでラカ塗装して早く終わって、早く次のギターに取りかかる方が経済的に効率的だからです。或いは、塗装は頭からセラック専門職人(日本には存在しない職種)に任せるスペイン人製作家も多いです。
ところで、私は以前、フランシスコ・ムニョス氏とセラック塗装の重さを量ってみました。つまり、グラム単位の精巧な量りで、ギターをセラックで塗る前と塗り上がった後の重さを計量してみました。何とマイナス2g!? 何かの間違いだろうとしか思われず、もう2本のギターで実験してみました。結果は2本共差し引きゼロ。つまり、セラックを塗っても、塗る前と全く同じ重さでした。これには私は勿論、製作家の氏も意外だった様です。セラックには木材の湿気を吸収する作用があるのでしょうか? これについては研究の余地有りで、結論付けることは出来ませんが、セラック塗装は正にワイシャツ、しかも、ごく薄手のワイシャツだと言えます。音の出、伸び、分離、遠達力など、総てにおいてピストル塗装に遥かに優ることは疑い様のない事実です。
以上を踏まえて、50万円以上のギターは国産輸入ギターを問わず、セラック塗装であるべきです。それが製作家や楽器商の良心であり、それだけの金額を支払う消費者への礼儀であるはずです。
その見分け方です。様々なカタログやサイトで、ギターの弦長や各部分の使用木材などの説明の欄に“塗装:セラック“との表示がなければ、それは普及モデルはもちろん、高級手工ギターさえ、仕上げはポリウレタン(或はラカ)のピストル吹き付け塗装だと暗に言っているのと同じです。そして、もし、それらが50万円以上のギターなら、いくら有名製作家だろうが、ブランドの何とかモデルだろうが、最後の詰めを誤ったギターだと言わざるを得ません。中には、このギターはピストル塗装でも良く鳴っているじゃないかと反論もあるでしょう。それなら、セラック塗装すればもっと鳴ります。
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音量音質の比較は当然[セラック>ピストル]です。更に詳しく言えば[セラック>ピストル(ラカ)>ピストル(ポリウレタン)]となります。今日、ピストル塗装でも音量の豊かなギターはありますが、この見た目の[0g>40g>80g]の僅かな違いは、正に、ワイシャツとセーターを着て運動する際の著しい違いの如く、特に、音質に圧倒的な違いを生じます。音響の観点から言えば、ギタ-の塗装は見た目の問題ではなく、音を解き放ち、ブレーキをかけもする、その重さの問題なのです。塗装は軽いに越したことはありません。手間隙経費がかかることは別にして、塗装はセラックが一番です。
セファルディからお送りする手工ギターは総てセラック塗装。普及モデルは同じピストル塗装でも、より層の薄いラカ塗装(4A&4AF&15はポリウレタン)です。再度、この『セラック>ピストル(ラカ)>ピストル(ポリウレタン)』の違いによる、音量音質比較に克目して頂き、ギター料金一覧表の塗装欄の”セラック、ピストル(ラカ薄塗)、ピストル”とはこう言う意味だとご理解下さい。
また、上で目安としてセラックは50万円のギターからと書きましたが、セファルディでは、何とセラック塗装スペインギターが280,000円(GLシリーズ)より。ギター全商品一覧で、”GL“で始まる品番で、この定価の計7本(クラシック3+フラメンコ4)を確認して頂けます。ギターを木材の音響性を最大限に引き出すため、ギターショップではなく、スペインギター振興会として、敢えて、この手間隙コストのかかるセラック手塗り塗装に挑戦します。
因みに、私の知り合いの日本人製作家にセラック塗装を依頼すると30万円。ギター店の私には20%引きの24万円。セラック塗装したギターがではなく、セラック塗装だけの料金です。
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次に、メンテナンスの面から見たピストルとセラックの相違点です。セラックも製作家によって得手不得手はあります。セラックは手塗り故に、僅かながら濃淡やタンポ塗りの跡が残りますが、ピストルなら塗装は一応に仕上がり、見栄えは遥かに宜しいです。しかし、ピストルはその分、塗装の層が厚く、音にブレーキが掛かります。
ましてや、オレンジ色のギターなど論外です。ピストル塗装の中でも最も安価なオレンジ色のポリウレタン塗装は、作りの荒い安価な普及モデルの塗装方法です。早い話が、量産工場の雑な作り(接合部分の隙間etc)やキズを隠すための濃い目のオレンジ色に他なりません。しかも、手にずっしり来る重さです。安物ならともかく、日本でオレンジ色の輸入スペインギターに平然と何十万円~100万円以上の値札が付いていれば、それはむしろ、量産ブランドギターの絶好の証に他なりません。
もっとも、この様に、層が厚いピストル塗装の方が、音響は悪いが、キズが付き難く、清掃も市販の家具の艶出しで拭き取れ、メンテナンスも気楽です。
逆に、薄手のワイシャツ同然のセラックは音響に優れますが、その分キズは付き易いです。また、たとえ新品でも、時と共に自然に光沢を失い、気候によっては曇りも生じます。これらは再塗装で新品同様になりますが、セラックは音響に優れる分だけ、手間がかかると言う訳です。清掃は市販の家具の艶出しで結構ですが、アルコールを含んでいないこと。セラックはアルコールに溶けます。また、汗にも注意しましょう。スペインのフラメンコギタリストのギターの右肘の部分は、汗のせいでセラックが薄れているのがむしろ普通です。肘当てや長袖の着物を心掛けましょう。セラック塗装のギター購入の方は、予め、このセラックの特性を十分ご納得の上、お求め下さい。
要するに、ピストル塗装の方が安価で頑丈で音響が悪く、セラックは極めてデリケートで高価な塗装で音響に優れていると結論出来ます。因みに、私が今まで見て来た日本人&スペイン人プロギタリストの使用するセラック塗装のギターですが、何年も弾いているためか、何れも光沢もなく、キズだらけで、本人達も気にする様子はありませんでした。『少々のキズなら、再塗装すれば完全に消えるし、再塗装する金もないし!? それに、セラック再塗装など何時でも出来る。それより、このギターをより良く歌わせるのが私の仕事だ。』とプロは思っているのです。もちろん、故マヌエル・カーノ先生の愛器もキズだらけでした。
次は女子マラソンです。私は1999年、南スペインのセビージャ国際陸上に浅利純子選手の応援団の通訳で呼ばれました。スタッフと観光地区を歩いていると、散歩中の高橋尚子選手とバッタリ出会いました。結局、彼女は故障で走りませんでしたが、どこの女子高生かと思う程、小柄で子供っぽかったのが第一印象でした。その高橋尚子選手が、その翌年、シドニー五輪での金メダルの様子をスペイン国営テレビで見た時は嬉しかったですね。
さて、もし、高橋尚子選手がセーターにトレパンなら、金メダルは取れたでしょうか? 短パンにTシャツだからこその快走だったはずです。但し、もし、コケたら、セーターにトレパンの方が軽傷で済みます。ギターも同じです。塗装が厚ければ、ぶつけても頑丈ですが、音の出が悪くなります。塗装が薄ければ、音の出は良好ですが、キズは付き易いです。後は好みの問題ですが、ギターはあくまで音を出すのが目的だとすれば、前者は素人受けし、後者は玄人受けします。
とは言え、ギター愛好家が皆、高価なセラック塗りの高級手工ギターを持つ訳ではなく、予算の問題もあります。ただ、ギターの塗装は見映えだけではなく、塗装こそギターの音色のアクセルにもブレーキにも成り得るものだと知っておけば、将来のギター選択に大いに役立つことでしょう。
スペイン製スペインギターか中国製スペインギターか
【序文】読者がスペインギターをお持ちなら、或は、今後、日本で購入されるなら、それは正真正銘100%スペインギターか正真正銘100%中国製スペインギターのどちらかです。これが現実です。
当初(この記事初稿スペイン在住中2008年)、このギター料金の相違と是非は[単板か合板か][普及モデルか手工ギターか][塗装の違い:セラック&ピストル]の3項目だけの予定でした。この中で中国製スペインギターについて触れた時も、これは一部の心無いスペインギター工場だけの例外だと疑わず、参考程度の小記事の予定でしたが、情報を集めるに従って、かなりのスペイン有名無名ギターメーカーが、単に利潤追求のため、臆面もなく、原価二束三文の中国製ギターに自らのラベルを貼り、自社製として世界中に販売し、また、日本の輸入業者や小売店も、利鞘の大きさに見て見ぬ振り。この傾向は21世紀も、更に、拡大の一途を辿っている現実に直面しました。スペインギターの名誉と信頼回復のためにも、これは残念ながら一大項目として取り上げざるを得ないとの結論に至りました。
スペイン製スペインギターか中国製スペインギターか
食は中国、ギターはスペイン!? ところが、今日、何と、中国製ギターをそのまま輸入して、自社のラベルを貼り、スペインギターとして販売するスペインのギターメーカーが後を絶ちません。しかも、隅の方にMade in Chinaとも何とも書いてありません。ラベルの片隅に原産国Chinaと表示する道義心もありません。見た目は完全なスペイン製ギターです。
近年、ウクライナ戦争のおかげで、ヨーロッパでは物価が高騰し、加えて、歴史的円安で、スペインでも、2023年12月現在、一番安い日替り定食が10ユーロ(約1,600円)。総てこんな調子で、中でも石油やギター原材料など、企業努力だけではどう仕様もないのが輸入品です。当然、スペインギターの原価も跳ね上がる一方です。
この様な社会的経済的情勢になれば、どの業界も生き残りのため、値上がり分を小売価格に上乗せするか、丸ごと原価二束三文の中国製品に鞍替えするかのどちらかの選択を迫られます。その結果、昨今の日本同様、巷には格安の中国製品が氾濫しているスペインでは、何とギター付属品(ケース,譜面台,足台etc)のみならず、ギター丸ごと中国に発注し、ラベルだけスペイン製の純スペインギターとして販売するメーカーが増加の一途を辿っています。幾らこの方が手間隙人件費丸ごと大幅節約出来て、経済性が良いとは言え、中国製スペインギターとは低俗漫才にも程があります!!
これでは発想がまるで100円ショップです。しかも、様々な情報を総合すると、決して無名メーカーのやむを得ない生き残り策ではなく、日本を初め世界中に大量輸出している有名複数スペインギターメーカーほど、率先して中国に発注している明らさまな現状が見えて来ます。しかも、これが日本ではモデルによってはかなりの価格が付いており、この傾向は臆面もなく増長する一方です。
日本やアメリカのメーカーが、如何に中国製ギターに自社ラベルを貼って金儲けしても、セファルディは感知しません。しかし、スペインギターとなれば話は別です!! セファルディからお届けするスペインギターは総てスペイン製であり、中国製は1本もないことをここに誓約致します。また、セファルディと当サイトでは、スペインで製作されたギターだけをスペインギターの定義とします。私が何故、この様な当り前の事を一々但し書きする必要があるのでしょうか!? 本当にいい迷惑です!!
しかも、頭からMade in Chinaと表示しないどころか、ラベルには堂々とMade in Spainの表示です。どんな会社も金がなければ回って行きませんが、だからと言って、偽造大国中国に自ら魂を売って、何をやってもいいと言う訳ではないはずです。原産国中国だと知っていながら、平然とスペインギターと称して販売する日本の輸入業者や小売店も同類項です。日本でも時折、中国産食品を国産と偽る産地偽装事件が起こりますが、単に食品がギターに変わっただけのこと。これではまるで平成19年の世相を表す漢字[偽]そのもの。真に、不誠実で情けない話です。
なる程、これなら、サウンドホールを覗けば、正真正銘スペインのギターメーカーのラベルなので、あくまでスペイン製だと言い張れます。こうなれば、もはや、ギターの原産国や表示どうこうの問題ではなく、ギターを取り巻く人間の誠実不誠実の問題です。
日本では、何を買っても原産国表示があるし、スペインの有名なラベルが貼ってあるから、これはスペイン製だ!と疑いもしないのは、今日、性善説のお人好し日本人の軽率の極みでさえあり得ます。
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中国製スペインギタ-:今後の傾向と対策
定価15万円以下なら、どんな国のどんなギターも中国製だと、ギター業界を良く知る日本人プロから聞かされたのが2003年頃でした。それから20年も経てば、更に、利潤追求絶対至上主義に毒され、低コストの味を占めた多くのスペインギターメーカーが、よりグレードの高いモデルまでも偽造大国中国に喜んで発注し、それらが日本を初め、世界中に堂々とスペインギターとして流通すると思うとぞっとします。つまり、この中国製スペインギターの傾向は、今後、増加増長の一途を辿ります。
当サイトは日本にスペイン製スペインギターの価値観を伝えるためのものです。だからこそ、日々圧倒的な現実となり続ける、この中国製スペインギターの脅威をお伝えしなければなりません。
繰り返します。読者がスペインギターをお持ちなら、或は、今後、日本で購入されるなら、それは正真正銘100%スペインギターか正真正銘100%中国製スペインギターのどちらかです。これが現実です。どうか、セファルディの当サイトを熟読され、ギターに関する知識を少しでも深めて頂ければ、必ずや、演奏の幅さえ広がることをお約束します。
日本における中国製ギターの見分け方
以前は、その雑な作り故に、一目瞭然でしたが、近年、中国製ギターも改良されて来ていますので、一般愛好家には判断が難しいと思われます。2通りの場合を想定して見分け方を考えてみましょう。
価格による予想
国産メーカーの中国製ギター(おかしな日本語ですが!?)の場合 ☆ 国産メーカーのギターなら、内側の隅の方に、申し訳程度にMade in Chinaと書いてあるかどうかは知りませんが・・・。
スペインギターの場合 ☆ ラベルはスペインギターでも、今日、明らかに安価なものから、スペインの有名メーカーのかなり高価なものまで、中国製かも知れません。実際、中国製スペインギターには原産国中国の表示がないのですから、これは断定し様がありません。これは、あくまで、私がスペイン在住当時、ギター店やバイヤー達から直接聞いた確かな情報による、推測ではなく、推定ですが、断定ではありません。そこで、ずばり・・・。
店員さんにずばり尋ねる
ギター専門店の場合 ☆ ずばり『このギターはスペインのメーカーのラベルですが、スペイン製ですか、それとも、もしかすると中国製ですか?』と尋ねてみましょう。メーカーの有名無名を問わず、これだけ中国製スペインギターが世界を席巻している今日、こう質問する意義はあります。誠実な店員さんなら、誠実に答えてくれるでしょうが、儲け主義の店なら、迷わず笑顔で、”もちろん、スペイン製です“と不誠実な答えが返って来ることでしょう。
或は、”間違いなくスペインから輸入しております“と言われる知れません。数年前、フラメンコ関係の人に聞いた話ですが、[スペインから~先生を招いて]なる宣伝文句で踊りの講習会を開く場合、有名スペイン人ダンサーは高いので、スペイン在住の、セミプロ級だが、ギャラの安いラテンアメリカ人講師を呼ぶそうです。なる程、確かに”スペインから”の宣伝文句は本当ですが、あたかもスペイン人講師と思わせるための方便には違いありません。100%中国製スペインギターをスペインから日本に輸入して、”間違いなくスペインから輸入しております“とは上手い方便です。
こうなると、原産国表記なしギター故に、藪蛇ですが、これはもう、ギター云々の問題ではなく、ギター取り巻く人間のフェアープレーの精神の問題です。
セファルディからお届けするスペインギターは総てスペイン製スペインギターであることをここに宣誓致します。
一般の楽器店の場合 ☆ たとえ中国製スペインギターでも、おそらく、卸し元からはスペイン製だと言われているでしょうし、ギターもついでに置いてある一般の楽器店の店員さんなら、ギター知識にも乏しいと思われますので、ラベルがスペインのものなら、何の疑いもなく”はい、スペイン製です“と無邪気な答えが返って来ることでしょう。何れにせよ、ギターはおまけ程度の扱いの楽器店では、今後、安価な中国製ギターしか販売されない可能性の方が大です。
スペインギターに価値観を見出したい読者の皆さん、100%スペイン製のスペインギターを入手して下さい。100%中国製スペインギターでは人生悲しいではありませんか。
これらの直接原因は、ユ-ロ導入(2002年)に伴うユーロバブル後も、スペインでは物価が下がらず、スペインギターを安く作れず、加えて、近年のウクライナ戦争による、更なる原材料費の高騰が挙げられます。しかし!! セファルディは、安かろうが高かろうが、今後共、スペインギターのみを価値観として、同胞日本人に問いかけて参ります。
総括
ギター料金の相違と是非 総括
以上、主に4項目の相違により、ギター価格にも相違が生じ、結局、良いギターはそれなりの料金であり、そして、それなりの料金のギターは、良くも悪くも、それなりの理由があることを見て来ました。
また、最初の3項目[単板か合板か][普及モデルか手工ギターか][塗装の違い:セラック&ピストル]は、主として、手間隙原価の違いにより生じる料金の相違と是非であり、最後の[スペイン製スペインギターか中国製スペインギターか]は、ギター産業を取り巻く人々のモラルの高低による料金の相違と是非であると言えます。ギターに限らず何でも、良い物が欲しければ、それなりの料金を払えと言うことになりますが、それなりの価格だからと言って、実の伴わないギターもあるのが現実です。
ただ、舶来品に弱い国民性もあるのでしょうか。日本におけるスペインギター価格は世界一高いです。今日、インターネットのご時世でもあり、読者も、同じギターがどこの国で幾らなのか、比較してみて下さい。今日の歴史的円安&ユーロ高とスペイン製のスペインギターであるが故に、特別安くはお届け出来ませんが、セファルディでは、スペイン製普及モデルもスペイン製手工ギターも、およそヨ-ロッパ国内価格+αでご紹介します。主旨はスペインギター振興会ですので、高い安いを論じるのが目的ではありませんが、確かに、日本におけるスペイン原産の輸入スペインギターの割には、お求め易い価格設定であるとの認識をお持ち頂いて結構です。
勿論、読者によって価格の印象は異なるでしょうが、正真正銘100%スペイン製スペインギターですから、日本の巷で見受けられる大衆ギター(国産、中国製、中国製スペインギター)に比べれば、最終価格は安くはありません。安くはありませんが、それでもヨ-ロッパ国内価格+αがセファルディの価格基準です。店舗としての運営も考慮すれば、これ以上安くも出来ません。当サイトはスペイン製スペインギターに関してのものです。他の国のギターは一切忘れて、スペイン製スペインギターだけに集中して下さい。
もっとも、たとえある店で同じギターが他店より安くても、ギターは楽器ですから、鳴らなければ意味がありません。従って、安くても良く鳴るギターを捜したり、高いギターは、なる程それなりの音がすると納得させられるところに、ギター選択の面白さがあると言えます。また、それを聞き分ける、ある程度の耳がなければ、正しく選択出来ないとも言えます。木は生物ですので、図面通り組立てるプラモデルと違い、2本として同じ音色のギターはありません。ですから、2本以上のギターがあれば、それは各自の好みと見る目によって、必ず何らかの優劣が付くと言うことでもあります。
そして、その優劣や好みをギターの外見や価格、メーカーの有名無名、ギター仲間や、心の中では早く買えと言っている店員さんのアドバイスを聞いて、優柔不断に何となく決めるのではなく、今後、これら4項目の観点からも吟味して、自らの意見を持って下さい。そうすれば、より良いギターの選択、価格に似合ったギター、及び、スペインギターを見る目と利く耳も養われて来ます。そして、それは普段は使わない奥行きのある引き出しとして、必ず演奏の幅をも広げてくれます。
以上、中には核心を突くコメントもありますが、それはまた、今日の多くの誠実なスペイン人製作家や良心的なギター製作所の率直な意見を代弁したと解釈して頂いて結構です。
セファルディのスペインギター料金の相違と是非 総括
☆スペイン製 普及モデル(クラシック&フラメンコ)
合板ギター:68,000円から。安かろう悪かろうでは意味がありません。この料金からそれなりに鳴るギターをお届けします。もちろん、安くてもスペイン製です。
単板ギター:165,000円から198,000円まで。セラック手塗り塗装で仕上げたGLシリーズ(280,000円)も用意しています。
有名ラベルのスペイン普及モデルがブランド化され、日本で手工ギター以上のとんでもない値札が付き、何十万~百万円以上の高級手工ギターがセラックではなく、臆面もなくピストル塗装されて店頭に並ぶ21世紀の今日、真に良心的でお求め安い価格です。それでも、最終価格はおよそヨ-ロッパ国内価格+αです。
長年親交のあるPrudencio Saez製作所(創業1963年)の社長父子の協力により、音響を重視した、総てセファルディのための特別仕上げのギターをお届けします。
☆スペイン製 手工ギター(クラシック&フラメンコ)
軽いタッチで音が分離して遠達力があり、味とこくと個性ある音色で歌い、包容力さえ感じさせる、スペイン製手工ギターを厳選してお届けします。
セファルディからお届けするスペイン製手工ギターはクラシック、フラメンコを問わず、総てラベルの製作家本人の作品であり、総てセラック手塗り塗装(FSAはニトロ:ピストル&手塗り15g仕上げ)です。名より実を取るべく、有名無名を問わず、最終価格はおよそヨーロッパ国内価格+αです。
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謎の空白19.8~28~48万円!? 正確には198,000円(一番高価なピストル塗装の普及モデル)~280,000円(GLシリーズ,セラック手塗りの一番高価な普及モデル)~400,000円(一番安い手工ギター)ですが、セファルディのギター料金一覧表には、この中間の料金のギターが1本もないことがお分かり頂けます。これは取りも直さず、普及モデルにおかしな箔付けをして高く売る様なことをせず、普及モデル&手工ギター共にヨーロッパ国内価格+αで日本に紹介する基本方針を実践したもの、それ故の、この料金帯の空白とご理解下さい。スペイン製普及モデルは198,000円まで。セッラク手塗りでも280,000円。スペイン製手工ギターは400,000円から。唯、それだけのことです。
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ご紹介するスペインギターの価格ではなく、スペインギター振興会の主旨に賛同して下さる様、お願い致します(代表)。
今後の推移と展望
2002年のユーロ導入以降、スペインでも物価はヨーロッパ並みとなり、特に、近年は中華肺炎とウクライナ戦争により、原材料(木材)はユーロで激しく値上がりし、ギターも右へ倣え。
一方、私がスペイン在住時のアベノミクス直前には、スペインの銀行に1万円持って行くと、手数料を引かれても99ユーロ戻って来たのを今でも良く覚えていますが、その後、日本政府は輸出振興のため、円安に舵を切り、更に、ウクライナ戦争でによる歴史的円安により、2024年6月現在、1万円=58ユーロにしか帰って来ません。何と、円の対ユーロの価値は41%の目減りです。
2023年1月、2024年1月とスペインを訪問しましたが、ギター梱包用の段ボールさえ2倍になっており、ケースも輸送費も、総て値上がりし続けています。つまり、現在、輸入スペインギターの原価は、スペイン国内でもユーロで上がり続け、更に、超円安ユーロ高により、二重苦の高止まり状態です。正直、先が見えません。
従って、日本に入って来るスペインからの輸入ギターは、今後、単に、ギタービジネスとして原価を考えれば、普及モデルに関しては、今以上に率先して、疑いの余地なく、原産国非表示の中国製スペインギターに靡き、疑いの余地なく、高級モデルまでも中国製となって行きます。勿論、ラベルは相変わらず、臆面もなく、スペイン有名メーカーのままです。
手工ギターに関しては、スペイン製に限らず、欧州ユーロ圏のものは、なお高騰し、超円安もあり、今の原価を鑑みれば、今後、日本での最終価格は100万円が最低ラインになって来ます、いえ、既に、そうなっています。これは、無名個人製作家の場合です。それでは、今までの復習ですが、定価50万、60万、70万、80万円のスペイン製ギターは、一体、誰が作っているのでしょうか? 一段落上で述べた”疑いの余地なく、高級モデルまでも中国製“であるなら、作者は中国人です。
一方、スペイン人名工の手工ギターの原価は、幾ら超円安時代とは言え、現行レートで、既に、100万円以上です(2024年6月現在)。原価の話です。これに、更に、関税に送料。一体、最終価格は幾らになるのでしょうか?
しかし、セファルディは、安かろうが高かろうが、今後共、スペイン製スペインギターのみを価値観として、同胞日本人に紹介して行きます。
なお、セファルディではこの現状を憂い、比較的低価格で製作する無名のスペイン人個人製作家の発掘の必要を痛感し、そして、スペイン在住30年の店長独自の外交ルート、及び、愛知県立大学スペイン語学科卒のスペイン語力により、遂に、捜し出しました。最終価格48万円を予定しています。自然乾燥の木材を使用した手工品で、セラック手塗りです。今しばらくお待ち下さい。
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※ 付 記 ※
ある会社で、何のための仕事かと尋ねられた社員が”皆の幸せのため”と答えたところ、上司に”そうじゃない、売り上げを伸ばすためだ”と説教されたそうです(2008年初頭のある日本の週刊誌)。
私はある意味、技術レベルの遥かに高いプロ野球より、高校野球の方が好きです。それは、ノーギャラで純粋に野球技術だけを競う高校野球の方が、そのフェアプレ-の精神故に、観る者の心に吹く爽やかな一陣の風であり得るからです。しかし、人は学生であることを辞め、金銭社会に出れば、この上司の言った如く、金銭に魂を売って、売上げを伸ばすためには何をやってもいいのでしょうか?
人生、何をやろうが、フェアプレ-の精神なき爽やかな一陣の風など吹きはしません。そして、フェアプレ-の精神とは、自分へ思いやりではなく、相手への思いやりのはずです。
確かに、個人商店から大企業まで、皆、儲けは必要です。金銭に一喜一憂するのが、資本主義社会に生まれた我々の宿命です。しかし、偏れば、この上司の如く、偏った説教を食らいます。
しかし!! 手工品より高いブランド化されたスペイン製普及モデル、原産国非表示の中国製スペインギター、影武者ギターなど、これらの珍品が大手を振って罷り通っているのは、相手を思いやる爽やかな一陣の風どころか、自らのみを思いやる、偏った利潤追求至上主義に泥酔しているからです。読者の皆さんも一緒に酔うかどうか。それは各自の自由です。しかし、・・・。
そもそも、ギターの果たすべき本来の使命とは、弾き手、聴く人、製作者、売る人、ギターを取り巻く総ての人が情緒的に豊かになることのはずです。そして、ギターと代金の交換は最後の最後に行うもの。これがスペインギターに対するセファルディの主旨であり基本姿勢です。
さて、それでは、最後に、④ギター購入直前アドバイスに入ります。
④ギター購入直前アドバイス
【序文】それでは、最後に、購入希望者各自のニーズを何通りか想定しながら、左の[①良いギターとは][②ギターの材質とサイズ][③ギター料金の相違と是非]を読まれた読者のスペインギターに対する妥協点が高くなっていることを期待しつつ、そして、ギター料金一覧表&ギター全商品一覧と照らし合わせつつ、以下、ギター一般、特に、スペインギターの最終選択基準をご一緒に考えてみます。
まず、何故、ギターではなく、スペインギターなのか?
何故、スペインギター(スパニッシュギター)なのかと言う精神的主旨は既に冒頭で述べました。ここでは、楽器としてのスペインギターならではの特徴について述べます。
スペインギターと聞くと、何か別ジャンルの未知のギターではないかと思う人もいるらしく、”スペインギターは他のギターとどう違うのか?”と問われることがありますが、分類上は、通常のクラシック&フラメンコギターです。形や大きさが特別な訳でもありません。スペインで作られるギターは総てスペインギターだと言うことです。ところが、響きが違います。
一国の気候風土は、その国民性、食文化、そして、楽器作りを決定付けます。どんな食品にも乾燥剤の入っていない、極端な乾燥気候のスペインでは、人もギターもお喋りが多くなります。これを反映して、どんな安物ギターでも、それなりに乾いた音色がすること、重厚な音のクラシックギターでも、それなりに乾いた重さが感じられること。これがスペインギター全般に渡る一番の特色だと言えます。仮に、日本や他の国々で、全く同じ製作家が全く同じギターを作っても、その気候の故に、違った音色になります。工法は真似出来ても、気候は絶対に真似出来ない、このスペインの乾燥気候こそ、スペインギターの一番の特徴です。従って、今日、日本に渦巻く中国製スペインギターが偽スペインギターである隠れた理由も、この気候の違いにあると言えます。
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ギターではなく、このスペインギターに価値観を見出したい方、続けてお読み下さい。この[④ギター購入直前アドバイス]は少々長いですが、必ずや、読者を別次元の豊かなギター人生観へと誘(いざな)う、充実した内容をお約束します。
クラシックかフラメンコギターか
まず、クラシックギターかフラメンコギターかお選び下さい。そのためにも、今一度、両者の定義について考えてみましょう。
クラシックギターと言えば、眠くなる様なクラシック音楽しか弾いてはいけない、お堅い楽器だとの印象を聞く人に与えていると思いますが、読者は如何でしょう? 人生、少なからぬ物事が第一印象で決まってしまうとすれば、私は常々、この名称が第一印象となって、クラシックギターの普及を妨げていると思っています。誰がいつ頃命名したかは知りませんが、クラシックギターのクラシックとは、必ずしも、クラシック音楽のクラシックではなく、伝統的な、クラシカルな、そして、フォークやエレキの様に比較的新しいギターではなく、昔からあるギターだから、クラシックギターと呼ぶのだと、私は解釈しています。ピアノが昔からある、伝統的な、クラシカルな楽器であると同じです。そのピアノでクラシック音楽しか弾いてはいけない規則はない様に、21世紀のクラシックギターでも、ピアノ同様、現代音楽、映画音楽、ポピュラー、民謡、歌謡曲など、何でも弾いて良いのです。
バッハの曲なら、重厚な音の、いわゆる典型的なクラシックギターでしょうが、同様に、乾いた音質が売りのフラメンコギターも、フラメンコだけしか弾いてはいけないのではなく、サンバやボサノバなど、軽快なノリの音楽にはむしろ、フラメンコギターの方が魅力を発揮します。
まず、発想を柔軟にして、クラシックギターはクラシック音楽だけ、フラメンコギターもフラメンコだけではなく、基本的には何を弾いても良いのだと頭を切り替えれば、ギター選択にも幅が出て来ると同時に、好みのギターを絞り込み易くなります。
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以下、主に、肝心の音色の観点から、お好みのスペインギターをセファルディ流に絞って行きます。
普通サイズか小さいサイズかで音も変わる
いわゆるギターのサイズについてはこちらをご覧になり、弦長(650&630mm&その他)をお選び下さい。手工ギターに関してはサイズも指定して頂けます。
さて、ギターのサイズと言えば、何故か、弾き易さ、弾き難さと言う、肉体的な面しか言われませんが、サイズが違えば、音色もまた、違って来ることを思えば、ある意味、こちらの方が重要かも知れません。以下、主に、音色の観点から見ます。
弦長 ☆ 弾き易いからと言って、短めなら、音は小さくなることは覚悟しなくてはいけませんが、それ故、引き締まった音色になるかも知れませんし、逆に、長ければ、音は大きくなりますが、間延びした音色になるかも知れません。要は、弦の長さではなく、音色です。
弦高 ☆ 一般的に、低ければ、弾き易いが、音量は若干減り、音質も若干雑になり、逆に、高めだと、若干音量を増し、若干カドの取れた音色になって来ます。これがそのまま、フラメンコギターとクラシックギターの弦高と音質の違いを反映しているとも言えます。何れにせよ、非力な日本人は、ある意味、音量音質より、弾き易さ優先で、弦高は低めの設定で宜しいと思います。初心者なら尚更です。
ボディーの大きさ ☆ 普通の大きさなら、それなりに普通の鳴り方でしょうが、たとえ弦長が普通に650mmでも、小さいボディーの方が、昔のリュートなど古楽器の様なポロンと言う、こじんまりした音色になります。これもまた、楽しからずやで、バロック音楽などには、却って向いているとさえ言えます。従って、普通サイズの手の人でも、大いに小さなギターを弾いて良いのです。要は、ボディーの大きさではなく、音色です。
ボディーの厚み ☆ 厚ければ、音を溜めてから出す、クラシックギターの重厚な音色、薄めなら、弾いてすぐに音を吐き出す、フラメンコギターに向いた作りだと、一般論としては言えます。しかし、グラナダでは伝統的にクラシックギターさえ、ボディーは薄めの製作家が大半ですし、マドリードやコルドバでは、フラメンコギターさえ、クラシックギター並みの厚めの作りが多い様です。一概には言えません。要は、ボディーの厚みではなく、音色です。
表面板の厚み ☆ これは見た目には識別出来ない、言わば隠れたサイズの違いです。一般的に、クラシックギターは厚めで、重厚な音質を、フラメンコギターはやや薄めで、乾いた音色を演出します。もっとも、分厚過ぎても鳴りませんし、薄くて良く鳴っても、強度の問題があります。この表面板の厚みは職人の腕の一番の見せ所です。
指板の幅 ☆ 普通サイズ(弦長650mm)は[0フレット部52mm&12フレット部62mm]が標準幅。フォークギター出身者は広過ぎる印象を持つと思いますが、ピックを使わず、指で直接弾くクラシック&フラメンコギターは、弦と弦との間に右手指先が直接入るスペースが必要です。余り狭過ぎても、スケールやアルペジオが弾けませんし、左手も、押弦の際、指の腹がすぐに隣の弦に当って、雑音が出易くなります。一定の幅は必要です。小さいサイズ(弦長630mm)は[0フレット部50mm&12フレット部60mm]とやや狭い作りです。
ネックの形状 ☆ 手の小さな日本人には、薄めで、両端も出っ張り気味より、丸みを帯びている方が弾き易くなります。但し、余り薄くして、弦張力で反ってしまうと何にもなりません。さて、ネックの厚い薄いによる音の違いはどうでしょう? これは私も、まだ、データ不足で具体的な事が書けません。何か分かり次第お知らせしましょう。
ブリッジの形 ☆ どんな形でも、弾き易さには一切関係ありませんが…。ある時、研究熱心が故に、常に斬新なアイデアを実行に移すビクトル・ディアス氏が、通常の半分程の、極めて細長く小さなブリッジのハカランダのクラシックギターを作りました。個人的には、音色が必要以上に甘くなり過ぎた感じがしましたが、この経験により、ブリッジの形状でギターの音色が変わることが証明されたのは貴重な体験でした。こんなコメントは、もしかして、私が日本で最初かも知れませんが、この現実を前にすれば、今後、大いに研究の余地ありと思います。
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さて、ここまでのコメントで、クラシックギターかフラメンコギターか、普通サイズか小さめのサイズかを決めれば、後は予算とも相談しながら選ぶことも出来ますが、それだけでは面白くありません。まずはラーメンを食べながら、より深くスペインギターを見る目を鍛えて行きましょう。
材質より出来上がったギターで選ぶ
ラーメンを食べながらギター選択に思いを巡らせる
手打ちラーメンの方が美味いんだけど、金も時間もないから、インスタントラーメンにしよっと!?
こんな経験は誰でもあります。手工ギターは手打ちラーメン、普及モデルはインスタントラーメンに譬えてもいいでしょう。だとすれば、金があってもなくても、まずはインスタントラーメンから食べ始めて、たまに手打ちラーメン屋に行って舌を肥やす。この順序が自然です。
インスタントラーメンにも最低限のモラルが必要
私が学生時代、今は落ち目のダイエーの地下スーパーで、ノーブランド商品なるものがありました。たまにノーブランドラーメン5個パックを買いましたが、唯、インスタントラーメンと言うだけの不味い代物で、唯、ギターの形をして、弦が6本張ってあって、安いと言うだけの、初期の中国製ギターみたいなものでした。それに引き換え、スペインでも手に入る出前一丁はさすがに美味しいと感じます(2008年現地在住当時執筆)。インスタントラーメンとしてはです。
同様に、世に出回っているスペイン製普及モデルにも美味い不味いはあります。しかし、安かろう不味かろうでは意味がありません。ギターは楽器ですから、鳴らなければ意味がありません。
セファルディのご紹介する普及モデルは68,000円から。それなりに鳴るギターです。それ以下は扱いません。最低限のモラルも節操もない原産国非表示の中国製スペインギターなど論外です。
スペイン製普及モデルにも、中国製普及モデルのスペインギター(何故、私が一々こんな但し書きを書かねばならないのでしょうか!?)にも、英語でもっともらしくHand Madeとラベルに書いてあるものが多いですが、もちろん、手工ギター(手打ちラーメン)と言う意味でも何でもありません。
インスタントラーメンでも美味い方がいい
音色なら単板ギター>合板ギターです。これは、インスタントラーメンでも、歯応えのある麺とない麺に譬えられます。美味い音色をお求めなら、たとえ普及モデルと言えども、迷わず、単板ギターをお選び下さい。セファルディでは、ギター料金一覧表の材質欄の”単板”標示でご確認下さい。
インスタントラーメンの常識を根底から覆す特製スープ★GLシリーズ
インスタントラーメンなら、どのメーカーでも大量生産の麺に粉末スープですが、もし、インスタントラーメンの麺を手打ちラーメン屋の手作りスープに入れたとすればどうでしょうか? これはビジネスとすれば不釣合いで、あり得ない話ですが、この方が美味いラーメンになることも事実です。
インスタントラーメン業界でも良質の麺を捜して来て、それを更に、わざわざ手間隙経費のかかる手打ちラーメン屋の特製スープ(セラックニス)に入れて仕上げたのがGLシリーズ。プルデンシオ・サエス社で普及モデルとしては最高の木材で粗方仕上げ後、個人製作家が総て100%手作業で、きめ細かなサンドペーパーがけ、目止め、そして、幾重にも及ぶセラック手塗りで仕上げます。ギター料金一覧表のプルデンシオ・サエス社のクラシック&フラメンコギターのGLで始まる品番です。
普及モデルの限界を超えた、最高級普及モデルの気品ある音量音質を28万円でお届けします。
塗装が違えば、そんなに価格が違うのか!?と率直に疑問を感じる読者もいるかも知れません。因みに、私の知り合いの日本人製作家にセラック塗装を依頼すると30万円。ギター店の私には20%引きの24万円。セラック塗装したギターがではなく、セラック塗装だけの料金です。お察し下さい。
世の楽器商からは、ビジネス的にバカな事だと言われるでしょう。しかし、セファルディは振興会として、より良い音色を求めて、敢えてこのバカな事をやります。ギター料金一覧表の塗装蘭の[セラック]とはそう言う意味だと再認識して下さい。
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↑ 以上、セファルディで扱うスペイン製普及モデルの選択基準を分かり易く見て来ました。
↓ 以下、スペインギター、特に、スペイン製手工ギターの選択基準を分かり易く見て行きます。
やっぱり手打ちラーメンの方が美味い!!
最近では良く出来たインスタントラーメンも多いですが、翌日、手打ちラーメンを食べてみると、麺の歯応え、スープ、薬味など、味の違いは歴然です。そして、味とこくと料金が歴然と違うのは、普及モデルも手工ギターも同じこと。美味さなら、歴然と、手打ちラーメンとスペイン製手工ギター(ギター料金一覧表の400,000円以上)をお選び下さい。
でも、金がないからインスタントラーメンにしよっ~と!?
世の中、誰しも高級手工ギターを買うべき予算を持ち合わせている訳ではないとすれば、これも一つの立派な選択方法です。もちろん、インスタントラーメンにはインスタントラーメンなりに、各社の意地と拘りと企業努力があるはずです。
長年親交のあるプルデンシオ・サエス社社長父子の絶え間ない意地と拘りと企業努力の結実とも言える音響増幅内部構造のスペイン製普及モデルを日本にご紹介します。もちろん、個人製作家作手工ギターには劣りますが、セファルディからご紹介するスペイン製普及モデル(ギター料金一覧表の198,000円以下のギター)には、こう言う過程と意味があることをご理解下さい。セラック手塗りのGLシリーズ(ギター料金一覧表の280,000円×7本)も用意しています。
セファルディではこれらのスペイン製普及モデルをヨーロッパ国内価格+αでご紹介します。
でも、やっぱり手打ちラーメンの方が美味い!!
それは当然です。予算のあるなしに関わらず、ギターグルメなら、美味いギターで美味い演奏を目指して下さい。
セファルディでは、有名無名実力派スペインギター製作家の手工ギター(ギター全商品一覧の400,000円以上)をヨーロッパ国内価格+αでご紹介します。
ラーメンも色々、スペインギターも色々な材質で選ぶ
私がスペインでの観光ガイド時代(セファルディ前身レオーナ設立前の10年間)、ある時、日本から来た医師の学会の案内をしました。添乗員さん曰く、”皆さん医者ですから、不味い物は食べませんよ“との一言が、何故か印象に残っています。舌が驕って、不味い物を食べないのは道徳的にはともかく、色々な美味しい物を食べれば、味覚が養われることはまた、ギターにおいても真実です。
醤油ラーメン、味噌ラーメン、塩ラーメン・・・。読者の好みはどれでしょう? それぞれにそれぞれの良さがあり、一概には言えませんし、冬の寒い日は味噌ラーメンですが、夏は冷し中華でしょう。何が何でも味噌ラーメン大盛りと言う人は、誰が何と言おうとハカランダのギターが最高と言い張る様なもの。知恵のあるラーメン通とは言えません。
この様に、気候や季節で味覚や好みも左右されるのなら、ハカランダ、ローズ、糸杉、くるみ、かえで・・・と、気分と歌心によって、様々な材質のギターがあってもいいはずです。どれが一番美味いかではなく、それぞれ違った音色なのです。また、同じ味噌ラーメンでも、店によって味は異なる様に、将来的には様々な材質、何人かの製作家のギターを味わって、味覚を養ってみて下さい。セファルディは、今後も、ビジネスにならない様な色々な珍しい木のスペインギター、そして、名より実を取るべく、名工の名作に引けを取らない無名製作家の秀作も日本に紹介して行きます。要は音色です。
ギターグルメのスペインギター選択
そんなおかしな木と、弾きもしないで頭から決め付ける世の楽器商が大半でしょうが、それは売れるギターだけ売るのがビジネスだと、心から思い込んでいるギター商人のおかしな偏食です。本当のギターグルメは、健全なギター人生のためにも偏食はしないのです。
今のところ、日本人に余り馴染みのない使用木材は、くるみ、虎目かえで、アベバイ、アフリカ糸杉、モンゴイ、ハトバ、黒檀だけですが(ギター料金一覧表の材質欄参照)、今後、スペインギター史上使われた、様々な木のギターを紹介して行く予定です。これらを偏食しないことも、セファルディのスペインギター振興会としての使命です。
こうした様々な木材のスペインギターについては、故マヌエル・カーノ先生と親交のあった、スペイン・グラナダの古参製作家・故フアン・ロマン・パディージャ氏の意見や昔話も大いに参考にしています。氏が若い頃、実際に、セゴビアから直接聞いたくるみギターの話や、当時は多くの製作家が多くの木材でスペインギターを作っていた歴史的事実を聞かされました。それが一昔前からギタービジネス至上主義のおかげで、スペインギター製作木材はハカランダ(中南米ローズ)かローズか糸杉(シプレス)だけの偏食になってしまったのです。
氏にはくるみクラシックギターの製作をお願いしていましたが、2020年没。セファルディは今後共、次代の製作家達と共に、様々な木材のスペインギターで、その意向を継承して行きます。
偏食しないスペインギター選択
高速も山道もベンツやハカランダでブッ飛ばして悦に入る。これを偏食と言います。田舎道ならファミリーワゴンで、そして、天気も気分も良ければ、バイクで軽く流す方が快適かも知れません。
バッハのガチガチのクラシック音楽をハカランダの最高級クラシックギターで弾く規則はありません。同じ曲でも、違った木材の違った音色で弾けば、必ずや新境地が開かれ、ギター演奏にも幅が出て来て、ギター人生の豊かさにも直結します。リメイクされた昔の歌謡曲が原曲とは全く違って聞こえる様なものかも知れません。
少しニュアンスは違いますが、ある名器を持っているギタリストによれば、”たまには良くないギターを弾かないと、感覚が麻痺して、名器の良さが分からなくなる“そうです。或いは、仮に、パッとしないギターでも、セゴビアが弾けば、あれは名器だと人気が出ないでしょうか? 要は、ギターの演奏も、選択も究極のところ、歌心の一語に帰着します。
同じく、色々な木の様々な音色のギターを弾けば、各々のギターの良さもまた、再発見出来ることでしょう。偏食しないで何でも食べてこそ、健全なギターグルメの味覚の守備範囲も広がります。
結構多くの愛好家が、”僕は表面板は松、私は杉“と頭から偏食を決め込んでいることも同様です。
美味いラーメンは量より質
私は貧乏性の故に、どうしても大盛りとかお徳用パックに惹かれます。美味いラーメンがそのまま大盛りなら、やはり美味いのでしょうが、麺の間延びしたラーメン大盛りより、歯応えのある麺の普通盛ラーメンの方が美味いです。どちらが量が多いラーメンかと言えば前者ですが、どちらが美味いラーメンかと言われれば後者です。
音量ではなく、如何に音色の美味いギターか否かがギター選択の基準であり、スペインギター振興会セファルディのテーマです。人気のあるラーメン屋は大盛りだからではなく、美味いから人気があるのでしょう。ギター選択も、世の多くの物事と同じく、量より質、音量より音質(音色)です。逆ではギターグルメとは言えません。
それでも音量に拘るマヌエル・カーノ先生
故マヌエル・カーノ先生が爪弾くギターからは、とにかくバカでかい音量が出ていました。生の音で聞かせたいとの理由から、マイクを好まず、それ故、客席後部まで聞こえるためにも音は大きく・・・と文字通り説明を受けた訳ではありませんが、どんなに速く弾いても、音が小さければ弾いたことにはならないと生徒達にも教えていたのも事実です。そして、軽く弦に触れるだけで音がガッーと出る名器に、ソーセージの様な太い指。確かに、日本人には真似出来ない音量でしたが、ギターコレクターとしても有名だった先生が様々なギターを試す時、決め手は、やはり、音質でした。
音質とは、どんな高速アルペジオやトレモロでも、一音一音分離してはっきり聞こえること。そうすれば、その透明感と遠達力故に、たとえ音量自体はないギターでも、音量があると聞こえるものです。もしかすると、先生の音量の秘訣もその辺りだったのかも知れません。
ギター選択はまず音質。それに音量が伴うギターならそれに越したことはありません。
それでもマイクを好む人もいる
たまに、”私はマイクを使いますから、音量はなくても、バランスが良いギターがいいです“と言う人がいます。どこか意味不明の印象は拭えませんが、これが、もし、多少人前で弾く機会のある、上手い人の意見なら、それはそれで説得力のあるギターの選び方とも言えます。
故マヌエル・カーノ先生の様に野太いタッチなら、ギターもそれなりの容量でなければ、軽自動車の時速100kmの如く息切れしますが、マイクを使えば、大きな音もまた、必要ない訳ですから、それこそ、バランスの良い普及モデルを軽く爪弾くだけでも、用は足りることにもなります。また、マイクを通す故に、音も変わりますから、わざわざ音色の素晴らしい高級手工ギターを使う意味も薄れるとも言えますが・・・、私には、やはり、どこか意味不明です。
バランスとは音が分離して、音の粒が揃っていること。これは大切なギター選考基準です。音が分離せず、音の粒が揃っていなければ、それはマイク越しにも伝わって来ます。。
ギターの材質より出来上がったギターで選ぶ
節目の有無で建材の原価は違って来ます。節目だらけより、節目のないヒノキの柱の方が遥かに高級感が漂います。ギターの使用木材においてもそれは同様で、確かに、節目の有無や木目の詰み具合によって、刺身のトロの如く並みから特上まであり、当然、原価も違います。しかし、木は生物故に、特上の木材を使用したからと言って、特上の音色のギターが出来上がるとは限りません。
マヌエル・カーノ先生没後半年後の1990年夏、先生が弾く予定だったアルハンブラ宮殿横の庭園でのコンサートに、ある著名な日本人クラシックギタリストが招かれ、その前日、2人でグラナダ市内の先生のお宅に赴き、未亡人の奥様の前で、先生のコレクションを弾かせて頂いたことがありました。一番凄かったのが、近代スペインギターの開祖アントニオ・デ・トーレスのシコモーロ材(かえで科)の小さなギターでした。
まず、当時は、現代ほどギターの作り自体が大きくありませんでした。そして、何と、ギターは節目だらけで、おまけに、裏板は3枚(現代は2枚)寄せ。先生曰く、当時は良い木材がなかったからだそうです。つまり、最悪の木材で最高のギターが出来上がった訳です。
今、誰かがこんなギターを作れば、たとえ有名製作家でも信用ガタ落ちでしょう。実際、日本と交易のあるスペイン人製作家は、おそらく、日本の楽器商のリクエストで、見映えの良い木だけを使っています。高い金を払う以上、見た目の悪い木など論外だと思うのは自由ですが、見た目の悪い木材のギターだから、無条件に悪いギターだと決め付けるのもまた、論外であることは、このアントニオ・デ・トーレスの傑作が雄弁に背理法で証明して余りあります。
料理の価値は必ずしも食材の良し悪しではなく、出来上がった料理(②冒頭)が美味いかどうかです。寿司は、具の干瓢や胡瓜や巻いてある海苔を個別に食べるのではなく、寿司と言う料理を食べるのと同様に、ギターの選択基準も、原材料の等級や原価や見映えや製作家の知名度ではなく、出来上がったギターの音色が美味いかどうかが決め手であるべきです。セファルディからは音色の美味いスペインギターをお届けします。尤も、それは必ずしも極上の材質ではないかも知れません。
例えば、仮に、最高の材質を使用した名工の手工ギターと、見るからに余り上等ではない木の無名製作家の作品が2本あり、明らかに後者の方が出来がいいとします(実際これは大いにあり得る話:どんな名工にもハズレはあり、無名製作家も何本かに1本は当たりが出る)。読者はどちらを選びますか? 見映えとブランドに拘る、ギターの分からない初級者ほど、楽器商の言われるがままに前者を選び、分かっている人ほど、迷わず後者を選びます。私の知り合いの日本人スペイン人プロギタリスト達も、音色さえ良ければ、少々の木材の見映えの悪さなど気にする人はいません。
楽器店の店員さんは”名工の作品は使っている材質も最高です“などと言うでしょうが、それは補足的説明にはなっても、だから、必ずしも、ギターが鳴ると言う保証にはなっていないのです。実際、私は有名製作家のハカランダの当りも並みもハズレも見て来ました。
セファルディでは外見を気にする日本市場向けにはどうかなと思われる木材でも、製作家がこれは鳴ると判断すればそれで善しとします。むしろ、自然の木材なら、そのまま使用して何も差し支えなしと言うのがセファルディの方針です。外見を重視し、最高の材質を使わなければ最高のギターは生まれないと確信して疑わない日本人ギター奏者の間違った固定概念を覆すのも、セファルディの振興会としての役割です。
上述の節目だらけのアントニオ・デ・トーレスの名器が、水戸黄門の印籠の如く、最高の材質最高のギター主義と言う、日本の常識は世界の非常識を打ち壊して余りあります。短刀直入な話、読者の皆さん、もし、予算があるものなら、この名器を買いたいとは思いませんか? それとも、まさか、節目だらけだからと言って、頭ごなしにけなしますか?
日本の常識は世界の非常識
日本の常識は世界の非常識(ギター演奏編)!?
例えば、スペインでは、世界中をコンサートで渡り歩いた故マヌエル・カーノ先生に至るまで、フラメンコギタリストは誰も楽譜が読めない!? 教則本を買ったこともなく、買っても読めず!? と言うことは、教則本の基礎練習の概念が頭から存在しないので、誰一人基礎練習などしない!? フォームも人によってまちまちで!? それを生徒に一々教える先生もいない!? 勿論、レッスンは楽譜教則本なしで、先生が弾いて、生徒が目と耳で真似するだけ!? 細かい事は気にしません。おまけに、私の知り合いのフラメンコギタリストは家にギターがない!? 練習時間ゼロで、ギターは仕事場のフラメンコ会場に置いてあるだけ!? しかも、それでヨーロッパツアーを難なくこなす!? 要するに、結果オーライで、弾けりゃ、それでいい訳ですし、弾けなきゃ、どんな正統派理論も、正しい爪の形も、名器さえも無用の長物です。クラシック音楽でも、ギターに限らず、基礎練習ゼロのプロはいる様ですが・・・。
それに引き換え日本の常識は・・・。うちの教室ではこうですと言わんばかりに、とにかくフォームに拘る割には(特にクラシックギター)、蚊の鳴く様な音の小さな人が非常に多いのも、日本人ギター愛好家の共通点です。こう言う人に限って、高価な有名ギターを買わされ、小さな音で弾いて悦に入り、まるで新車の如く、少しのキズも付けまいと、演奏よりそちらの方に注意が行って、ますますタッチが弱くなる悪循環。あたかも、大枚叩いたベンツを時速40Kmで乗り回し、”さすがベンツは違うぜ!!”と次元の低い自己満足に陥れば、ディーラーの思う壺です。
セファルディでは故マヌエル・カーノ先生の教えを継承し、まず、どんなに外見の正しいフォームでも、音が大きくなければ、ギターは弾いたことにはならないと見なします。高速を時速100Km以上でブッ飛ばし、息切れしない登坂力を味わってこそ、せっかくの高級車ベンツのはずです。同様に、ベンツの持ち腐れの如き、時速40Kmの正しいフォームでギターの安全運転などナンセンスです。
この日本の常識は世界の非常識(演奏編)にスペインギターで挑戦するのもセファルディの使命です。如何に徹底的に力を抜いてバカでかい音を出すか・・・。大きな音を出すには、力を込めるのではなく、抜きます。筋トレで鍛え上げた腕で思い切りバットを振り回しても、当らなければファールチップなのは指も同じこと。力を抜いて、リラックスして、バットの真っ芯で捕えて、軽く振り抜くだけで、外野に突き抜けるヒットになる様な音の演奏が理想です。どんな弦楽器でも、熟練者達人はそうなっています。その秘訣は指ではなく歌心。歌心を鍛えれば、故マヌエル・カーノ先生の足元に少しは近づくことも出来ます。
これについては、スペインギター週間コルムナで毎週の様に取り上げています(帰国後執筆中止)。要約すれば、”指より歌心を鍛え、私の指に勝手にギターを弾いてもらう“ことにより、”正しいフォームで指を鍛え、私が指を動かしてギターを弾く“日本の常識は世界の非常識に挑戦します。ご愛読下さい。ファールチップからヒットに変わるギター人生をお約束します。
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究極のところ、歌心に富む人程、ギターを見る目があると言えます。当サイトの様々な解説も、結局は歌心の一事に帰着します。少々乱暴な要約ですが、実は、これ以上の真理はありません。読者の皆さん、歌心を鍛えればギター演奏も上達し、ギターを見る目も耳も養われて来ます。
日本の常識は世界の非常識(ギター選択編)!?
◆ 公然と中国製スペインギターを本物のスペインギターとして販売する
日本ではどんな商品でも原産国表示がありますが、ギター業界に関しては、原産国表示義務はないのでしょうか? 逆に、質問したい位です。
◆ 仕上げと外見に異常に拘る
世界を見渡せば、日本人ほど細かい気配りの民族はいません。饅頭や煎餅の包装一つにも、購入者や贈呈先への心遣いが感じられますが、同時に、見映え重視と言う、どこかピンボケの価値観が日本人にはあると言えなくもありません。例えば、ハンドバックも車も、最後の決め手はデザインだとか、背が高くてハンサムで次男で高級取りでと言った具合です。ギターも同じです。どんなにフィニッシュが良くても、鳴らなければピンボケギターなのです。まずは音色です。
◆ 有名ブランドのスペインギターが欲しい!!
確かに、秀作の正真正銘有名ブランドスペインギターもあるでしょうが、読者の想像を遥かに超えた数の、有名ブランド中国製スペインギターが日本にはあります(2008年執筆)。ブランド名や外見に捕らわれず、自らの意見をしっかり持って、名より実を選んで下さい。そのための当サイトです。
◆ スペインギターは高いものだとの思い込み
国策で円安ユーロ高の今日、日本におけるスペインギターの価格にも、それが如実に反映されていますが、当サイトをご覧になれば、必ずしも、そうではないことがお分かり頂けます(2008年執筆)。
しかし(以下2024年6月執筆)、 歴史的円安で、アベノミクス前は1万円=99ユーロでしたが、1万円=58ユーロしかならない今日、確かに、スペイン製ギターの原価は格段に上がっており、日本での最終価格もこれを反映せざるを得ませんが、それでも、セファルディはヨーロッパ価格+αです。
逆に、これだけの超円安時代に安いスペイン製ギターが日本で見受けられるなら、それは中国製スペインギターでしかあり得ません。現に、当店にもその筋からのカタログが送られて来ました。確かに、目の玉が飛び出るほど安く、節操のないギター店主なら、すぐ飛びつくだろうと思わざるを得ないほど格安の原価で、スペイン有名メーカーのラベルでした。
◆ それ故、安いと却って信用されない
これはギターに限らず日本人の悪い癖かも知れません。セファルディはヨーロッパ価格+αです。舶来ギターはかなり高いものだ(当然、安くはあり得ませんが)との先入観はお捨て下さい。
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まだまだありそうな日本の常識は世界の非常識(ギター選択編)ですが、突き詰めれば、これらの著しい非常識は、総て歌心の欠如が根底にある、慢性的副作用だと言えます。
新品ギターも使用木材は古い方がいい!?
手工ギターの木材は最低10年寝かしてから使います。私の経験や知り合いの製作家の意見でも、必ずしも、素材自体の良し悪しではなく、この木材の古さがギターの鳴りを一番決定付けます。
木には、人間の毛穴同様、気孔なるものがあり、年数の経過と共に、気孔内の樹液が乾燥し、音の通り、音質が良くなります。つまり、寝かせば寝かす程、味とコクを増すワインの様なもので、こうなると、経過年数にお金を払うとも言えますし、購入者もまた、それだけの年数を待たなくても良いメリットがあります。前述のアントニオ・デ・トーレスのギターや、ストラジバリウスのバイオリンやチェロが現在凄い音がしているのも、名工の腕前は勿論、年月の経過も大いに影響しています。
とは言え、使用木材の経過年数など、製作家に聞かなければ分かりませんが、セファルディからご紹介する手工ギターは、総て、十分年月の経った乾いた木材を使用していることをお約束します。
もっとも、量産工場では10年待つ訳にはいかず、家具工場と同じく、機械で無理矢理乾燥させます。この自然乾燥と機械乾燥の差が、手工ギターと普及モデルの音質に決定的な差を生じます。
スペインギターは魚よりワイン、鮮度より年期で選ぶ
使用木材は古い方がいいなら、ギターも古い方がいいはずです。音質重視の分かっている人ほど、一般的に、こう言うギターの見方をしますし、分かっていない人ほど、新品や見映えに拘ります。新しいのと古いのと全く同じ商品が2つあれば、新しい方を選ぶのが消費者心理かも知れませんし、例えば、魚なら確かにそうです。しかし、ワインなら、古臭い10年物より、新しい1年物の方が良いと本気で言えば笑われます。実は、ギターも同じことなのです。
魚は鮮度でも、ギターの音色は鮮度ではなく、年期が決め手です。例えば、あるギターが3年間売れなかったとして、これを固定概念で、3年間誰も欲しがらなかった悪いギターだと決め付けることも出来ますが、おかげで、このギターは3年間待つ必要がない、3年経ったから結構いい音がしてるじゃないか、いや、3年も経ってこの音じゃダメだな、と見切りを付けることも出来ます。
例えば、同じ製作家のギターが2本あり、1本は新品、もう1本も新品ですが、3年前の作だとします。新旧に係わらず、音色のいい方を選べばいいだけです。何も難しく考える必要はありません。
売れ残りスペインギターの盲点
普通、何でも売れ残りは良い印象を持たれないでしょう(前項の続き)。皆が良い物を持って行った後の残り物だとの潜在意識が働きます。スーパーの惣菜なら、閉店前に値引きになりますが、ギターの場合はどうでしょう。次の3通りが考えられる様に思われます。
① 唯、単に出来が良くなかったから売れ残ったギター。
② 発売当初は鳴らず、売れ残ったが、今は鳴っているギターで、まだ売れていないギター。特に表面板”松“材なら、これは大いにあり得ます。良い耳を持っていれば、今は出来立てで鳴ってはいないが、将来は鳴りそうな響き方か、それとも、やはり鳴らなさそうか、利くことも可能でしょう。
③ 秀作だが、高価故に、売れなかったギター。
従って、”皆が良い物を持って行った後の売れ残り“だとの潜在意識が当っているのは①のみです。セファルディからご紹介する中に何年か前のギターがあるとすれば、それは②③の場合、特に手工ギターの場合は③であることをお約束します。
外見によるギター選択!?
セファルディでは、前項①の出来とは、主にギターの音色の良し悪しを意味しますが、どうやら、日本人にとっては、木工としての見映えや外見の仕上げも、かなりの比重を占める様です。現実問題として、車も服も何でも、カッコいい方が売れ筋でしょうし、特に、日本人にはこの傾向が顕著に見受けられます。例えば、このギター格好いい(どう言う判断基準でしょうか)!? サウンドホールの模様がキレイ(装飾品なら話は分かりますが)!? 小さいギターの方がカワイイ(意味不明)!? ピカピカ光っている方がいい(却って安物の証)!? と言った具合です。読者は如何でしょうか?
そこで、ギターのフィニッシュですが、おそらく、世界一几帳面な国民性の日本人と、おそらく、ヨーロッパ一いい加減な性格のスペイン人(!?)の違いをそのまま反映して、あくまで一般論としてですが、国産ギターの方がスペインギターより気配りが利いていることは確かです。肝心の音色ではなく、外見に関してはです。音色さえ良ければ、見映えなどどうでもいいと言外に言っている訳ではありませんが、率直な意見として、こと外見に関しては、手工ギターに至るまで、国産ギターほど気配りが行き届いていないスペインギターも多々あります。これが現実です。但し、これは外見に拘る日本人だけの虫眼鏡に引っ掛かる繊細な印象ですので、最後は、外見でもフィニッシュでもなく、スペインギターのスペインギターらしい、その音色で、スペインギターを正しく選択して下さい。
繰り返しになりますが、セファルディでは、製作家がこれは鳴ると判断すれば、少々見た目の良くない木材でも良しとします。外見の良し悪しに係わらず、それが自然の産物であれば、ギターにとって悪いはずがないのです。前述のアントニオ・デ・トーレスの名器がそれを証明して余りあります。
それでも外見が大事、しかし・・・
どんなに気を付けても、新車も、買ったばかりの家具も家電も、遅かれ早かれ汚れたり、キズ付いたりするのが宿命です。ギターもケースの出し入れの際ぶつけ、不意に立ち上がって椅子に接触。しまったと思った条件反射で譜面台にもニアミス。ブリッジの穴に弦を通して結ぶ際、爪で表面板にキズを付け、糸巻きに通す際、弦がヘッドに擦って掠りキズ。一生懸命練習したはいいが、気が付けば、裏板にはワイシャツのボタンとベルトの金具の跡・・・。
どんなフィニッシュの完璧な新品ギターも名器も、遅かれ早かれ、無傷ではいられません。ギターをお持ちの読者なら、良くお分かりのはずです。それ故、この意味では、ギター購入の際に、外見やフィニッシュに特別拘る必要性はありません。私の経験でも、素人ほど見栄えでギターを選び、玄人ほど音色が決め手です。スペインギターは音色で利いて下さい。
それでも、外見に拘り続けると、次の様な事が起こり得ます。
風評被害によるギター選択
グラナダ在住の頃、日本から“オレンジ色のフラメンコギターが欲しい”との問い合わせがありました。ピストル塗装の中でも、最も安価なオレンジ色のポリウレタン塗装は、作りの粗い最も安価な普及モデルの塗装方法です。早い話が、雑な作り(木と木の接合部分の隙間など)やキズを隠すための、やや濃い目のオレンジ色なのです。日本にも多く輸入されている、スペインの有名フラメンコギターメーカーが、相当高いモデルにまで、こんな安い塗装を施しているので、無知な消費者は、よりによって、この最も安いオレンジ色こそ、高級ギターの証とさえ思い込むに至ります。
幼少期なら、無知は無邪気で済むかも知れませんが、それ以降は無知だと、まず、損をするのが世の常です。ましてや、大枚叩いてスペイン製手工ギターを購入するとなれば、当サイトを熟読してからでも決して遅くはありません。
それでもキレイなスペインギターがいい!?
今一意味不明ですが、見た目のキレイさなら迷わずピストル途装の普及モデルが一番です。セラック途装よりキズが付き難く、家具の艶出しスプレーで拭けば新品同然。セラック途装や手工ギターに音質は劣りますが、それなりに良くなるギターをお送りします。ギター料金一覧表の塗装欄[ピストル]表示の68,000~198,000円のギターです。
価格によるギター選択
とは言え、いくら良いギターを見定めるギター選択眼が養われたとしても、先立つものがなければ購入出来ないとすれば、値札を見ながら予算内のギターを品定めるのも、確かに現実的なギター選考基準です。以下、ギター料金一覧表と対照しながら、現実的に見て行きましょう。
★ 安けりゃ何でもいい方 迷わず、その辺の安価なギターをお求め下さい。但し、今日、ギターに限らず、様々な楽器の安いランクは、国産、輸入品を問わず、中国製です。有名メーカー程そうです。これが現実です。日本で市販のスペインギターも、15万円以下は中国製スペインギターとの、日本国内の確かな筋から聞いたのは、もう20年前のこと。勿論、ギターの片隅にMade in Chinaとも何とも書いてありません。更に、2024年現在、異常な歴史的円安もあり、その”15万円以下”が、”その2倍、3倍、4倍以下”となっていても、何の不思議もありません。しかも、日本人購入者が安いと思って支払った代金の一部は中国政府の税金となり、日本を狙う武器や国家犯罪に使われます。
★ それでも、なるべく安いスペインギターがいい方 クラシックギターは4A&8&10-s、フラメンコギターは4AF&15&10ARからお求め下さい。普及モデル(合板)ですが、それなりに鳴るように研究された安価なギターです。弦長650&630mm。勿論、スペイン製スペインギターです。
★ スペイン製手工ギターは欲しいが、予算がない方 普及モデル(単板)をお選び下さい。クラシックギターはギター料金一覧表のG6-s&22C-s&28-s&146-s(スペインの白いギター)。フラメンコギターはG6F-s&24-s&22-s&ARF(スペインの白いフラメンコギター)。ご覧の様にセファルディの普及モデル(単板)は一番高価でも198,000円。セラック手塗りでも280,000円(GLシリーズ)。ブランド化されたポリウレタンピストル塗装のスペイン製普及モデルが数十万円から時には100万円を越える日本において、これはスペイン製普及モデル(単板)としてはあり得ない価格です。振興会として、高い安いを論じるのが主旨ではありませんが、これは明らかにお買い得です。
★スペイン製手工ギターがこんな料金で果たして本物かと思う方 もちろん、本物です!! これは以前から良くある質問ですが、こう質問をする人は、結構ギター通が故に、日本のスペイン製手工ギターの相場を良く知っており、また、長年、日本的相場に洗脳されて来た人とも言えます。輸入バイオリンは百万単位だと、日本の楽器商から長年洗脳されて来た日本人が、ある日、イタリアに行って、愕然とするのと同じです。ですから、その固定概念から、セファルディがヨーロッパ価格+αで紹介しても、却って疑われてしまうのであれば、人間の先入観とは厄介なものです。
その固定概念と先入観に、ヨーロッパ価格+α で挑戦するのもセファルディの使命です。
歴史的円安の時代、総ての輸入品の価格も物価も急上昇している2024年現在、いくら日本では無名の製作家とは言え、スペイン製正真正銘手工ギターが400,000円から。今日、日本でのスペイン製手工ギターの市価は最低でも100万円以上のご時世に、あり得ない価格でご紹介します。
価格差によるギター選択
どんな業界でも、自らの商品を良く言わない人はいない訳ですが、7万円と70万円のギターが同様に良いはずはありません。勿論、それぞれの料金に応じた良いギターだとの認識の元に、ギター料金一覧表からお選び下さい。
現金な話でスペインギター選択☆日本市場との比較 前項&前々項の総括
※ セファルディでは、スペイン製単板ギターは165,000円から ⇔ 日本で”これ以下の同製品”があるならば、異常な歴史的円安の今日、それは中国製スペインギターの可能性大です。
※ セファルディでは、スペイン製セラック塗装ギターは280,000円から ⇔ 日本の市価ではおよそ100万円から(但し、100万円以上でもセラックではなく、ピストル塗装のものも多し)と推定。
※ セファルディでは、スペイン製手工ギターは400,000円から ⇔ 日本の市価では、歴史的円安の今日、最低90万円以上と推定。
平均して日本の市価の7割前後ではないかと推察します。
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現実には、購入希望者は予算を片手に、予算内のギターを捜す事になる訳ですが、ご覧の様に、セファルディでは同じご予算でも、日本の市価より遥かに使い出があることをお約束します。ギター料金一覧表の各ギターの料金には、こう言う意味があることを再認識して下さい。それでも…。
え~、高~い!?
ギターについて知らない人ほど、セファルディの料金を聞いてこう言います!?
え~、そんなに安くていいんですか!?
ギターについて知っている人ほど、セファルディの料金を聞いてこう言います!?
スペインギター価格に無感覚な方は湯呑をどうぞ!?
上の2項目を湯呑で説明:お茶を飲むだけなら、中国製安物コップで十分と思っている人に、名人の手作り湯呑が1個1万円と言えば、条件反射で”え~、高い!?“となりますが、焼物が少しは分かる人なら、”え~、そんなに安いんですか!?“と言うでしょう。この様な場合、日本語では”それは主観の違いです”と言うかも知れませんが、中国製の大量生産のコップが安くて、名人の湯呑が遥かに高いことは万人に共通の道理であり、道理ならそれは主観ではなく、日本語では客観と言います。この客観を無理やり捻じ曲げて、自らの都合の良い主観を作り上げようとすれば、スペインギター界でも、中国製安物コップをブランド化したり、別の作者のサインを入れたり、原産国非表示の中国製コップを自社製として販売するなどの蛮行が罷り通り、その輸入先の日本でも蛮行が罷り通ります。
セファルディでは、私の好みと主観に基づく独特のスペインギターをご紹介しているつもりですが、普及モデルは普及モデルなりに、手工ギターは手工ギターなりに、ヨーロッパ価格+αと言う客観的価値観でお届けします。フェアープレーの精神を欠いた、おかしな箔付けは一切しません。普及モデル&手工ギター共に、純スペインギターとしては、日本国内の通り相場よりは安い価格設定です。
スペインギター選択は3段ロケットから2段ロケット時代へ
✿現在の日本におけるスペイン輸入ギターの市価を鑑みれば、その選択基準は、ある意味、次の3段ロケット方式だとも言えます。奏者の初中高のレベルにギター価格も比例していると言えますが…。
[15万円前後の普及モデル ⇒ 50万円前後の中クラスギター(実際は箔付けされた普及モデル) ⇒ 100万円以上の高級手工ギター(中にはブランド化された普及モデル、影武者手工ギターあり)]
✿片や、今まで見て来たセファルディの価格によれば、次の2段ロケット方式も十分可能です。
[68,000~280,000円の普及モデル ⇒ 400,000円以上の正真正銘手工ギター]
数十万円でスペイン製手工ギターをと思っていらっしゃる方。その予算では、ましてや、歴史的円安の今日、日本ではいくらスペイン製手工ギターと言われても、その実ブランド化された普及モデルです。セファルディでは400,000円から正真正銘スペイン製手工ギターをお届けします。
例えば、本格的にギターに取り組みたいので、もう少し高価な2本目をと願っている方。セファルディでは、今までの”2段目ロケット用に箔付けされたスペイン製普及モデル”の予算で、正真正銘スペイン製手工ギターをご紹介します。
やる気のある方のスペインギター選択
初心者&初級者 迷わず、最初から単板ギターをお選び下さい。セラック塗装なら更に宜しいです。
中級者&上級者 迷わず、手工ギターをお選び下さい。
名より実を取るスペインギター選択
確かに、ハカランダ材の秀作なら、他の材質のギターに優るでしょうが、駄作なら、くるみ材の秀作に遥かに劣ります。名工も、何本も作っている中にはハズレもあり、駆け出しの製作家でも、たまに当たりは出ます。製作家の有名無名や材質がどうこうではなく、名より実を取ることを心がけて下さい。セファルディでは、有名無名製作家に係わらず、実の伴うスペインギターをご紹介します。
気軽なセカンドギターに
同じ曲でも、別のギターや違った木材のギターで弾けば、また、違った気分で歌心の新境地が見出せます。ギターを始めて一段落したら、2本目3本目と視野を広げて行くのも、また、楽しからずやです。必ず、ギターを味わう味覚と演奏にも幅が出て来ます。
日本の通り相場なら、決して気楽にとは言えないスペインギターですが、セファルディでは普及モデルは高くても198,000円(&280,000円セラック手塗りGLシリーズ) 。高級手工ギターも400,000円から。しかも、様々な木材のギターを取り揃えています。それぞれの音色でスペインの香りをお楽しみ下さい。
選択の参考までに、一般的に、音の重厚さ~軽快さは[ハカランダ(中南米ローズ)>ローズ>虎目かえで>くるみ>糸杉(シプレス)>アフリカ糸杉>アベバイ]の順でしょう。但し、これはあくまで一般論です。実際に完成したギターの音色がこれに比例しないことは、散々述べて来た通りです。
謎の空白 19.8~28~40万円!?
前項の補足:198,000円(一番高価なピストル塗装の普及モデル)~280,000円(セラック手塗りの一番高価な普及モデル)~400,000円(一番安い手工ギター)ですが、セファルディのギター料金一覧表を見ると、この中間の料金のギターが一本もないことがお分かり頂けます。これは取りも直さず、普及モデルにおかしな箔付けをして高く売る様なことをせず、普及モデル&手工ギター共に、ヨーロッパ価格+αで日本に紹介する基本方針を口先だけでなく実践したもの、それ故の、この料金帯の空白とご理解下さい。
スペイン製普及モデルは198,000円まで。セッラク手塗りでも280,000円。スペイン製手工ギターは400,000円から。ただそれだけのことです。
女性や手の小さな方のためのスペインギター選択
普及モデルならギター料金一覧表から[弦長650&630mm]の表示のあるものをお選び下さい。手工ギターもネックの幅を薄くした、弾き易いサイズに仕上げてあります。また、やる気のある方はベルンド・マルティン作タレガモデル(弦長640㎜)をお選び下さい。小さいボディからは考えられない凄い音がします。
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以上、セファルディ独特の観点から、正しいスペインギター選択の秘訣をなるべく分かり易くも、核心を突きつつ、詳しく観て来ました。これを通じて、1人でも多くの日本人ギター愛好家が、真に価値あるスペインギターと出会うきっかけとなれれば幸いです。ご紹介するスペインギターの価格ではなく、スペインギター振興会の主旨に賛同して下さる様、お願い致します(代表)。
スペインギター[職人&製作所]紹介
セファルディ提携のスペイン人ギター職人(全員ではありません)、及び、製作所をご紹介します。
フランシスコ・ムニョス(グラナダ/ギター製作界の次代の旗手)
フランシスコ・ムニョスは本名フランシスコ・ハビエル・ムニョス・アルバ。前2つが名前(欧米人特有の複合名)で、第1名字(父方第1名字)、第2名字(母方第1名字)と続きます。2018年までFrancisco Alba(フランシスコ・アルバ)のラベルで製作して来ましたが、同年8月、タイ、メキシコ、アメリカ、スペイン、フランス、日本、オランダ、中国、イタリアより23人のギター制作家が参加した国際ギター製作コンクール、アントニオ・マリン・モンテロ杯で見事優勝。21世紀の名工列伝に実力で名を連ねたこの機会に、ラベルをFrancisco Muñoz(フランシスコ・ムニョス)と改めました。
写真(click拡大)は左から表彰状(中央に赤字でAntonio Marin Montero,その下に黒字の斜体でFrancisco Muñoz Alba,その下にPRIMER PREMIO”優勝”)、中央に表彰状を手にするアントニオ・マリン・モンテロ氏、右は表彰状の授与式でのお二人。
ご覧の様に、スペイン人は、父親の第1名字を第1名字、母親の第1名字を第2名字とします。つまり、まだ幼い氏の息子の第1名字は氏の第2名字のアルバではなく、第1名字のムニョス(&第2名字は母親の第1名字)となり、息子の氏名にアルバ姓は継承されません。そこで、将来、息子がギター製作家となった場合、氏の名声を受け継げるよう、今回の受賞を機に、ラベルの氏名の名字をアルバから、親子共通の名字のムニョスに変更しました。親心です。私はグラナダ在住時代より、氏の第1号ギターから15年間、フランシスコ・アルバのギターを日本に紹介して来ましたが、今後は、フランシスコ・ムニョスのラベルのギターを日本に紹介して行きます。氏のギターがセファルディのメインです。
フランシスコ・ムニョスは1977年、ギターの名曲”アルハンブラ(宮殿)の想い出”で有名な南スペイン・グラナダ市のアルバイシン地区出身。20代半ばで製作し始めた頃から、新人とは思えない艶のある音質のギターを生み出し、私は目を掛けていました。その実力の割に、今回の受賞で世に出たのが41歳と遅かったのは、家族親族にギター製作家がおらず、父親が有名製作家で、すぐに世に認知される二世製作家の境遇ではなく、名を売ることが困難だったからです。
氏はギター製作のみならず、人並み外れて手先が器用で、宝石細工、大工仕事、建具、家具作りから、水道、電気、時計、パソコン、携帯電話に至るまで、何でも器用に細工、修理します(私もグラナダ在住時代、ギター以外でも色々お世話になりました)。子供の頃も、玩具を買ってもらうと、必ず分解して、仕組みを解明しなければ気が済まなかったそうです。氏のギターと今回の受賞は、こうした比類なき才能とセンスの結晶でもあります。
氏の作品は、それまでにも、独特の”乾いた重さ“の角を取った様な円やかさに加え、バカでかい音量でしたが、更に、独自の力木の配置など、研究を重ねた新しい構造のギターで今回の受賞を果たしました。加えて、スペイン人でありながら、ジプシーの血(祖母)を引くフランシスコ・ムニョスの独特の感性が、他のスペイン人製作家とは一線画す、この独特の乾いた艶のある作風を生み出しています。また、音量音質のみならず、木製工芸品としてもまた、その優美なフィニッシュは氏の類稀な木工センスの良さと卓越した手先の器用さを感じさせてくれます。
さて、アントニオ・マリン・モンテロ杯は、グラナダの世界的名工アントニオ・マリン・モンテロ氏のこれまでの業績を称えたもので、既に高齢のマリン氏の名を後世に残し、若い世代の製作家を啓蒙する主旨です。故マヌエル・カーノ先生はギター取集家としても有名でしたが、私もレッスンを受けたグラナダ市郊外の自宅のコレクションには、マリン氏のギターが時代順に3本ありました。1988年頃だったでしょうか、先生は私の前で3本弾き比べ、「時代を追って良く鳴っている。これが製作家の進化だ。後の連中は皆、停滞している。」と絶賛しました。
そのマリン氏も既に91歳。今後のグラナダのギター製作界を展望するに当たり、三大巨頭はと言えば、マリン氏、そして、名実共にマリン氏を凌ぐ、甥のパコ・サンティアゴ・マリン氏も既に76歳、そして、私が個人的にグラナダ一の名工だと思っていたベルンド・マルティン氏ですが、マルティン氏は2018年没。息子のルカス・マルティンの中南米ローズのギターが今、手元に有りますが、音もフィニッシュも父親には劣ります。この3人に、グラナダ在住当時、私も良くお世話になったアントニオ・ラジャ・パルド氏が続きますが、2022年72歳没。息子のアントニオ・ラジャ・フェレールのギターは、私は2本目から買っていますが、父親には劣ります。
以上の現状を鑑みれば、グラナダのギター製作界の次代の旗手は、私は個人的にフランシスコ・ムニョスだと確信しています。音量音質もですが、他の誰よりも木工センスの良さを感じさせます。何より、今も若手製作家が助言を求めてマリン氏を訪れる中、マリン氏自身がフランシスコ・ムニョスに一番目を掛けている現実です。
フランシスコ・ムニョスはギター製作の手解きをビクトル・ディアスから受けましたが、手先の器用な氏は、第1号を共同制作して後(私が購入しました)、すぐに独立して、アントニオ・マリン・モンテロ氏の工房の近くに工房を構えました。両者に師弟関係はありませんが、マリン氏もまた、フランシスコ・ムニョスの才能に早くから気付き、他のどの若手の製作家より目を掛け、折に触れて自らの体験やアドバイスを語っていたのを、当時グラナダに住んでいた私も良く覚えています。
今回、フランシスコ・ムニョスが受賞したギターの構造は、長年研究して、何本も試作した挙句の構造です。この話を直接聞きながら、私は近代ギターの父アントニオ・デ・トーレスのひ孫、故フアン・フランシスコ・サルバド-ル・ヒメネス氏(2010年没)を想い出しました。マヌエル・カーノ先生と先輩の吉川二郎氏の繋がりで、私もひ孫とは親しくさせて頂き、未だに曽祖父トーレスの工具が保存されている、アルメリア市郊外の自宅の工房にも何度か伺いました。ある時、ひ孫は、製作中の表面板の説明をしてくれました。正直、専門的過ぎて、スペイン語の細部までは分かりませんでしたが、力木の材質、形状、サイズ、その配置の意味、通常より遥かにラウンドした表面板、その作成方法など、懸命に説明してくれました。因みに、ひ孫は、側面板は熱ではなく、水に浸して曲げていました。
フランシスコ・ムニョスのギターは、その同様の探求心の賜物です。詳細や(((音源)))は次に列挙する各ギターのページをご覧下さい。
クラシックギター✿FAE(黒檀*Antonio Marin Montero杯受賞ギター):FAJ(中南米ローズ):FAAR(虎目かえで):FAI(ローズ):FAIa(ローズ,側面板にホール):FARC(糸杉.シプレス製ロマンティックギター):FARJ(中南米ローズ製ロマンティックギター):FAR(中南米ローズ製ロマンティックギター小)。
フラメンコギター✿FAC(糸杉.シプレス):FAIF(ローズ)。
さて、今治市は遠い方には遠いですが、是非とも、祖国日本全国の方々にフランシスコ・ムニョスのギターを試奏して頂きたいと願っています。そこで、愛媛県外の方にお知らせです。愛媛県今治市のセファルディにご来店の上、フランシスコ・ムニョスのギターお買い上げの方には、往復の交通費を定価から差し引きます(お1人様のみ,車ならガソリン代+高速料金)。まず、在庫の有無をお尋ね下さい(0898-35-3679, sefardi_guitarra@adagio.ocn.ne.jp)。絶景の瀬戸内海のしまなみ海道(今治-尾道)、タオル美術館(今治はタオル生産日本一)、加計学園獣医学部など、観光もかねておいで下さい。道後温泉の松山まではJR特急で35分(車で1時間)。今治への陸路、空路、海路による詳細なアクセス情報はご来店の皆様へをご覧下さい。また、遠方からおいでの方には、金曜日夕刻~土曜日夕刻以外の時間帯であれば、何曜日の何時でも、早朝でも深夜でも店内対応致します(同ページ参照)。
フランシスコ・サンチェス
スペイン・セビージャ県のオリーブ畑に囲まれた片田舎で、黙々とギター作りに励む孤高の製作家。趣味でギターを作っていた大工の父から、少年期に手ほどきを受けた以外は全くの独学。
生涯目にした5本のマルセロ・バルベロ一世のギター(クラシック1&フラメンコ4本)に感銘を受け、表面板や力木など、その工法を多いに取り入れ、ハカランダ、ローズ、糸杉は勿論、更なる研究のため、通常、ギターには無縁の様々な木材での製作にも取り組む。
店長とは同い年であり、セファルディの良き理解者でもある。セビージャ県出身。製作歴35年。
以上は2015年頃の文章ですが、近年、フランシスコ・サンチェス氏は、クラシックギター製作の一方で、スペインのフラメンコギター界で極めて著名となり、2022年より、大手フラメンコギターサイトSolera Flamencaの専属顧問となり、2024年現時点、氏のギター小売価格は、読者がこのスペインのサイトをclickした時点でどう変わっているかは分かりませんが、ご覧の様に、6800ユーロ。幾ら歴史的円安時代とは言え、2024年6月時点の交換レートで換算すると、何と約117万円。スペインで国内での小売値です。これを日本に輸入すると、関税+送料が上増しされます。
今のところ、長い付き合いなので、まあまあ今回は…と卸値を抑えてもらってはいますが、聞けば、このSolera Flamencaへの卸値の方が、私へのそれより、遙かに高いです。友達なので…と言うのも、そう遠くない時点で終わるのかなと予感しています。
従いまして、以下のフランシスコ・サンチェス氏のギターは、今後、クラシック、フラメンコを問わず、かなりの高額となり、遂に、私が金銭的に付いて行けなくなった時が来れば、氏と私の長年のビジネス関係も終焉を迎え、氏のギターも日本市場から消えることになります。
フランシスコ・サンチェスのギターの詳細や(((音源)))は、以下の各ギターのページをご覧下さい。
クラシックギター✿FSA(アベバイ)&ローズ新作2024末入荷予定。
フラメンコギター✿FSC(糸杉.シプレス&ドイツ松):FSG(糸杉.シプレス&カナダ杉):FSCA(アフリカ糸杉&ドイツ松):FSja(ハトバ&ドイツ松)。
フェルナンド・モレーノ
フェルナンド・モレーノはカディスのギター工場バレリアーノ・ベルナールのグラナダ店(現在は消滅)の雇われ店長時代、故アントニオ・アリサ、アントニオ・マリン、ビクトル・ディアスの師事を仰いだ後、故郷セビージャ市郊外に工房を構えている。フラメンコギター専門の若手製作家。
温厚な性格とは全く裏腹な、マシンガンを思わせる、鋭いが、野太く乾いた音色のフラメンコギターは、確実に地元のスペイン人ギタリストに浸透しています。製作歴 20 年。
プルデンシオ・サエス(Prudencio Saez)社
1963年バレンシアで創設されたギター製作所。セファルディの各種普及モデルを担当。
現在は3代目のプルデンシオ・サエス・マリンが祖父、父の後を継ぐ。
現在、多数の有名スペインギターメーカーが中国に作らせ、自社製として世界に売り捌く中、スペイン製に拘り続け、孤軍奮闘する。冒頭の写真の如く、生前のパコ・デ・ルシアと兄ラモン・デ・アルへシラスとは親交が深かった(下写真3枚目)。
プルデンシオ・サエス社のギターは世界中で高評価を得ています。
https://www.youtube.com/watch?v=f6Lxl1tcR1s
https://www.youtube.com/watch?v=SpIHOOvky4k
なお、プルデンシオ・サエス・マリン現社長はスペインサッカー元一部リーグ選手。ギターメーカーとしては異色の経歴です。1992年ラージョ・バジェカーノ所属時代には、レアル・マドリードに2-0で勝利しています。写真左はスペインサッカー選手名鑑より。その右前列左から5人目(真後ろは1998年にスペイン代表チーム監督となるカマチョ氏)。
Sefardi_ギター料金一覧表&番外ギター
プルデンシオ・サエス社 クラシックギター | |||||
弦長 ⇒ | 650mm | 630mm | |||
品番 | 材質 | 塗装 ピストル | セラック | ピストル | セラック |
4A | サペリ合板 | 68,000円 | / | / | / |
8 | モンゴイ合板 | 118,000円 | / | / | / |
10-s | 黒色虎目かえで合板 | 125,000円 | / | 125,000円 | / |
G6-s | くるみ単板 | 165,000円 | / | 165,000円 | / |
GL06 | / | 280,000円 | / | 280,000円 | |
22C-s | 糸杉(シプレス)単板 | 188,000円 | / | / | / |
GL36C | / | 280,000円 | / | / | |
28-s | ローズ単板 | 198,000円 | / | 198,000円 | / |
GL138 | / | 280,000円 | / | 280,000円 | |
146-s | 虎目かえで単板 | 188,000円 | スペインの白いギター:630mmも有り |
スペイン製 手工クラシックギター[総単板] | |||||
Estudio:3ホール | ローズ | ディアス・オルティス兄弟 | セラック | 650mm | 480,000円 |
API | ローズ | アントニオ・ペレス | セラック | 650mm | 400,000円 |
APN | スペインくるみ | アントニオ・ペレス | セラック | 650mm | 400,000円 |
FSA | アベバイ | フランシスコ・サンチェス | ニトロ15g | 650mm | 650,000円 |
JRPN | くるみ | フアン・ロマン・パディージャ | セラック | 650mm | 900,000円 |
FAI | ローズ | フランシスコ・ムニョス | セラック | 650mm | 1,000,000円 |
FAIa | ローズ | フランシスコ・ムニョス | セラック | 650mm | 750,000円 |
FAE | 黒檀 | フランシスコ・ムニョス | セラック | 650mm | 1,400,000円 |
FAJ | 中南米ローズ | フランシスコ・ムニョス | セラック | 650mm | 1,400,000円 |
FAR | 中南米ローズ | フランシスコ・ムニョス | セラック | 640mm | 1,400,000円 |
FARJ | 中南米ローズ | フランシスコ・ムニョス | セラック | 640mm | 1,400,000円 |
FARC | 糸杉(シプレス) | フランシスコ・ムニョス | セラック | 640mm | 750,000円 |
FAAR | 虎目かえで | フランシスコ・ムニョス | セラック | 650mm | 1,000,000円 |
VDAR | 虎目かえで | ビクトル・ディアス | セラック | 650mm | 700,000円 |
MFCC | ココボーロ | マリオ・フェルナンデス | セラック | 650mm | 920,000円 |
GPCJ | 中南米ローズ | グラシリアーノ・ペレス | セラック | 650mm | 850,000円 |
RPM | モンゴイ | アントニオ・ラジャ・パルド | セラック | 650mm | 850,000円 |
RPMT | モンゴイ | アントニオ・ラジャ・パルド トーレスモデル |
セラック | 645mm | 850,000円 |
RHJ | 中南米ローズ | アントニオ・ラジャ・フェレール | セラック | 650mm | 1,000,000円 |
RHJT | 中南米ローズ | アントニオ・ラジャ・フェレール | セラック | 645mm | 1,000,000円 |
BMJ | 中南米ローズ | ベルンド・マルティン | セラック | 650mm | 1,500,000円 |
BMJT | 中南米ローズ | ベルンド・マルティン タレガモデル |
セラック | 640mm | 1,800,000円 |
プルデンシオ・サエス社 フラメンコギター | |||||
弦長 ⇒ | 650mm | 630mm | |||
品番 | 材質 | 塗装 ピストル | セラック | ピストル | セラック |
4AF | サペリ合板 | 68,000円 | / | 68,000円 | / |
15 | ブリーナ合板 | 130,000円 | / | 130,000円 | / |
10AR | 虎目かえで合板 | 135,000円 | / | / | / |
G6F-s | くるみ単板 |
165,000円 | / | 165,000円 | / |
GL06F | / | 280,000円 | / | 280,000円 | |
22-s | 糸杉(シプレス)単板 | 188,000円 | / | 188,000円 | / |
GL36 | / | 280,000円 | / | 280,000円 | |
ARF | 虎目かえで単板 | 188,000円 | スペインの白いフラメンコギター:630mmも有り | ||
GL55 | / | 280,000円 | / | / | |
24-s | ローズ単板 | 198,000円 | / | 198,000円 | / |
GL18 | / | 280,000円 | / | / |
スペイン製 手工フラメンコギター[総単板] | |||||
APC | 糸杉(シプレス) | アントニオ・ペレス | セラック | 650mm | 400,000円 |
APIF | ローズ | アントニオ・ペレス | セラック | 650mm | 400,000円 |
APPF | パドウック | アントニオ・ペレス | セラック | 650mm | 400,000円 |
FAC | 糸杉(シプレス) | フランシスコ・ムニョス | セラック | 650mm | 1,000,000円 |
FAIF | ローズ | フランシスコ・ムニョス | セラック | 650mm | 1,000,000円 |
FMIF | ローズ | フェルナンド・モレーノ | セラック | 650mm | 900,000円 |
FMC | 糸杉(シプレス) | フェルナンド・モレーノ | セラック | 650mm | 900,000円 |
VDC | 糸杉(シプレス) | ビクトル・ディアス | セラック | 650mm | 700,000円 |
FSC | 糸杉(シプレス) | フランシスコ・サンチェス | セラック | 650mm | 1,000,000円 |
FSG | 糸杉(シプレス) | フランシスコ・サンチェス | セラック | 650mm | 1,000,000円 |
FSCA | アフリカ糸杉 | フランシスコ・サンチェス | セラック | 650mm | 1,000,000円 |
FSJa | ハトバ | フランシスコ・サンチェス | セラック | 650mm | 650,000円 |
番外編:スペイン製クラシック&フラメンコギター[総単板] |
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以下は、店長がスペイン在住当時から、将来、日本でのギター店を念頭に、長年に渡り、買い揃えていたギターです。総て、新品、もしくは、年代物の修復品。料金は総て消費税・送料込。申込方法。 お問い合わせは、ご希望のギターを横一直線にコピー&貼り付けして、【~の写真、音源をお送り下さい】など、Tel/Fax: 0898-35-3679, Email: sefardi_guitarra@adagio.ocn.ne.jpまで。 |
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クラシックギター | |||||
製作者 | 弦長 | 材質 | 表面板 | 塗装 | 料金 |
プルデンシオ・サエス社.541 | 655mm | くるみ | 松 | ラカ薄塗 | 売約済175,000円 |
プルデンシオ・サエス社.541 | 655mm | くるみ | 杉 | ラカ薄塗 | 売約済175,000円 |
プルデンシオ・サエス社.231 | 650mm | ローズ | 松 | ラカ薄塗 | 200,000円 |
👇以下手工ギター | |||||
アントニオ・アリサ | 650mm | ローズ | ドイツ松 | セラック | 650,000円 |
フアン・ロマン・パディージャ | 650mm | ゼブラ材 | ドイツ松 | セラック | 900,000円 |
フアン・ロマン・パディージャ | 650mm | ローズ | ドイツ松 | セラック | 950,000円 |
フアン・ロマン・パディージャ | 655mm | ローズ | ドイツ松 | セラック | 900,000円 |
フアン・ロマン・パディージャ | 650mm | くるみ | ドイツ松 | セラック | 900,000円 |
フアン・ロマン・パディージャ | 655mm | くるみ | ドイツ松 | セラック | 900,000円 |
フアン・ロマン・パディージャ | 663mm | サンゴ材 | ドイツ松 | セラック | 900,000円 |
フアン・ロマン・パディージャ | 650mm | バーラ | ドイツ松 | セラック | 900,000円 |
フアン・ロマン・パディージャ1 | 650mm | 中南米ローズ | ドイツ松 | セラック | 売約済1,000,000円 |
フアン・ロマン・パディージャ2 | 650mm | 中南米ローズ | ドイツ松 | セラック | 1,000,000円 |
フアン・ロマン・パディージャ | 655mm | ノ・セ・ケ | ドイツ松 | セラック | 900,000円 |
フアン・ロマン・パディージャ | 630mm | ローズ | カナダ松 | セラック | 650,000円 |
フアン・ロマン・パディージャ | 660mm | ローズ | 杉 | セラック | 900,000円 |
フアン・ロマン・パディージャ かつて氏に”世界一の縞々ギター”として依頼した特注品 |
660mm | 虎目かえで | ドイツ松 | セラック | 1,000,000円 |
アントニオ・ホセ・ガルシア | 650mm | ローズ | ドイツ松 | セラック | 650,000円 |
アントニオ・ラジャ・フェレール | 645mm | 虎目かえで | ドイツ松 | セラック | 売約済800,000円 |
フランシスコ・サンチェス | 650mm | アフリカ糸杉 | ドイツ松 | セラック | 1,000,000円 |
マヌエル・ペレス・パエス(F.ムニョス修復) |
650mm | タラセア | タラセア | セラック | 1,000,000円 |
サトゥルニーノ・ロハス (Santos師匠,F.ムニョス修復) |
647mm | くるみ | 松 | セラック | 1,500,000円 |
ラミレス(F.サンチェス修復)a | 643mm | くるみ | 松 | セラック | 650,000円 |
ラミレス(F.サンチェス修復)b | 643mm | くるみ | 松 | セラック | 650,000円 |
マヌエル・ラミレス (F.ムニョス修復) |
松 | セラック | |||
フアン・モージャ | くるみ | 松 | セラック | ||
19世紀Markneurkirchen製 (ロマンティックギター,F.ムニョス修復) |
620mm | 虎目かえで | 松 | セラック | 1,000,000円 |
フラメンコギター | |||||
プルデンシオ・サエス社.541F | 655mm | くるみ | 杉 | ラカ薄塗 | 175,000円 |
プルデンシオ・サエス社.541F | 650mm | くるみ | 杉 | ラカ薄塗 | 175,000円 |
プルデンシオ・サエス社.231F | 655mm | ローズ | 松 | ラカ薄塗 | 売約済200,000円 |
プルデンシオ・サエス社.231F | 630mm | ローズ | 松 | ラカ薄塗 | 売約済200,000円 |
👇以下手工ギター | |||||
フアン・ロペス・アギラルテ | 650mm | 糸杉・シプレス | ドイツ松 | セラック | 650,000円 |
フアン・ロペス・アギラルテ | 650mm | 糸杉・極上 | シトゥカ松 | セラック | 売約済900,000円 |
フアン・ロペス・アギラルテ | 655mm | 中南米ローズ | ドイツ松 | セラック | 1,000,000円 |
アントニオ・アリサ | 657mm | 中南米ローズ | ドイツ松 | セラック | 1,000,000円 |
アントニオ・アリサ | 650mm | 中南米ローズ | 杉 | セラック | 売約済1,000,000円 |
アントニオ・アリサ | 657mm | 中南米ローズ | 杉 | セラック | 1,000,000円 |
アントニオ・アリサ | 650mm | ローズ | ドイツ松 | セラック | 650,000円 |
アントニオ・アリサ | 650mm | ローズ | ドイツ松 | セラック | 650,000円 |
アントニオ・アリサ | 650mm | くるみ・極上 | ドイツ松 | セラック | 1,000,000円 |
マリアーノ・ビウ (F.サンチェス修復) |
647mm | 糸杉・シプレス | 松 | セラック | 650,000円 |
フアン・ロマン・パディージャ | 650mm | ローズ・極薄 | ドイツ松 | セラック | 1,000,000円 |
フアン・ロマン・パディージャ | 650mm | キューバ産125年物マホガニ | ドイツ松 | セラック | 1,000,000円 |
フアン・ロマン・パディージャ | 650mm | 虎目かえで・極上 | ドイツ松 | セラック | 1,000,000円 |
フアン・ロマン・パディージャ | 665mm | 虎目かえで | ドイツ松 | セラック | 900,000円 |
フアン・ロマン・パディージャ | 650mm | ノ・セ・ケ | ドイツ松 | セラック | 900,000円 |
ホセ・ロメロ | 660mm | 糸杉・シプレス | ドイツ松 | セラック | 売約済1,000,000円 |
コンデ・エルマノス (F.サンチェス修復) |
660mm | 糸杉・シプレス | ドイツ松 | セラック | 900,000円 |
フランシスコ・サンチェス | 650mm | イロコ | ドイツ松 | セラック | 1,000,000円 |
イシドロ・ガリード (F.サンチェス修復) |
655mm | 糸杉・シプレス | ドイツ松 | セラック | 650,000円 |
訳ありギター(クラシック+フラメンコ)10~60%OFF
以下は新品ですが、長年の在庫による不具合の見受けられる訳ありギター(総てスペイン製)です。症状は、僅かなキズ、塗装の劣化、曇り、多少の雑音など。割引率10~60%はその程度によります。全く同じモデルで割引率が違う場合があるのはそのためです。弦長が違う場合もありますので、宜しくご覧下さい。また、品番や弦長が赤字のギターは料金一覧表では発表していない同じく、PS社のギターです。
割引後の最終料金(太字)は消費税、ケース、送料を含みます。
ご注文は”Emailでお申し込みの方“の申込用紙(通信欄)の記入例(赤字)の箇所に、ご希望の訳ありギターを左端の数字から横一線に総てコピー貼り付けして[[sefardi_guitarra@adagio.ocn.ne.jp]]までその旨、お送り下さい。折り返し、送金の件などご案内差し上げました後、入金確認次第、一両日中に発送致します。
※前もって訳あり個所の詳細や写真、また、音声ファイル送付のご要望ご質問なども、ご遠慮なく同メールにてお知らせ下さい。
クラシックギター
-
②58(サペり合板,杉)580mm68,000円⇒ 61,200円(10%off)
-
⑧541(くるみ単板,松)650mm175,000円⇒148,750円(15%off)※ラカにセラックを混ぜたピストル塗装
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⑨541(くるみ単板,松)655mm175,000円⇒157,500円(10%off)dos※ラカにセラックを混ぜたピストル塗装
-
⑩541(くるみ単板,杉)655mm175,000円⇒157,500円(10%off)※ラカにセラックを混ぜたピストル塗装
-
⑭231(ローズ単板,松)655mm200,000円⇒170,000円(15%off)※ラカにセラックを混ぜたピストル塗装
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⑮231(ローズ単板,松)630mm200,000円⇒現在該当ギター無し
-
手工クラシックギター:当サイト未発表
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新エミリオ・ディアス作3ホール手工ギター
(ローズ,松)650mm480,000円⇒288,000円(40%off)
Vendida[売切れ] -
新エミリオ・ディアス作3ホール手工ギター
(ローズ,杉)650mm480,000円⇒288,000円(40%off) -
新エミリオ・ディアス作3ホール手工ギター
(黒檀,松)650mm920,000円⇒368,000円(60%off)
フラメンコギター
-
㉕541F(くるみ単板,松)650mm175,000円⇒157,500円(10%off)※ラカにセラックを混ぜたピストル塗装
-
㉖541F(くるみ単板,松)650mm175,000円⇒122,500円(30%off)※ラカにセラックを混ぜたピストル塗装
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㉗541F(くるみ単板,松)630mm175,000円⇒140,000円(20%off)※ラカにセラックを混ぜたピストル塗装
-
㉘77(シプレス単板,松)650mm188,000円⇒169,200円(10%off)Vendida[売切れ]※赤朱色塗装
-
㉙77E(シプレス単板,松マイク内蔵)650mm200,000円⇒120,000円(40%off)Vendida[売切れ]
-
㉛24(ローズ単板,杉)655mm200,000円⇒180,000円(10%off)
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㊲641(かえで単板)650mm188,000円⇒169,200円(10%off)dos
-
㊳231F(ローズ単板,松)655mm200,000円⇒180,000円(10%off)※ラカにセラックを混ぜたピストル塗装
-
㊴231F(ローズ単板,松)630mm200,000円⇒180,000円(10%off)※ラカにセラックを混ぜたピストル塗装
手工フラメンコギター
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アントニオ・アリサ(ハカランダ,杉)
※当サイト未発表655mm1,000,000円⇒500,000円(50%off)
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